攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
手懐けたモンスター達とともに蜂起し、社会を暴力的な手段で変貌させる行為。それが過去七度起きたモンスターハザードの正体であり、今また八度目の蜂起を、倶楽部が目論んでいる可能性がある。
恐るべき事態だ。つまりは意図的にスタンピードを引き起こし、混乱に乗じて既存の社会を無理に乗っ取るというのだから……たしかに時代を変えるという青樹さんの言葉には、ある意味偽りがないと言えるな。
「過去のモンスターハザードは世界各地で行われたけど、今回は日本で行われると予想される。密輸ルートを逆に辿るとこの国に行き着くし、実際幹部連中が3人もこの近辺にいるからね」
「他の国にも倶楽部のメンバーはいるのでしょう? でしたら他国でも同様の事態が起こされないとも限らないのでは」
「たしかにそのとおりなんだけど、元々横の繋がりがあまりない組織だからね。日本の倶楽部のみスレイブモンスターの量産化に成功していて、そのノウハウを他国には漏らしていないというのは過去、いくつかの国で潰してきたアジトから出てきた資料からも読み取れるんだよ」
「ある種、同じ会社の別の部署同士のようなものですか……」
案外仲が悪そうというか、競争主義的な組織なんだな、倶楽部ってのは。スレイブモンスターの技術なんて世界中に拡散されたら、それこそ収拾がつかなくなるから助かるけどさ。
しかし、日本の倶楽部だけがそうした技術に到達したってのは何か、理由があったりするのだろうか? 特別、他と比べて技術者が多いとか。あるいは日本でしか成し得ない条件があって、それを満たさないとモンスターを手懐けられないだとか。
「なんでこの国の倶楽部だけが、スレイブモンスターを量産できるんでしょうか?」
「そこはまだなんとも。殊更そうした研究に力を入れているのか、はたまたどこか別の組織や個人から技術提供を受けているのか……不明なんだよ」
「ですからなおのこと、三幹部はなんとしても引っ捕らえる必要があるわけなんですねえ」
「すべては青樹さん達をどうにかしてから、ですか……」
倶楽部にまつわるほとんどの謎について、未だ核心部分を見ることもできてないわけか。そうなるとやはり、重要なのは三幹部の青樹さん、火野、翠川を捕まえて情報を聞き出すことになるな。
その辺、能力者犯罪捜査官じゃない俺や香苗さんにはどうともできない──できて青樹さんの説得くらいか──以上、エリスさんや葵さん、加えてヴァールが手配してくれている護衛の方々に頼るのが筋だろう。
ただ、協力できることもある。エリスさんが確認するように、俺達二人に告げてきた。
「そのためってわけじゃないけどね。火野や翠川はともかく、青樹だけはもしかしたら今後も二人につきまとうかもしれない。だから私達が護衛として付いて、奴の動きに対応したいと思うんだよ。山形さんには昨日その旨伝えはしたけど、御堂さんはいかがかな?」
「私としては、心強い限りですが……しかし仮に来月の下旬までことがもつれ込むと、私は首都に行かねばなりませんし」
「S級探査者認定式ですね」
8月下旬に香苗さんが、首都に行く用事ったらまず間違いなくそれしかない。この度めでたくもS級探査者として認定される運びとなった彼女は、その認定証授与やら祝宴やらのために首都圏へと行かねばならないのだ。
その式には国のお偉い方々や外国のお偉いさん達、果てはダンジョン聖教の当代聖女さんとやらまで参加されるのだとか。そんな大変な式典に、犯罪組織の企みに巻き込まれる可能性がある以上、主役とはいえ参加するのはリスクあるよなあ。
「このような事態となっては、私としてもなるべくこの地に留まり、捜査官の方々に協力したいところです。延期なり中止なり、提案してみるつもりではいますが」
「あー、それは聞き入れてはもらえないだろうね。国としても全探組としても、海外からゲストを多数呼んでの式典だ。何がなんでも強行して、何がなんでも成功させるだろうし」
「場合によっては自分達も危ないのに、ですか」
「そもそもそこからして不明瞭だからね。いっそ犯行予告でも倶楽部が出してくれればいいんだけど……まあ一応、こちらからもソフィアさんに打診してみるよ」
にべもないエリスさんだけど、まあおそらくそうなるだろうって気は俺にもしている。
国内だけの話ならともかく、海外からお偉い方々をたくさん呼んでのイベント。それを、起きるかどうかも定かでない……犯行声明すらない可能性の話だけで中止というのは中々難しいところがあるのだろう。
「ですけど師匠。そうなると御堂さんと山形さん、分断されちゃいますよ? 青樹、どっちを優先して狙いますかねえ」
香苗さんの式典は、もう香苗さん個人だけの事情じゃなくなっている。未だ表沙汰になっていない犯罪組織の絡みがあるかもしれないからといって、容易に延期だのなんだのは通らないと予想される。
だけどそうなると、地元にいる俺と首都に向かう香苗さんで護衛対象が分断されることになってしまう。これも、青樹さんのターゲットがどちらになるかによってはリスキーだ。
ではどうするのか? 葵さんの質問に、エリスさんはニヤリと笑い答えた。
「いいや、分断はしないよ」
「え……?」
「御堂さんがどうしても首都に行かねばならないのなら、山形さんにも同行していただければそれで解決だ。葵の言うように今このタイミング、二人を分かつのはあまりにリスキーだからね」
「え。ってことは、俺も首都に?」
まさかの提案。俺まで首都行くのぉ?
いやまあ、そりゃ俺ってばその頃はまだ、夏休みでヒマヒマしてるし。問題ないと言えば問題ないけれども。
突然の話に面食らう俺とは裏腹に、香苗さんは喜色満面だ。あれか、伝道師として俺から離れるのを嫌がってたからか。それはいいんだけどあなた、さすがに式典にまでは俺、行けないと思うんですけどね。
そう考える俺を見透かしたかのように、続くエリスさんは俺に向け、不敵に告げるのだった。
「そう。なんなら私がヴァールさんにかけ合い、ねじ込んでみせよう……山形さんもS級探査者認定式のゲストとして参加だ。上手いものたらふく食えるよ、やったね」
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