攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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17:30追記
使役系スキルについて、没スキルにまつわる扱いの情報開示が不十分であると考えましたので数文ほど追加しています。
没スキルはワールドプロセッサの管理下に置かれており、万一オペレータが保持することがあったとしてもワールドプロセッサだけはそれを把握している、という情報を新たに書き足しました。
お手数おかけして申しわけありません。
よろしくお願いいたします。


おまえーっ!人間がなーっ!モンスターをなーっ!

 委員会の手口と、倶楽部の立ち位置については概ねだけど分かった。となれば次に聞きたくなるのはやはり、今回メインで敵対することとなる倶楽部についてだろう。

 特に青樹さんが、その組織に幹部として所属して何をしてきたか。何をしてしまったのかは知っておかなければならないだろう。香苗さんにとっては辛い話になるけど、避けてはとおれない話題だ。

 

「私が倶楽部の存在に気づいたのは10年前。当時別な組織を追っていたところ、偶然やつらについての資料を発見したのが始まりだった」

「少なくとも10年前にはすでに存在していた、と」

「その後の調べでさらに、そこから10年くらい前にまで倶楽部の痕跡を遡れたから、実際は今からちょうど20年前に立ち上げられたと見ていいよ」

「私や御堂さんが生まれたあたりですねえ」

 

 エリスさんの説明にそんな軽口を挟む葵さん。なるほどたしかに、20年くらい前ったらちょうど香苗さんたちが生まれた頃の時代になるのか。

 その時点ですでに尻尾をつかんでいたエリスさんもすごいけど、そこから彼女の追及を逃れ今日まで活動を続けてきた倶楽部も大概、侮れない。

 

 そんな倶楽部の実態だけど、やはり真人類優生思想と密接に絡む組織らしかった。エリスさんがポケットから小さなメモ帳を取り出し、俺と香苗さんに見えるように机に置いて広げる。

 白紙のページだ。次いでそこに、倶楽部だの真人類優生思想だのと書いていく。この人、日本語を読むだけでなく書くのもできるんだな。

 

「で、その倶楽部の活動なんだけど。概ねモンスターの密輸がメインと思われるね。海外の好事家やら反社会的組織を顧客に、莫大な売値をつけて売り払ってるみたいだよ」

「モンスターの密輸……ですか。その手の組織にしては珍しい事業に手をつけていますね」

「たしかに。私も仔細を知るまでは、いわゆるモンスター愛好家集団かと一瞬思ったくらいだよ」

 

 皮肉げに言いながらもノートに、今言った倶楽部の活動内容について話していくエリスさん。

 モンスターの密輸……たしかにそこだけ聞くとモンスターに興味があって堪らない! ってタイプの人をターゲットにした、金目当ての組織なのかと思うよね。

 だけどエリスさんの口ぶりではやはりというか、そこに何やら裏があるみたいだ。あんまり内容を聞きたくないけど、まあ聞かないと始まらないしなあ。

 

 もうすでにゲッソリする感覚に襲われるけど、話はまだ続く。

 葵さんが、具体的な倶楽部の活動について詳しく話し始めた。

 

「その、モンスターの密輸についてですが……倶楽部の特徴として、どうやったのかモンスターを完全に近い形で操っているというのが挙げられます。やつらはそれを活かして、使役可能なモンスターを世界各地の好事家やら裏社会に輸出しているんです」

「モンスターを、操る? そんなことが!?」

「馬鹿な……」

 

 予想だにしなかった言葉に、香苗さんともども驚愕する。特にコマンドプロンプトたる俺としては、衝撃的な話だ。

 モンスターを使役するなんて、できるかできないかでいったら擬似的な形でできなくはないって程度のはずだ。完全に近い形で彼らを操ることは、今のオペレータにはできないと断言できる。

 

 一応、《モンスターテイム》だの《モンスター操作》だのといった使役系スキルは存在していることはしているけど、あれらは《奇跡》同様、没になったスキルだ。

 浄化して魂を輪廻に受け入れなければならないのに、生き永らえさせていいように使うのは筋が通らないからな。

 それに加えて普通に悪用される可能性もあったし、作られはしたもののオペレータには付与されることはない類のスキルとして、今に至るまでシステム領域の奥深いところにて封印されているのだ。

 

 あり得るはずのない現象、という意味ではモンスターの使役もバグといえばバグだ。ならばまさか、なんらかのバグスキルを使ってモンスターを使役した?

 いやでも、ワールドプロセッサはそんな真似は絶対に許さないだろう。いくらバグフィックスとはいえ異世界の魂を、モンスターのままいたずらに苦しめる行為などコマンドプロンプトたる私はもちろん、あいつとて絶対に許容しない。 

 

 没スキルについてはワールドプロセッサが完全に管理下に置いており、香苗さんに《奇跡》を付与した時もそうだろうけどあいつが一切感知していないってことはあり得ない。

 となると仮に万一、使役系スキルが誰かしらオペレータに付与されたとしたら少なくともワールドプロセッサには心当たりがあるはずなんだけど……

 

 

 ──噂をすれば、称号が更新された。

 

 

 またしても俺へのダイレクトメッセージか。まあ今回はおそらく真面目な内容だろうし、四の五の言わずにステータスを開く。

 

 

 名前 山形公平 レベル822

 称号 吹き始めた風に、悪しき心が密やかに嗤う

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 名称 風浄祓魔/邪業断滅

 名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で

 名称 よみがえる風と大地の上で

 名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの

 名称 清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師

 名称 あまねく命の明日のために

 

 称号 吹き始めた風に、悪しき心が密やかに嗤う

 解説 よみがえる大地に、過ちの花を咲かせてはなりません

 効果 なし

 

 《称号『吹き始めた風に、悪しき心が密やかに嗤う』の世界初獲得を確認しました》

 《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》

 《……人の世に、何かが起きようとしています。正しさを信じる人々を、我々は見定め時には力を貸しましょう》

 

 

 相変わらず詩的というか、婉曲な物言いの称号だけれど意味は伝わる。要するにワールドプロセッサとしても、現世の存在がモンスターを使役するなんて事態は想定外だということだ。

 あまつさえ俺も含めたシステム側の立場として、ひとまず静観しつつ要所で力を貸すべきと訴えてきている。この辺はこないだの時と同様、現世のことは現世の者たちで解決することを良しとしたいスタイルだな。

 

 俺としても、本職で対応される方がいるんだからそちらにお任せしておきたいし……とりあえずはワールドプロセッサの言うようなスタンスでやっていこうとは思う。

 あくまで探査者として、ダンジョンに潜ってモンスターを倒すのが俺のメインの仕事だからね。

 

 しかしそれはそれとして気になるのも事実。倶楽部はどうやって、モンスターを使役しているんだ?

 俺は堪らず、エリスさんに質問した。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

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