攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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飛んで火に入る夏の倶楽部

 急な話で8月下旬、首都圏は香苗さんのS級探査者認定式に出席することが半ば、確定することになってしまった俺ちゃん。

 なんでこんなことに……と思いながらも、まあ能力者犯罪捜査官のお二人に協力するためだ、仕方ないと切り替えて考えることにした。

 

 一番の懸念はやはり、式典の最中に倶楽部が襲いかかってくるってところなんだけども。さっきエリスさんと葵さんが説明してくれたように、そもそも式会場の護衛は相当に厳重のようだ。

 香苗さんとエリスさんをはじめ現役のS級探査者が最低4人。護衛に対テロ用の特殊訓練を受けたSPやらチームやらがわんさか。

 ソフィアさんがいるってことはヴァールもいるし、加えてダンジョン聖教の私設軍隊とも言える騎士団も総出でやってくるとの話を聞いている。

 

「SP達はA級探査者ばかりで構成されているし、騎士団とやらいう連中もそれなりとは聞くね。加えてS級探査者が4人もいるとなれば、仮に倶楽部がS級モンスターを連れてきたってなんとでもなる物量だ」

「もっとも今のところ、討伐してきたスレイブモンスター達はほとんどがD級モンスターばかりでちらほら。たまにC級がいるかなーってくらいです。それ以上の戦力を保持していたとしても、S級がぽんとお出しされるのは考えにくいですねえ」

「なるほど……」

 

 さすがに要人を一所に集めるだけはあり、警備も厳戒そのものってところか。いや、だからといって倶楽部の襲撃なんて起きないに越したことはないんだけれど、ひとまずの安心材料ではあるな。

 それに倶楽部の襲撃に関わらず、万一何かしら起きた場合にら俺がコマンドプロンプトの権能を使用して因果レベルで会場を護るつもりだ。何が起きようが絶対に誰一人、傷一つつけさせるつもりはないけれど……それでも怖いものは怖い。

 

 ことが片づくまで延期なり中止ってしてほしいなあ、というのがやっぱり本音のところだ。

 そう溢すとエリスさんは笑って、同意を示してくれた。

 

「ハッハッハー、違いない違いない。しょうもないメンツだの政だのはうっちゃったらいいだろうにねー。まあ、それができないのがしがらみなんだろうけど」

「難しいもんですねえ」

「そもそも式典までにことが解決する可能性のほうが高い気もするし、気にしすぎないようにね山形さん。青樹だの火野だのは、どうせ近々また懲りずに仕掛けてくるだろう」

 

 彼女のあっけらかんとした予測は、まあ俺もそんな気はする。式典開始までの残り一ヶ月、倶楽部の幹部が何も仕掛けてこないわけがないのだ。

 何しろ青樹さんは香苗さんに、そして火野はおそらくエリスさんにそれぞれ執着というか異様な反応を示していたからね。昨日の様子からも、能力者犯罪捜査官がいよいよ自分達に迫ってきているからといって、大人しく身を潜めていられる程度の熱量じゃなかったのはたしかだ。

 

 なんの因縁もなさげな翠川が二人を抑えることができたなら、あるいは潜伏して長期戦にもなり得るだろうけど……あの三人の中でリーダー役っぽかったのが火野老人だからな。

 その本人がエリスさんをターゲットにしているのだから、あの男にそれを止められるのかは分からないところだ。

 

「次、幹部が来たらその時に確実に仕留めて捕縛できればいい。一人でも捕まえられればあいつら、おそらく慌てて何かしら動くよ。動かざるを得ない」

「捕まえた幹部から情報が漏れた時点で、自分達の身も危なくなるからですか」

「なんなら捕まった幹部の口封じとか画策するかもね。とにかくその辺踏まえて、そういう動きを見せたら即座に押さえるってのが当面の目標になるかな。一応こちらからも捜査は継続して行うけど、尻尾を掴むより向こうから来るほうが早い気がするよ」

 

 そう言ってニヤリと、エリスさんは笑った。

 口封じってのはいかにも怖い、悪の組織然とした話だけど……そのくらいはやるんだろうな、昨日のあの調子だと。

 たしか殺人まではそうそう行ってない組織だって話だけど、追い詰められると何しでかすか知れたもんじゃないものなあ。

 

 仮に青樹さんが、そういった行為にまで及んでしまうのならば、香苗さんとの和解はどうあれ罪償いはしなくてはならない。

 そうでなくともモンスターを兵器利用したりもしているのだから、そこは法の裁きを受けるべきだ。

 

 これ以上、彼女が罪を重ねないためにも。

 そしてそのことで、香苗さんが悲しまないためにも。早めに青樹さんはどうにかしないといけないよな。

 

 少しの静寂。

 全探組の談話室。今日はほとんど人もいないここで俺達ばかりがあれこれと話していたわけだけど、ひとまず話も落ち着いたって感じだ。

 今後について葵さんが語る。

 

「そうしましたら早速、私達師弟がお二人の警護に移りますね。御堂さんには師匠が、山形くんには私がひとまず付きます」

「何日かしたら今度は私が山形さんの、葵が御堂さんの護衛に交代する。その繰り返しだ……加えてヴァールさんがこの地域一帯にWSOのエージェントを置き始めている。捜査の補助と、有事の連絡と、そして関係者の護衛に回るよ。君らの自由を阻害するつもりはないから、どうか好きなように過ごしてほしい」

「助かります」

「よろしくおねがいします」

 

 地域全体にまで波及するような大事だ、WSOも完全に本腰だな。

 頼もしさと物々しさの両方を覚えながらも、俺と香苗さんはエリスさん、葵さんの護衛を受け入れたのだった。




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