攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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過激派が本当に過激なことをしでかしていた件について

 山の麓の空き地。蝉の音が遠く響くこの場所は、時折近くの国道を車が走る音がするばかりで、俺たち以外の何者もいない。

 あまり表沙汰にしたくない話をするにはそれなりに適した場所と言えるだろう。

 

 ダンジョン聖教の一員がなぜ、倶楽部の幹部である翠川に狙われ、あまつさえ殺されかけていたのか。ウィリアムズさんが遂行していた使命とはいったい、なんなのか。

 そうした疑問に答えるように、神谷さんは彼女たちの経緯を話し始めた。

 

「ことの起こりは我々ダンジョン聖教の一派閥、過激派と呼ばれる者たちが何やら不審な動きを示したことにありました」

「過激派……というとたしか、召喚系スキルを用いて何やら無謀なことをしようとしている連中でしたっけ」

「はい。山形さんには以前、祝勝会の折にお話させていただきましたね」

 

 神谷さんに言われて思い返す。過激派ったら、たしか神本体を召喚させようだなんてわけの分からないことを画策している一派だったと聞いている。

 先代聖女のアンドヴァリさんなる人も絡んでいるとかで、聖教内も大分ごたついてるんだな〜って組織の闇を感じさせる話ではあった。

 

 その過激派たちが、今回の件と関係している?

 どういうことなのか、視線で問えば神谷さんは続けて説明した。

 

「どのような手段を用いてか、不遜にも神をこの世に喚び出そうとしている過激派の者たち。聖教内で彼らを調査していたところ、思わぬ事実が発覚しました」

「ふむ、話の流れで行くと倶楽部と裏で繋がっていたってとこだけど……」

「正解だ、エリス」

 

 推測するエリスさんに、ヴァールが肯定した。

 WSO統括理事として、彼女もすでに経緯は把握済みなんだろう。あるいはそれもあり、エリスさんと葵さんを今回、この地に呼び出したのかもしれない。

 

「ダンジョン聖教過激派と倶楽部は裏で繋がっている。神谷たちもここは未確認なのだが、密輸されたスレイブモンスターの残りもほとんど過激派に流れていると見ていいだろう」

「……なるほど。通りで見つからないわけだ。裏社会の組織とは規模も違えば握っている権力も違う。密輸ルートの一つを隠蔽するくらい造作もないってわけですね」

「神に賜りしダンジョンに巣食う寄生虫、それがモンスター……だというのにそれを私的に囲い、あまつさえそのためにダンジョン聖教を隠れ蓑にするなどと……!」

 

 苦い顔をするエリスさんとは裏腹に、ウィリアムズさんが顔を真っ赤にして怒りの呻きを漏らした。

 この人、クールな素振りの割に感情表現が素直なんだろうか? さっきも葵さんの下ネタに、顔を赤くして反応してたしな。

 

 というかダンジョン聖教の見解としては、ダンジョンとは神に与えられた宝か何かみたいなもので、モンスターはそこに巣食う寄生虫って扱いなんだな。

 事実としてはむしろモンスターが主体で、ダンジョンなんて結局、オペレータに彼らを狩らせるためのフィールドでしかないんだけれど……素材とかいろいろ価値あるものも手に入るし、解釈次第ではあるのか。

 

「……過激派たちは倶楽部に、組織の運営金を一部横流ししていました。そこは裏が取れたのですが、見返りにモンスターを受け取ったのか、というところの証拠は掴めていませんでした。少なくとも過激派の拠点をいくつか調べましたが、何も見つからず」

「それで今度は、過激派でなく倶楽部のほうを調査するという流れになったそうだ。そしてその任に当たっていたのが、そこなオーロラ・ウィリアムズというわけだな」

「なるほど。そしてそれがバレて、翠川に追い詰められての今と」

 

 つまるところ、聖教は聖教で独自に、倶楽部の調査に動いていたってことだな。ウィリアムズさんを潜入させて、過激派との関係の決定的な証拠を掴もうとしていた、と。

 だがそれが向こう側にもバレてしまい、幹部の一人である翠川に捕まり、趣味も兼ねて甚振られかけていたってわけか。

 

 うーむ……経緯がわかればウィリアムズさん、相当窮地だったんだなってことが分かる。

 翠川が何がなんでも彼女を殺そうとしていたことを思うと、それなりに知られたくないことは知られてしまったんだろうし。となると彼女の持つ情報は、エリスさんや葵さんにとっても値千金なものである可能性も大いにある。

 

 もちろんそんなアレコレがなくとも当然、命が助かってよかったけれども。潜入調査で得た情報をも護れたのだとなれば、これはまさしくファインプレーだったわけだな、エリスさん。

 神谷さんがウィリアムズさんに、穏やかに問いを投げた。

 

「初代様に庇われなければならなかったほどに、倶楽部はあなたを始末する必要に迫られていた。オーロラさん、何か得たのですね? 情報を」

「……はい! このオーロラ・ウィリアムズ、初代様のご助力をも賜りながら、己の任はしかと果たしました!」

 

 力強く頷く。ウィリアムズさんはそして、懐からUSBメモリを取り出した。簡素な白色で、市販品のようだ。

 神谷さんにそれを渡しながらも、彼女は高らかに宣言した。

 

「こちらは倶楽部が過激派に、スレイブモンスターを密輸していた資料と、そしてもう一つ……! スレイブモンスター製造に関する資料が収められた、メモリになります!!」




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

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