攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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割ときな臭いぞ!ANW

 葵さんの姿勢に何やら感銘を受けつつ、まあとりあえず帰ろうかと車が出発した。

 香苗さんの運転するスポーツカーが前で、後ろに葵さんが運転する軽トラックが続いて走っていく。

 

 舗装されていない道を5分ほど進んで、ようやっと文明チックな路面に出た。

 あとは来た道を逆に下るだけだ。報告が終わったらみんなで打ち上げじゃないけど、ちょっと豪華めに三時のおやつでも食べようか、なんて話をしていると。

 

「……なんだ?」

 

 不意な感覚に、助手席に座る俺は思わず声を上げた。

 さっきまで俺たちがいたのとは別の山の方角に、オペレータの気配が2つ。何も感じなかったのに、いきなり降って湧いたように現れたのだ。

 隠れていたとかでもない、完全に突拍子もないタイミングでいきなりの気配。率直に怪奇現象なわけで戸惑う俺は、しかしすぐさま一つの心当たりをつけた。

 

 ──転移系スキルだ。

 

「どうしました、公平くん」

「なんか……急にスキル持ちが2人、この近くに現れました。気配が突然、パッと出てきましたね。これは……」

 

 運転中の香苗さんに答えながらも考える。

 なんの前触れもなく突然、スキル保持者の気配が現れた。こんな山奥に、それも二人も。そんな芸当ができる手段といえば、転移系スキルくらいしか思い浮かばない。

 

 いやまあ、すっごくマジでとんでもないやべー超スピードで一瞬にして移動した、とかなら行けるかもだけど。そんなもん転移系スキルよりもあり得ない線だし、実質転移系スキルと変わらないし。

 というわけでどうあれ転移系、あるいはそれに準じた何かしらの特殊能力でもって瞬時に、遠く離れた場所から移動してきたと考えるのが妥当と言えた。

 

 となると、考えられる可能性は少ない。

 俺たちは後続の葵さんにサインを出して、他の人の邪魔にならないように道を逸れ、また別の山道……気配のする方向へと進む。

 葵さんたちがついてきているのを、確認しつつも程よい広さの空き地に停車れば続けて軽トラックも止まり。俺たちは一旦、車から降りて集合した。

 

「どしたのみなさん方。ピクニックでもする?」

「飲食物とか何もないですし、近くのコンビニ行かないといけませんねー」

「あ、いえ。実はですね……」

 

 なんじゃらほい? って感じのエリスさんと葵さんに俺は、何もないところに突如、スキル保持者の気配が2つ現れたことを告げ。

 そこから類推できるところを述べていく。

 

「今この世界で転移系スキルを使うなんて、俺の知り合い以外では三幹部の誰かくらいしかいない……はずです。仮にもし他の何者かがいるとしても」

「三幹部の可能性がある、ということが重要なのだから考慮するまでもない、か。というか、探査者の気配を感知できるんだね、山形さん」

「あ、はい。称号効果でして」

「なんでもできますね山形くん」

 

 感心してくるエリスさん、葵さん師弟の視線が何やら照れる。

 半径1km内のスキル保持者の気配を把握できる効果なんて、普段は使い道があまり見つからない能力ではあるんだけどね。こと今回のような対能力者案件においては、それなりにアドバンテージを稼げる可能性はあるみたいだ。

 

 さておき、警戒して気配の元へとみんなを先導する。獣道にすらなっていない森林の中を進みつつも、2つの気配は動くことなく転移地点に留まったままなことを感知する。

 何やら話し込んでいたりするんだろうか。こちらの存在に気づいた様子はないので、向こうがこちらと同じくスキル保持者の存在を察知するような能力を持っている可能性は薄そうだな。

 小声で、後方から俺についてくるエリスさんと葵さんに告げる。

 

「対象に動く気配はありません……そろそろ肉眼でこちらも見られかねない距離です。木々に隠れるにも限度はある。どうします?」

「まあ、こういう時は決まって先手必勝がセオリーだね。葵、任せる」

「ラジャーです。フーロイータ、いっちょやっちゃいますかっ」

 

 こと人間の、それも能力者が相手となると指揮権や主導権は能力者犯罪捜査官にあるべきだ。

 ゆえに判断と対応をお二人に委ねたんだけど、さすがの即断即決である。エリスさんはすぐさま葵さんに指示を出したし、葵さんはそれに先んじてすでに得物である三叉槍──対モンスター用機械兵装フーロイータを用意し、構えだしていた。

 

 ていうか、今さらながらふと気になったんだけど。

 葵さんに小声で尋ねる。

 

「こないだもそうなんですけど、能力者相手に使っていいものなんですか? AMWって。対モンスター用なんですよね?」

「え? ……あー、そこ気になりますよね。結論から言うと、その辺は兼用って感じなんですよ、成り行き上」

 

 名称からしてモンスターとの戦闘を想定している武器を、果たして人間相手に使って問題ないものなんだろうか? そんな疑問に、葵さんはスラスラ淀みなく返答した。

 言い繕いの感じもしない、決まりきった解答って感じだから疚しい事情はなさそうだ。でも成り行き上とは一体?

 気になる俺に、エリスさんが答えてくれた。

 

「AMWの試作機からして、第七次モンスターハザードの際に実戦投入されていてね。その際に犯行組織の能力者たちに対して絶大な戦果を挙げたことから、以後のAMWは対モンスターと謳いつつも、対能力者の状況すら想定して開発されているんだよ」

「つまり……フーロイータも能力者を倒す用途でも作られている、と」

「正直その辺、大分怪しいと思うんだけどね私は。軍事企業大手のウラノスコーポが製造元だし、探査者が戦争に投入された時のことを考えて、元からして探査者を殺せる兵器を開発したかったんじゃないかって疑惑は拭えない」

「そ、それは……」

 

 怖ぁ……対モンスターを隠れ蓑に、実のところメインターゲットは探査者なのかもしれないってこと? えぇ……?




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

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本作
「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」
2巻の発売が決まりました!
2022年12月2日の発売となります!

WEB版から描写を増やしたりシーンを追加したりした、いわばフルアーマースキルがポエミーとなっておりますのでぜひぜひ、お求めいただけますようよろしくお願いいたします!

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