攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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HAYASEのSはサディストのS

 ともあれ、奇襲の甲斐はあり極めて優勢な状況だ。女性のほうは元より無抵抗だったけど、翠川がどう動くか、何をしてくるか読めなかったからね。

 初手でいきなり《座標変動》を使って離脱しようとしたのは、正直意外なほどに用心深く感じたけれど……そこも俺が発動を封じることで不発し、特大の隙を晒すことになった。

 それを逃す葵さんじゃなく、こうして拘束寸前にまで至れたってわけだ。

 

「さて、ちょっと痛いですけど我慢してもらいましょうか翠川均。次、起きた時には探査者病院のベッドの中です。寝心地いいって評判ですよ、よかったですねはっはっはー!」

「ぐ、う……! てめえら……なんでここに……っ!!」

 

 勝ち誇り高笑いする葵さん。ほぼ制圧済みの状況だからだろうか、余裕を見せてくるな。

 そういうのはことがきっちり終わってからでもいいんじゃないかなあ、と素人ながら思う俺。師匠のエリスさんも概ねそんな感じの考えみたいで、いつもよりしっかりした、厳格な声音で葵さんを窘める。

 

「葵。いいからさっさと気絶させなさい。君の悪いところだ、してはいけない場面ですぐに余裕ぶるのは」

「う。か、返す言葉もないです。それじゃあ、《雷魔導》!!」

 

 さすがにまずいと反省して、葵さんは即座に翠川を気絶させるためにスキルを使った。《雷魔導》、発動と同時にはるか晴天の空から稲妻が彼女めがけて落ちる。

 激しい閃光と轟音を伴う落雷が、葵さんに纏わりフーロイータへと吸い込まれていく。AMWに搭載されているという、スキルブーストジェネレータがスキルを受け入れているのか。

 

 以前にも一度見たとおり、《雷魔導》を纏ったフーロイータは激しく放電する。

 それゆえ当然、フーロイータが至近距離にある翠川にも、その電気ショックは伝播して。

 

「────ぐぁああああああああっ!?」

 

 次の瞬間、電気をもろに浴びた翠川の悲鳴があたりに響いた!

 思わず息を呑む。後ろを見ると、香苗さんは絶句して宥さんは目を逸らしているのが見えた。無理もない、想像を遥かに超えてえげつない攻撃だ、これは。

 

「火傷程度の出力なんですけど……精々レベル300くらいの探査者が失神するくらいで、大袈裟な人ですねえ」

「至近からその威力の電気流されればそうもなるよ。いい加減ね葵、そういうサディズムからは卒業してほしいとエリスさんは思うんだけれど」

「いや、私Sじゃないですし。このあと取り調べから裁判を経て、刑務所まで一直線だろう彼を一時、現実から逃げさせてあげるんですからむしろ天使だと葵さんは思いますが」

「そういうとこだよ、ドS弟子」

 

 まったく顔色を変えない葵さんに、さしものエリスさんも若干視線を逸して苦言を呈する。よかった、師匠直伝とかじゃないんだな。

 ただ、葵さんも葵さんで今やっていることがどれだけエグいか、認識してなさそうだし。この人、もしかして結構ヤバいんじゃないのか? 怖ぁ……

 

「がぁああああああっ!? てめっ、てめぇぇええええっ!!」

「叫ぶ余裕あるんですね……もうちょい威力強めますよ!」

「んぎぃええええええええええええっ!?」

 

 死なない程度の加減は無論、しているにせよ。普通なら即座に気絶していてもおかしくない威力に見える電撃に、なお苦悶の叫びをあげつつも戦意を損なわない。

 悪い意味で根性のある翠川だったけど、さらに出力が上がればいよいよ凄惨な悲鳴をあげるしかないようだった。というか、頼むからさっさと気絶してほしい。

 犯罪者だからってそんな、やたら人が苦しむ声なんて聞きたくないんですけど。つらい。

 

「ぐぅうううううっ!?」

「んん? え、タフですね……さっきの1.5倍は出力上げましたのに」

「妙にしぶといな……どうやら想定以上にレベルが高いようだね。全探組に登録してない能力者が、よくもそこまで鍛えたもんだが」

「まともにデータがあったの、青樹だけでしたからね。78年前で更新が途絶えていた火野はさておき、そもそも登録すらされていなかったこの男……翠川はまったくの詳細不明ですし」

 

 いかにオペレータとはいえ、葵さんの電撃にここまで耐えるなんて相当な高レベルでなければ考えづらい。

 同じことを思っていたようでエリスさんもそこについて言及する。そうか、青樹さんと火野老人は一応でも探査者として登録しているけど、翠川はそもそも探査者ですらなく野良の能力者なのか。

 

 となると全探組やWSOにも詳細なデータは残ってないし、称号やらスキル、レベルについても不明ってわけだな。

 次の瞬間、どんなスキルで何をやらかすかも分からない犯罪者。とにかく早期に気絶させたいってエリスさんの気持ちは、遠巻きから見る俺にも分かる話だ。

 

「なんのスキルを持ってるかも分からないし、さっさと意識を飛ばしてほしいんだがねえ。葵、もうちょい強められるか」

「これ以上やると、結構ヤバいですけど……やってみます!」

「────っざっけんなァァァァァっ!!」

 

 さらに出力を上げて、無理矢理意識を飛ばそうとする葵さん。それに対して、翠川は最後の力を振り絞った。

 絶叫にも似た雄叫び。殺意すら篭った声色でなければ、断末魔の叫びとして受け止めるところだけど……違う。

 何かするつもりだ! エリスさんが叫んだ!

 

「飛び退け葵っ、そこはまずい!」

「っ何!?」

「が、ァ──《震動》ォッ! アース、クェイカーァッ!!」

 

 咄嗟の危機を察知して、葵さんがフーロイータをそのままに単身、即座に飛び退く。

 ──瞬間、倒れ伏す翠川を中心として、大規模な範囲の地面が崩壊した。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

【ご報告】
本作
「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」
2巻の発売が決まりました!
2022年12月2日の発売となります!

WEB版から描写を増やしたりシーンを追加したりした、いわばフルアーマースキルがポエミーとなっておりますのでぜひぜひ、お求めいただけますようよろしくお願いいたします!

現在サイン本の予約開始してますので、
作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)
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をご確認くださいませ!
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