攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
翌日、8月1日。いよいよ8月に突入して、今日も今日とて全探組県本部はいつもの休憩室。
いつも通りの香苗さんと、昨日もお世話になった護衛の葵さんと並んで3人座り、俺は二人の女性と向き合っていた。
「よろしくおねがいします、先生〜!」
「おなしゃーすセンセー」
「先生はやめてください」
折目正しくこちらに頭を下げてくる、清楚系お姉様な感じのアメさんこと鹿児島天乃さん。対してニヤニヤと明らかに面白がった笑みを浮かべて棒読みで挨拶してくるガムちゃんこと新潟花夢ちゃん。
先生呼びは勘弁してと言ってるんだけど、どうもこの呼び方に拘りがあるみたいだ、アメさんは。ガムちゃん? いかにも生意気な女の子って感じのからかい方してきますね、中学時代のあまりよくない記憶を掘り起こされそうで息が苦しくなりそう。
さておきこの二人、実を言うと俺がいろいろ教えることになっている。主にこないだの夜祭からである。
アメさんは《召喚》、ガムちゃんは《忍術》とそれぞれレアなスキルを持っていて、周囲にその辺について知っているのが俺しかいないということで関口くん経由から頼み込まれたのだ。
「先生からの初の授業、心して勉強させていただきます!」
「よ、よろしくおねがいします……あの、先生はちょっと」
師弟関係とこの二人は認識したいみたいだけど、俺からすれば遠慮したいことこの上ない。俺自身がペーペーなのに、先生だの師匠だの呼ばれるなんてお調子者にも程がある。
なんだけど、面白がってるだけのガムちゃんはともかくアメさんがガチなんだよなぁ……めっちゃ真剣な顔で、俺のことをまっすぐ見つめてくるし。
「教えを請う以上、先生と呼ぶのは当然ですから! よろしくおねがいします〜!」
「は、はあ……」
「熱血ですねえ」
「意外な一面、と言うべきでしょうか? ふふ、いい傾向です。やはり信仰とは最初に敬意、尊敬があってこそですし。ふふふ」
熱っぽく語る彼女に俺はタジタジ、葵さんはちょっと遠巻きから呑気につぶやくばかりだ。いや本当、意外すぎるよアメさんの熱血属性とか。
そして香苗さん、頼むからその伝道ロックオンモード止めてもらえますかね? 山中で宥さんと話してた通り、マジでアメさんガムちゃんを使徒堕ちさせるつもりなんだろうか。
関口くんに合わせる顔が無くなりそうだこれ怖ぁ……
と、ガムちゃんがやたらニターって笑って俺を見ている。この子、俺のことをからかい甲斐があるシャイニング山形だとすっかり認識したみたいだ。楽しそうで何よりです。
「パイセン、年上のお姉さんに先生とか言われて実は満更でもないんでしょ」
「なんでそうなるの? ガムちゃん……」
「だってうちの弟が、そんなの男のロマンじゃん! って騒いでましたし。えっと年上の女性が弟子として慕ってくることでしか得られない栄養はたしかにこの世に存在するとかなんとか」
「君の弟さんはおいくつなのかな?」
「13歳です。私の一個下ですね」
完全に行くところまで行っちゃったエリートオタクじゃん!
言ってることが中学生とは思えない。実は異世界転生して人生二周目とかだろ、きっとそうに違いないよ怖ぁ……
「実際、御堂さんや望月さんだってパイセンのこと神か何かみたいに──」
「救世主です。そこはお間違えないように新潟さん」
「──あ、はい。ええと救世主か何かみたいに慕ってますし。正直私がその立場だったらすごいことになってますよ、自尊心と自己肯定感が」
「そ、そうかなあ……?」
たぶんそれは隣の芝生ってやつでして、おそらくガムちゃんも俺の立場になったらドン引きすると思う。
いやまあ、たしかに本音を言えば背徳的な心地の良さはうっすらあるけどね。それを上回る狂信者たちへの恐怖と困惑があるってわけなの。初対面でいきなり各種連絡先を求められた時の感覚は筆舌に尽くしがたいの。
こればかりは実際にこの立ち位置に収まってみないとわからないだろうなあ。ガムちゃんもいつか、乙女ゲームの主人公みたいにイケメンたちに迫られてみてほしいなあ。
そんなことを考えつつも、さておき俺は本題に入った。
「えーと、さて! 雑談はそこそこにして、一応ですけどアメさんとガムちゃんには、それぞれが持つスキルについて俺の知っているところをお伝えしたいと思います。よろしくおねがいします」
「! はい!」
「……よろしくおねがいします、山形先輩」
元々前のめりなアメさんが再度頷き、それまでのニヤニヤ顔から一転して真面目な顔をするガムちゃん。
やっぱり自分たちのスキルに関わる話となれば気持ちも一瞬で切り替わるよな。それだけ本気で力と知識をつけたいと思っているってことだし、俺に対して縋るような思いで頼ってきているという証左でもある。
だったら、その願いと頼りに応えないなんてあってはいけない。
これからの世界を担う、新たな時代のオペレータたち。彼女たちが求めるのなら俺は、いつだってできる限りを尽くさせてもらおう。
それがかつての時代を拓いた者としての、これから為すべきことの一つでもあると信じるから。
「《召喚》に《忍術》……文献すらほとんどないスキルについての知識をお持ちとは、マジで何者なんですかね、彼」
「言っているでしょう? 救世主ですよ。御自身のすべてを擲ってでも世界を救い、そして私達に託してくださった……誰より尊く何より優しい、光の救世主様です」
葵さんの率直な質問に、なんかエモい感じの表情で返事する香苗さん。
えぇ……? って感じで閉口した様子の葵さんからは努めて目を背けつつ、俺はアメさんとガムちゃんにレクチャーを始めた。
ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー
【ご報告】
12/2に発売されます
「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」
2巻の特典についてご報告いたします!
各書店様の特典はそれぞれ
・佐山の日常
・関口の昔日
・逢坂の不安
の、3種類となっております!
また電子書籍特典はマリアベール視点からみた山形についてを描いた前日譚になっています!
基本山形視点の本編なため、他キャラ視点での話が読めるのは概ね特典関係ばかりですので、興味がお有りの方はぜひぜひ、お求めくださいませー
現在サイン本、書籍版、電子書籍版の予約も行っておりますので、
作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)
もしくは
PASH!ブックス公式Twitter(@pashbooks)
をご確認くださいませ!
よろしくお願いいたします!