攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

594 / 2051
第二部・第八次モンスターハザード編
あぁそうかそうかわかったわかった、じゃあ腹を割って話そう


 花火大会から一夜明けた、今日は7月30日の朝10時頃。

 全探組県本部施設は談話室にて、俺は香苗さんと面と向かい合い、話をしていた。

 まさに昨日の祭の最中、彼女の元師匠であるところの青樹さんと出会い、というか誘き出され……襲撃を受けたこと。さらに火野と翠川という二人の加勢もあり、その3人が倶楽部という犯罪組織の幹部格だということ。

 

 祭の最中、浮ついた空気の中ではとてもじゃないけど聞かせられないような話を今、俺から直接香苗さんに説明していたのだ。

 

「──以上が、昨日起きた青樹さんとのやり取りです」

「そう、ですか」

 

 俺が話し終えるのを、香苗さんは目を閉じて神妙な面持ちで聞いていた。かつての師匠が、そんなことに成り果ててしまったことを、果たしてこの人はどう思うのだろうか。

 できれば傷ついてほしくないと切に願う俺に、香苗さんは一つ微笑むと、おもむろに頭を下げてきた。

 

「香苗さん……?」

「ありがとうございます、公平くん。すべてを包み隠さず教えてくださって。そして申しわけありません。私のことで、あなたに大変なご迷惑をおかけしました」

「迷惑なんてそんなこと、あるわけないじゃないですか」

 

 真向かいに座る彼女の、両手をそっと握りしめる。

 こういう人なんだ、香苗さんは。今回の件は間違いなく青樹さんにこそ問題があるのに、それでも責任を感じてしまう人なんだ。

 そんな彼女が痛ましく、せめてもの慰めになればとその、冷え切った手を暖かく繋ぐ。温もりを伝えるように、俺は彼女へと告げた。

 

「あなたは何も悪くない。悪いはずがない。勝手にあなたの幸せを決めつけて、他人に対して危害すら加えるのは青樹さんの問題であってあなたが気にすることじゃない」

「ですが……」

「俺にもあなたの幸せが何かは分かりません。ただ、あなたが幸せであるようにといつも祈っています。香苗さんは香苗さんの思うとおりに生きて、思うとおりに幸せを掴もうとしていいんですよ」

 

 何よりも、青樹さんの主張のそこの部分に俺は、許せないものを感じていた。

 香苗さんは自分と一緒にいるのが幸せなんだって決めつけて、あわよくば倶楽部の犯罪行為に加担させようとさえして……馬鹿な話にも程がある。

 

 そんな独り善がりに、この人を巻き込ませちゃいけない。香苗さんは自分なりの幸せを、掴み取っていいんだ。

 想いを込めて、俺は香苗さんに宣言した。

 

「だから……俺が青樹さんを連れてきますよ、あなたの前に」

「え……公平くん?」

「何度でも彼女の前に立ちはだかって、彼女を説得します。戦いなんてしません。ただ、言葉を尽くすだけです。そして香苗さんの前に彼女をお連れします」

 

 倶楽部だの能力者犯罪捜査官だのってのは、正直そっちはそっちでやっていてほしい。

 俺としては積極的に動くにしても基本、バグスキルを悪用している件についてが主で、そこに関しては捜査官の人達に手を貸す形でやっていきたいところだ。

 専守防衛っていうのかな? まあそんな感じ。

 

 ワールドプロセッサにも称号欄で言われたけど、この世の中で起きたことはある程度でも、この世の今を生きる者たちで解決してほしい感覚もある。

 なので倶楽部云々について、俺が主軸になって動くってことは今のところ、考えてはいないんだよね。

 

 ただし、青樹さんだけは話が別だけど。

 あの人だけは何がなんでも説得する。そして香苗さんの前に連れてきて、言いたかったこと、話したかったことをお互いに話し合ってもらう。

 そうしないと香苗さんも、青樹さん自身も蟠りを一生、抱えたままになる。倶楽部関係の事件がどう決着するにしても、この師弟を放っておきたくないってのが、お節介ながら俺の偽らざる本音だった。

 

「あなたは、そんな目に遭っていながらまだ、私と彼女のことを……? どうして、そこまで」

「一度くらいはそうするべきだと思うんです。青樹さんは明らかに何かを履き違えているし、香苗さんも香苗さんで、そんな青樹さんに言いたいことの一つ二つはあるでしょう。お節介を承知で、お二人には一度だけでも話し合ってほしい」

「いえ、いいえ! そうでなく私が言いたいのは……!」

 

 苦しげに、小さい声で叫ぶ香苗さん。どこか気遣わしげに俺を見るその瞳は、心配と不安と、裏腹の安心というか希望も垣間見える。

 彼女も実際のところ、青樹さんともう一度対話する必要があるとは気づいていたんだろう。昨日の一件のみならず彩雲三稜鏡の件もあるし、そもそも関口くんを真人類優生思想に拐かした件もあるしね。

 

 ただ、そのへんについて俺がここまで能動的に動く姿勢を見せたのは意外だったみたいだ。

 まして昨日、青樹さん御本人に襲撃された直後の提案だ。複雑な思いを隠さないままに香苗さんは、続けて俺に問いを投げる。

 

「──殺されそうになりながらもなお、どうしてあなたは私と青樹さんのことに心を砕いてくださるのか、ということです。なんで、そこまでしてくださるのですか?」

「いや、まあそこは……身勝手ですけど、俺がそうしたいんです。香苗さんと青樹さんの、お力になりたい」

 

 自分勝手な物言いで申しわけないけど、結局こういうことなんだ。

 香苗さんには師匠に向け、自身の想いをしっかり伝えてほしいなって思うし。青樹さんにはそれを踏まえて、弟子の現在について正しく理解してほしい。

 

 そしてお二人だけの間で、自分たちの今後について結論を出してもらいたいのだ。

 それがどういう形に落ち着くにせよ。余人の入る余地なく完全にお二人で決めたことなら、きっとそこには悔いが残ることはないと信じる。

 

「だから、話し合いの場は用意します。お節介な真似をして申しわけないですけど……」

「そんなことありません、絶対に。公平くん……ありがとうございます。あなたは、やはり私の救世主です」

 

 正直、押しつけがましい自覚はあるので香苗さんには謝るしかできないんだけど……

 彼女はそんな俺を見据えて、瞳を潤ませさえしながらも感謝を告げたのだった。




今日から新エピソードです、よろしくおねがいしますー

ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします
書籍1巻発売中です。電子書籍も併せてよろしくおねがいします。
Twitterではただいま #スキルがポエミー で感想ツイート募集中だったりします。気が向かれましたらよろしくおねがいします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。