攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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国内外4組織「倶楽部滅ぶべし、慈悲はない」

「スレイブモンスターの製造法だと!?」

「暗号化されていますが間違いなく。翠川がここまで執拗に私を狙ってきたのが、その証拠かと」

 

 いつになく驚きの声を上げるヴァール。無理もない、いきなりとんでもない資料が手元に舞い込んできたも同然なのだから。

 倶楽部に潜入調査していたウィリアムズさんが、翠川に執拗に狙われた理由。それはダンジョン聖教過激派との繋がり以上に重要な、倶楽部の核心とも言える重大な情報を手に入れていたからだった。

 

 すなわち、スレイブモンスターの製造法。倶楽部の日本支部においてのみ開発された、極めて謎の多い技術についてが今、神谷さんに渡されたUSBメモリの中に収められていたのだ。

 これには神谷さんも目を見開き、常の穏やかな表情を驚きに丸くして、ウィリアムズさんを見ている。

 

「オーロラさん、あなたは……!」

「たとえこの命、この身がどうなろうともこのメモリだけは神谷様にお渡しする覚悟でおりました。無事に、お渡しできて本当によかった……!」

 

 心底から安堵してウィリアムズさんが微笑む。ずっと張り詰めていた緊張の糸が切れたのか、一筋の涙さえ溢して。

 

 その姿に、俺は思わず息を呑んだ。

 なんてお人だ……己を捨てる覚悟で、手にした重大資料を護ろうとしていたのか。神谷さんに言い渡された使命を果たす、その一心で。

 見れば神谷さんも涙を浮かべている。そして自らが託した以上の結果を、まさしく命懸けで護り抜いたウィリアムズさんの肩を優しく抱き寄せた。

 

「よくぞ……よくぞやってくれました、オーロラ・ウィリアムズ。あなたはダンジョン聖教騎士団の、いえ探査者の誇りです」

「見事だ、オーロラ・ウィリアムズ。これで事態は一気に進展する。スレイブモンスターの製造法が判明すれば、こちらの打てる手はいくらでも広がるからな」

「っ……! もったいなきお言葉!」

 

 ヴァールも讃える。それだけのことをウィリアムズさんは成し遂げてくれたんだ、当然だろう。

 エリスさんも感心しきりの様子で、葵さんと二人で話しているね。

 

「うーむ、まさに騎士だね。あの忠義と使命感はすさまじい。ラウラを思い出したよ」

「それって、二代目の聖女さんですか?」

「ああ。ちょうどあんな感じの子でね、正義感と責任感が強くて、空回りしがちだったけどいい子で私は好きだったよ。聖女としての後継だったこともあって、あるいは一番弟子と言える子かもしれない」

「ほへえ〜。会ってみたいですねえ」

「死ねば会えるかもだけどオススメはしないよ。まだうら若いんだし、葵は」

 

 何やら二代目聖女さんのことを想っているみたいだ。口振りからするにもうお亡くなりなっているようだけど、エリスさんがそこまで言うからにはいい人だったんだろうね。

 

 さておき、ウィリアムズさんがそうまでして護ったメモリは今、正しく神谷さんの手に渡った。暗号化されているというけど、これを解析すればスレイブモンスターについてその詳細が、明らかになることが予想される。

 そうなればこっちのものだ。WSOも全探組も、手に入れた情報を活かして倶楽部を追い詰めることに躊躇はないだろうし。倶楽部としても、自分たちの技術の謎が割れたことで被る痛手は、尋常のものではないだろう。

 

 倶楽部壊滅に向けての、大きく価値のある一歩。ウィリアムズさんの功績であるところのUSBメモリは、それだけの値打ちを秘めていた。

 ヴァールが凜とした佇まいで、力強く神谷さんへと告げる。

 

「となればこうしてはいられんな。神谷」

「はい。これよりダンジョン聖教先々代聖女・神谷美穂はWSO統括理事ヴァール様の指揮下に入る形で、能力者犯罪捜査官の捜査に全面的に協力いたします」

 

 WSOのトップと、ダンジョン聖教のかつてのトップとの間でトントン拍子に話が決まっていく。

 これって、要するに事実上の協力関係だよなあ、WSOとダンジョン聖教の。かなり重大な話だとおもうんだけど、即断即決で話がまとまったあたり、神谷さんも先々代とはいえ聖女だった立場としてかなりの権力を持っているみたいだ。

 

「うむ……さしあたってはデータの暗号解読と確認だ、頼めるか?」

「もちろんです。教団内の特別チームをすぐさま動かします。彼女の決死の覚悟、必ずや事態解決のために活かしてご覧に入れましょう」

 

 そしてデータの解読を、ダンジョン聖教側が請け負うという。まあ、これについてWSO側が勝手にってわけにはいかないもんな。

 何せ元々はダンジョン聖教騎士団のウィリアムズさんが、神谷さんの命を受けて潜入した結果、手に入れることができたデータだ。所有権は当然神谷さんにある以上、そのデータをどうするのかもダンジョン聖教側に権利があるわけだし。

 

 ヴァールも神谷さんもそれを承知の上で、それで口頭ででも協力関係を結んだんだろう。WSOの能力者犯罪捜査官にも情報共有が行えるように、足並みを揃えての共同戦線を張れるように。

 続けてヴァールが、矢継ぎ早に手続きに関してを話していく。

 

「すでにWSOは今回の件に関して、この国の全探組や警察と同盟関係にある。そこにダンジョン聖教も加わる形になるのでそれは分かっておくように。公式な打診は翠川を警察に引き渡した後、ソフィア発信でお前宛に行う」

「承知いたしました。打診をいただき次第、当代聖女様の許可を取り付けましょう」

「頼むぞ」

 

 うーむ、テキパキ動くなあ。こういうところを見ると、ヴァールもなんだかんだただの脳筋精霊知能ではないんだなって感慨深くなるよ。

 かくして、公式には後日となるけど事実上、この時をもってダンジョン聖教が対倶楽部戦線に参加したのであった。




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