攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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落ちた!エリスが落ちた!

 優雅に一礼して名乗るその女性、オーロラ・ウィリアムズさん。何やらダンジョン聖教の騎士団の人らしい。

 なんだかすごそうなんだけど、ぶっちゃけその辺は疎いんだよなあ、俺。ダンジョン聖教についても正直、あまり分かってないのにさらに細かいところまで仰られましてもー……って感じがすごいする。

 

「そ、そうなんですか。えーとぉ……」

「ダンジョン聖教の私設兵団、騎士団の方ですか。歴代聖女を守護する任を負うとされる、実質護衛の方がこのようなところで何を?」

 

 助けを求めて香苗さんを見ると、彼女は質問がてら説明チックにあれこれ語ってくれた。助かる。

 なるほど、要するに聖女のボディガード部隊か。騎士団とはまたずいぶん時代がかった名称だけど、聖女を護る騎士の集いといえば相応しくはあるのか。

 

 未だに俺の腕の中、なんならもたれかかってきているエリスさんを見る。

 この人、初代聖女なんだよな……聞く機会がなかったし、78年前の戦いやバグスキル《不老》にも関わるデリケートな話かもしれないから、これまであまり触れてこなかったけれど。

 ここは少しだけ、質問させてもらおうかな。

 

「エリスさんの時代にも、騎士団ってあったんですか? あと、もう怪我はないはずですけど……お体は大丈夫ですか?」

「いや、なかったねそんな連中。まあ私はいろいろ特殊というか、ダンジョン聖教を盛り立てたのは二代目の聖女ちゃんだから、私は実質あの組織とは無関係だよ。それと体は大丈夫だけど、もうちょいこのままでいさせてよ。人の温もりに弱いんだ、私」

「えぇ……?」

「ああでも、誰にでもこういうことするわけじゃないからそこは誤解なきように。エリスさんは身持ちの固いロリババアさんなのじゃ」

 

 取ってつけたようなのじゃ口調やめろ! 別に誤解も何もしとらんわ!

 ……と、その方面にはややうるさい心の中のオタク山形くん略してオタ形くんは黙らせるとして。エリスさんの話から、なんとなくダンジョン聖教の成り立ちが見えてきた。

 

 たぶん、エリスさん自身はマジで関係ないのだろう。彼女の後に聖女という称号を受け継いだ人が、ダンジョン聖教という組織を上手く運用したのだ。

 もし関係があり、なおかつエリスさんについてアレコレが団体内でも周知されているならば。眼前にいるウィリアムズさんが、この人に対して一切無反応なのも微妙に解せないしね。

 

 存在を消されたのか、それとも一部しか知らないのか。

 いずれにせよエリスさん経由でウィリアムズさん、ひいてはダンジョン聖教と話をするのは難しそう、というのが伺いしれた。

 しかし当のエリスさん自身が、あっけらかんとした調子で話しかけていく。

 

「ええーと、ウィリアムズさん? 今、課された任務だの神谷くんの名前だのを出したけど……君はあの子から何かしらの任を負い、結果としてそこの翠川に始末されかけていた、ということになるのかな」

「え、ええ。仔細は明かせませんが、概ねそのように受け取っていただければ」

「ふーむ? ……これは、神谷くんと直接話したほうがスムーズに行きそうだね」

 

 自身の仕える先々代聖女、神谷さんをくん付けで呼ぶエリスさんに、ウィリアムズさんは面妖な顔をしながらも頷いた。

 仔細は明かせない、ってのはまあ、上司の許可なく勝手に嘯いていい話じゃないだろうから分かる。翠川が倒れた後、何も言わずに去ろうとしていたのも機密漏洩なりを防ぐ意味合いもあったのだろう。

 つまりはかなり重大な事案を抱えている、というところまで推測できるな。

 

 それに対してエリスさんは、こうなればダイレクトに神谷さんと話したほうが早いと判断したみたいだ。スマホを取り出し、何やら触りだす──連絡先知ってるのか。さすが初代聖女だ。

 だが俺はその、スマホを触る手をそっと握って止めた。訝しむエリスさんが、なぜか若干頬を染めつつ言う。

 

「どしたの山形さん? 急に手を掴まれるとキュンってなっちゃうんだけど」

「え。あ、いえすみません。その、連絡するならヴァールのほうがいいと思って、つい。事情の説明や翠川の拘束と搬送も話が進みますし、あいつも空間転移ができますから、場合によっては神谷さんを今この場に連れてこれる」

「ん……なるほど。そりゃグッドアイデア。さすがだね山形さん、略してさす山。100万エリスさんキュンポイント贈呈」

「は、はあ」

 

 のじゃロリといいキュンといいさす山といい、エリスさんの脊髄反射的な適当な口振りにどうも反応しづらい。言動の実態こそ合理的だしスマートなんだけど、取り繕い方がことごとく雑というか、いい加減な気がするぞエリスさん。

 どこからどこまで本音か冗談か、人間としての経験が浅い俺には判別しかねる。

 

「ハッハッハー、これから君とは長い付き合いになりそうだ。ゆっくりじっくりお互いのことを知り合って行こうじゃないか。さてソフィアさん、ソフィアさん、と」

 

 そうして困る俺を見てくすくす笑いながらも、御年96歳という大変な人生の先輩であらせられる彼女は、スマホでヴァール、いやソフィアさんへと電話をかけた。

 

「伝道師香苗。新たな使徒が出現する前触れ、なのでしょうか」

「恐らくは。今は様子を見、頃合いとなればエリスさんにも伝道を行いましょう……ああ、救世主様に仕える使命を帯びるものがまた、ここに一人……」

「怖ぁ……」

 

 裏でボソボソと、エリスさんをターゲットにしだしている狂信者たちが恐ろしい。葵さんはなんかニヤニヤしてるし、なんだこれは?

 展開についていけずに戸惑いながらも黙りこくる、ウィリアムズさんになんだか共感してしまう俺であった。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

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「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」
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各書店様の特典はそれぞれ
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基本山形視点の本編なため、他キャラ視点での話が読めるのは概ね特典関係ばかりですので、興味がお有りの方はぜひぜひ、お求めくださいませー

現在サイン本、書籍版、電子書籍版の予約も行っておりますので、
作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)
もしくは
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