攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
人工的にスキルの威力を増幅させるという対モンスター用機械兵装AMW。葵さんのフーロイータも含め世界に12機存在するというそれら兵器は、いわば人間の叡智の結晶とも言える、超テクノロジーだ。
システム側が用意した機能を、人間側だけの技術によって発展させたスキルブーストジェネレータの技術だけでも、コマンドプロンプトたる俺をして驚嘆せしめるだけのインパクトはあった。
話を聞いているとどうも、現状では特定のスキルを持つ者しか使いこなせないような代物である、とか。そもそも製造コストがあまりにかかりすぎるから、1機製造するのにも苦労するだとか。
その辺の事情が仮にクリアされ、探査者に広く流通する技術となった暁には……探査業界の風景が一変するだろうことは間違いなかった。
「私のフーロイータは《雷魔導》に対応したジェネレータで、だから私が使用者に選ばれたんですよ! ……まあ、師匠のコネも多分に絡んでますので、自慢できる話じゃないですけど」
「《雷魔導》自体レアですから、そこはあまりお気になさらずでいいんじゃないですかね」
たははと誤魔化し笑いを浮かべる葵さんだけど、別にエリスさん経由だからって気にしなくてもいいと俺は思う。
そこも含めて天運というものだろうし、そもそも魔導系スキルはただでさえレアな上に雷属性は更に希少だ。使用者を探す手間を考えると、メーカーからしても葵さんの存在は渡りに船だった可能性さえあるね。
しかし、AMWそれぞれに対応したスキル保持者が必要なのか。他の使用者はどんな人達なんだろうか。
葵さんに聞いてはみたものの、彼女も他のAMWユーザーに出会ったことはないらしい。そもそも12機の内、5機は使用者不在でメーカー側で厳重に保管されているのだとか。もったいないなあ。
「……っと、着きました。俺の家ですね、ここが」
「資料どおりですね、何より何より。そうしましたら今日のところはここまでです、お疲れさまでした!」
話し込んでいるうちに家に辿り着いた。なんの変哲もない普通の一軒家を示すと、葵さんは事前に俺に関しての資料も読み込んでいたのか、齟齬なしと満足気に頷いている。
今日はもうオフだ。昨日探査はしたし、ゆっくりさせてもらおう。まだお昼前、いい天気だからどこか出かける手もあるけど……その場合葵さんはどうされるのだろうか?
質問すると、やはり朗らかな調子で答えが返ってきた。
「お出かけ等の際はもちろんご同行しますよ。一緒がちょっと
って言うなら陰ながらの護衛をしますし、私以外にも地域周辺にはすでにWSOのエージェント達があちこち潜んでます。何かあればすぐお護りいたしますのでご安心をば」
「そうなんですか? 早いですね……っていうか、なんかやっぱり物々しいですね」
昨日の今日ですぐさま地域単位で網を張るあたり、WSOの動きの速さはさすがだ。
ただ、どこに行くにせよ何をするにせよ行動を逐一把握されてるってのはどうも落ち着かないよなあ。ぶっちゃけ監視状態というか。犯罪組織に狙われてる以上、当たり前の話ではあるんだけどさ。
正直に言うわけではないにしろ、俺の雰囲気や様子からはそういう複雑な思いが滲んでいるのだろう。
葵さんが申しわけなさそうに笑いながらも俺の肩に手を置き、語りかけてくる。
「不安がらせちゃってごめんなさい……まあ、常にあなたや御堂さんに引っ付いているのは師匠と私だけですから。他のエージェント達はどちらかというと地域一帯の索敵と警戒が主ですし、みんながみんなあなたをジロジロ見るわけじゃありません。気休め程度ですけど、そこだけは知っておいてください」
「あ、いえ……こちらこそなんか、すみません。お手数おかけしまして」
「……山形くんは、何も悪くないですよ」
見透かされた気恥ずかしさとか申しわけなさもあり、つい謝る俺を、彼女は目を細めて優しく見つめてきた。
そして──なんといきなり、柔らかく抱きしめてきたのだ!
「ウェァッ!? あ、葵さん!?」
「勝手な都合につけ狙われて、勝手な思惑に巻き込まれて不安にならざるを得ない……山形くんは何も悪くないのに。ごめんね、私達がもっと、もっとちゃんとしていれば」
「あ、葵さん?」
「君に、怖い思いや不安な思いをさせずに済んだのにね……!」
ハッとする。抱きしめてくる葵さんの表情は見えないが、強く力が込められた身体の強張りから、激情を堪えているのを察する。
飄々としているようでその実、ものすごく使命感がある人なんだな、葵さん。
倶楽部なんかに狙われて、日常生活に著しく変化が訪れた俺の境遇に心から哀しみ、そして自分達の不甲斐なさに怒りを覚えている。能力者犯罪捜査官として、こうなる前に手を打てなかったことをきっと、辛く思っているんだ。
俺の両肩を強く掴んで、真正面から向き合う形で葵さんは告げた。
「大丈夫。山形くんに関わる何一つだって脅かさせたりはしません。不甲斐ない私達だけど、絶対にそこは譲れません。いくら強くても探査者でも、あなたは子供で相対すべきはモンスターだけです。くだらない悪党どもに煩わしい真似はさせない」
「あなたは……」
「能力者犯罪捜査官として、悪意を持った能力者からあなた達を護ります。だから山形くんは、安心して日々を過ごしてください!」
強く叫ぶ彼女は、使命感と正義の信念に満ちている。
モンスターからでなく、能力者から人々を護る探査者。能力者犯罪捜査官という職業の、激しさと強さを俺は彼女に垣間見た。
ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー
【ご報告】
本作
「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」
2巻の発売が決まりました!
2022年12月2日の発売となります!
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