攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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あれ?なんかどこかで見覚えのある風景

 周囲の話をそこはかとなく聞きつつ、イベント周回をこなすこと20分ほど。約束の時間が訪れて、それと同時に俺は空間転移の気配を感知した。

 どこかとこことが繋がる感覚──ワームホールが生み出される雰囲気を察したのだ。

 

「そろそろヴァール、来るみたいですよみなさん」

 

 スマホを片付けてみんなに呼びかける。香苗さんと宥さん、エリスさんと葵さんとウィリアムズさんがこちらを振り向く。

 瞬間、香苗さんのスポーツカーのすぐ近くにワームホールが現れた。俺やリーベが使うのと同じ、正規の空間転移スキルだ。

 となればそこから出てくるのは、当然見知った顔で。

 

「──うむ、寸分違わぬ到着地点か」

 

 金髪のウェーブかかったロングヘア、黒一色のドレス。ソフィアさんと同じ身体を共有している精霊知能、そしてWSO統括理事でもあるヴァールと。

 

「このようなスキルがあるだなんて……システム側というのは、もはや人知を超えているのですね」

 

 細い白髪を短めに切り揃えて整えた、品のいい立ち振る舞いの老婆。2代前のダンジョン聖教聖女、神谷美穂さん。

 揃って大ダンジョン時代における重鎮と呼べるだろう二人が、約束通りに姿を見せたのだった。

 すぐさま俺たちは彼女らに近づき、挨拶を交わす。

 

「こないだぶりだな、ヴァール。神谷さんも、ご無沙汰しています」

「ああ、山形公平。今回もあなたに助けられたな、ありがとう」

「お久しぶりでございます山形さん。この度はダンジョン聖教の者をお助けいただいたようで、感謝に堪えません」

 

 俺が声をかけると、ヴァールも神谷さんも微笑んで応えてくれる。今回、ほぼエリスさんと葵さんに任せきりだったから特に何もしてないんだけど……まあ、何かの役に立てたんなら幸いだ。

 そしてさらりと神谷さん、ウィリアムズさんの身元を半ば、肯定したな。ダンジョン聖教騎士団の一員だなんて、嘘として名乗る理由もないから本当だろうとは思っていたから話が早くて助かる。

 

 次いで今回、直接ヴァールをここに来るよう依頼したエリスさんが挨拶した。

 そう言えばエリスさんからしたら神谷さんってば、後輩の聖女なんだよな。面識はあるみたいだけど、どんな感じに接するんだろうかお互い。

 ちょっと気になる。

 

「ヴァールさん、お疲れさまです。すみません突然お呼び立てしてしまって」

「いや、気にするなエリス。神谷もこの通り連れてきた、お互い久々の対面になるな」

「ハッハッハー、そうですね。30年ぶりくらいだっけ、なあ、神谷くん」

 

 いつもの軽さで笑って、神谷さんを呼ぶエリスさん。その顔は懐かしげながらもどことなく面白がっているというか、いたずらっぽくもある。

 30年ぶり……相当時間が空いての再会なんだな。とはいえエリスさんのほうは不老体質ゆえ、時間間隔が大分ズレてるから、ついこないだくらいのノリだけど。

 

 気さくにやっほー、みたいな感じの挨拶。まったく肩に力の入っていない自然体そのものな彼女に対して、しかし神谷さんのほうはひどく緊張した様子でいる。

 あまつさえ突如、跪いてエリスさんに向け、深々と頭を垂れ始めたのだ!

 

「初代様、お久しぶりにてございます。不肖5代目聖女・神谷美穂、ただいま参上仕りました──」

「相変わらずお堅い子だね。私に対してそういう畏まりはいらないし、君は不肖なんかじゃない。立派に務めを果たしきった、偉大な聖女様じゃないか」

「身に余るお言葉、光栄至極に存じます……っ」

「ハッハッハー、反応に困る」

「えぇ……?」

 

 すごい光景を見てしまった。神谷さんが、先々代聖女が最大限の礼儀をもってエリスさん、初代聖女に接している。

 平身低頭とはこのことか、ってくらいマジな拝み方だ。なんなら拝まれている当のエリスさん自身が冷や汗をかいてドン引きしているほどだ。反応に困るとまで言ってるし。

 

 これアレだ、エリスさんの姿に見覚えというか身に覚えがあるわ。香苗さんと宥さんを見る。

 狂信者ムーヴしている時のこのお二人に、崇め拝まれている時の俺と瓜二つなんだよ今の彼女。すごく共感できてしまう。

 

「30年、いえ初めてお会いした50年前とまるで変わらない美しい御姿……! 今に至るまでずっと、陰ながら世を糺してくださっているのですね、初代様」

「え、えーと。あー、そういう神谷くんは、いい歳の取り方したね。マリーもそうだけど、私のような異端からしたら君たちのほうがずっと、綺麗だよ」

「不老……人類の夢ではありますが、実際にそうなられた貴方様やヴァール様を見ていると、ただ楽しいばかりでないと思い知る心地です」

 

 しんみりした空気。自然の摂理に沿って歳を重ねた神谷さんと、バグスキルにより歳を取らなくなったエリスさん。

 互いに互いを美しいと言いつつも、しかし共通して不老は辛いことでもある、と認識しているみたいだ。自分だけが歳を取らず、周囲のすべてに置き去りにされる……か。それは、辛いことも多いだろうな。

 

 と、そんな空気を裂くようにウィリアムズさんがおずおずと、神谷さんに尋ねる。

 彼女からすれば自分たちのボスがいきなり、見も知らないうら若き女性に跪いたんだから、何が起きてる!? ってそりゃ、なるよなあ。

 

「あ、あの……神谷様。こ、こちらの能力者犯罪捜査官は一体……」

「……御方の存在については秘匿されていますから、知らないのも無理はありません。オーロラさん、この御方こそ初代聖女様です。ダンジョン聖教の象徴として君臨し続ける聖女という立場、存在のオリジナル。我ら教徒がすべからく崇めるべき、始まりの聖女様ですよ」

「────そ、そんなことが!?」

 

 神谷さんの説明に、慌ててウィリアムズさんも彼女の隣に跪いて頭を伏した。ああ、ムーヴがやはりどこぞの伝道師と使徒と重なる……




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

【ご報告】
もうあと半月で発売されます
「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」
2巻の特典についてご報告いたします!

各書店様の特典はそれぞれ
・佐山の日常
・関口の昔日
・逢坂の不安
の、3種類となっております!

また電子書籍特典はマリアベール視点からみた山形についてを描いた前日譚になっています!
基本山形視点の本編なため、他キャラ視点での話が読めるのは概ね特典関係ばかりですので、興味がお有りの方はぜひぜひ、お求めくださいませー

現在サイン本、書籍版、電子書籍版の予約も行っておりますので、
作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)
もしくは
PASH!ブックス公式Twitter(@pashbooks)
をご確認くださいませ!
よろしくお願いいたします!
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