攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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師匠と弟子と─妙にのんきな二人組─

 青樹さんに関して、今のところ俺が知る限りはすべて香苗さんに伝えた。となると今度は、俺自身も知らない青樹さんの話を聞く必要がある。

 そのへんの事情に明るい人たちにこの後、来ていただいて話を伺うことになっていた。香苗さんに話をするだけでなく、香苗さんと一緒に話を聞くためにも今、ここにいるわけだね。

 

 話を終えてしばらく待つこと30分。変わらず談話室にて話し込んでいる俺と香苗さんの元に、待ち合わせをしていた人たちがやってきていた。

 

「どうも山形さん、昨日ぶり。元気にしてた? 私も元気にしてたよハッハッハー」

「御堂さんもどうもお疲れさまです! 昨日は関口くんと三人娘の件についてもお手数かけしました、はっはっはー!」

 

 どこか呑気な空気の漂う師弟コンビ、エリスさんと葵さんだ。能力者犯罪捜査官として、青樹さんと倶楽部を追って来日したというこのお二人と、情報をある程度共有する段取りを昨日の夜祭の帰り、行っていたのだ。

 香苗さんもこのことについては当然ご存知で、特に昨日、関口くんとおかし三人娘の件で話をしていた葵さんが、青樹さんの件にも絡んでいるということにはやはり、驚きを隠せない様子でいる。

 

「お疲れさまですエリスさん、葵さん。急にお呼び立てしてすみません」

「何を言うかなウサギさんカモメさん。今日から私らが君と御堂さんの護衛さんなんだし、むしろ呼んでもらえてラッキーさんだよ、なあ葵さん」

「ですです。いやー昨日の朝には情けないところをお見せしましけど、こっちが私の本職っちゃ本職ですしね。いいとこ見せて汚名返上しちゃわないと、師匠と祖父の名前に泥を塗っちゃいますよ!」

「は、はあ」

 

 独特なノリだな、この人たち……特にエリスさんの謎にふわふわした口調がかなり癖の強さを感じさせる。ウサギとカモメがなんだって?

 その点で言うと、飄々とした彼女はともかく葵さんのほうがまだ分かりやすい。関口くんの指導にまつわるミスというかなんというかを、挽回すべく気合が乗っていらっしゃるみたいだし。

 香苗さんがそんな二人に、戸惑いつつも会釈した。

 

「ええと、早瀬さんとは二度目ですがそちらの、モリガナさんとは初対面ですね。お初にお目にかかります、S級探査者の御堂と申します」

「いかにも初対面だね、御堂さん。同じくS級探査者のエリス・モリガナだよ。エリスって呼んでねイェーイ」

「あ、あ、私も! 早瀬じゃなくて葵って呼んでくださーいいぇーい!」

「は、はあ」

 

 丁寧に礼儀正しく挨拶する香苗さんに対して、エリスさん葵さんの師弟コンビは並んで揃ってダブルピースなんかしちゃって、息の合ったトボケっぷりを披露している。

 独特すぎる空気に、香苗さんもなんだか肩の力が抜けていってるみたいだ。これを見越しての計算し尽くした動きだとしたらすごいけど、普通に天然でやってそうな気もするのが微妙なところだよなあ。

 

 そのへんの、彼女らのパーソナリティについては今後、ともに過ごす中で相互理解を深めていければいいかな。ひとまず香苗さんは気を取り直して、名前呼びでいいと告げるお二人に言葉を返した。

 

「承知しました、エリスさん、葵さん……そして公平くんも含め、改めまして3人とも。この度はかつての師が大変なご迷惑をおかけしております」

「いやいや、聞くにあなたも被害者じゃないか御堂さん。難儀な師匠を持ったものだね、可哀想に」

「加えて昨日に至っては、エリスさんと葵さんには我が偉大なる救世主にして慈悲深くも尊く素晴らしきこの世の至宝たる御方、山形公平様をお護りいただいたと聞いております。この世にご光臨なされた救い主様を崇め奉る伝道師として、深く感謝を申し上げます。まことにありがとうございました」

「弟子も難儀だったか、ハッハッハー」

「私たちも人のこと言えませんけどねー、はっはっはー!」

「むごい」

 

 相変わらずいきなりシームレスに伝道師ムーヴへと切り替わるよな、この人! 

 突然始まったいつものアレを、エリスさんがカラッとした反応で笑い飛ばし、葵さんがそれに乗っかって自虐ネタっぽいセリフを口にしている。怖ぁ……うちの伝道師が申しわけないです。

 

 なんていうか、青樹さんにもどこか似通うよなあ、この暴走癖。やはり師弟って似るのかなぁ。なんてことを考える俺をよそに、エリスさんがひとしきり笑ってから香苗さんに言う。

 

「こっちこそ、うちの葵が君たちに何やら、ご迷惑をおかけしたみたいだし。仕事は仕事だけど、ちょっとでも恩返しできたならよかったよ」

「う。いやあ、師匠にまでご迷惑をおかけしちゃいました」

「ドンマーイ葵。ダイジョブダイジョブー、大体のことは怪我人が出なけりゃ取り返しが利くよー」

 

 関口くんと三人娘の一件に言及されて、落ち込んだ様子の葵さんをめちゃくちゃ軽いノリで励ますエリスさん。まあ、重くなりすぎないからこれはこれでいいよね。

 仰るとおり、全然取り返せる類の話ではあるし。むしろ軽く流してもらえるのは後に引かなくて助かるくらいだ。

 

「さーて、それじゃそろそろ本題に入ろうか。まずは青樹佐智の来歴について御堂さんからお聞かせ願い、そのあと私たちから今の彼女についてお知らせするよ」

 

 そんなふうに適度に弟子をフォローしつつも、エリスさんは俺の隣に座った。葵さんは香苗さんの隣だ。

 二人と二人、向かい合う形でいざ、話が始まる。




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