攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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名無しさん@はじまりの4体

 《召喚》スキルの基本事項についてそこそこに話して、いよいよ実際の召喚に関しての話へと移る。

 言うまでもなく重要な部分だ、心して話さないとね。ノートにあれこれメモを取る一同が、落ち着くのを見計らって俺は再度、口を開いた。

 

「さて、概念存在を呼び出すスキル《召喚》の効果についてですが、発動するにも条件があります」

「条件……召喚物を呼び出すための、条件を満たすこと、ですか? 文献にはそう書いてありましたけど」

「そのとおり。スキルを発動するためにはそもそも、概念存在を召喚できるだけの土台がないと成立しないんですよ」

 

 言葉遊びというか、微妙に揚げ足取りみたいな話ではあるんだけど……《召喚》の発動とはすなわち概念存在を現世に呼び出すことなので、そもそも彼らを呼び出せる状況下にないならばスキルの発動もできないのだ。

 魔導系や魔法系であれば、発動してからの不発なんてこともなくはないんだけどね。スキルの発動と概念存在の顕現がイコールで繋がる処理を行うこのスキルに限って言えば、不発なんて概念はなく召喚か、そもそも発動できないかの二択になるのだ。

 

「なので突発的な状況で焦って《召喚》しようとしても、満たす条件がないからそもそも発動ができない、なんてこともあり得るわけなんですよ」

「はい……そこのところは関口くんにも危惧されてはいます。そうした際に対処の方法を増やせるように、《合気》のような近接格闘スキルを身につけるべきとも言われていますね」

「手札を増やす。オーソドックスゆえに一番分かりやすい対応策ですね」

 

 《召喚》の弱点の一つである、条件が揃ってないとそもそも発動すらできないという点について、たしかに別のスキルで補うのは基本をしっかり押さえた措置だろう。

 他の召喚系スキル保持者を見たことがないんだけど、まさかアメさんみたく他に何もスキルを持っていないってこともないだろうし。S級探査者としてちょくちょく話を耳にする神話生物ジョッキー愛知九葉さんだって、その辺をなにか別の方法で補っていたりするんだろうな。

 

 ただ、今回の場合はちょっと別のアプローチでそうした弱点の補助を考えていこうと思う。

 条件が揃っていないと発動すらできないスキル。であれば逆に、条件さえ満たせばいつでもどこでも発動できるということだ。

 

 ならば、いつでもどこでも条件を満たせるモノたちを紹介すればいい。

 俺はアメさんに、心なし密やかな声色で教える。

 

「……実を言えば、ほとんど無条件で召喚できる概念存在は何体かいます。彼らをうまく活用すればきっと、他のスキルがなくとも最低限の避難くらいはできるはずです」

「む、無条件!? そんな方がいらっしゃるのですか、先生!?」

「ええ。概念存在の中でも一際、特殊な存在なんですけどね」

 

 ぶっちゃけると通常の手段ではまずお目にかかれない、極めて特異な存在たちだ。概念存在のどのカテゴリにも属さない、隠し要素的なやつだね。

 たしか現世宇宙を開闢させる以前の頃、概念存在と概念領域を拵えるにあたってのテスト的に俺とワールドプロセッサで創り上げたんだったかな。大した力を持つわけじゃないけどその分、あらゆる条件に適合するという性質を持っているモノ達だ。

 

 今や概念存在達の中でも、それらを知るモノは早々いないため、システム側の存在にしか認知されていない存在。

 ていうか現在ではそのモノ達は、概念領域とシステム側の間の層にいたりするので……彼ら的には自分達とは別の存在にしか思えないかもしれないな。その程度には概念存在でありつつも隔絶されたモノ達なわけだ。

 

「そのモノたちを呼び出す条件はたった一つ。その存在についての知識や存在を認識すること……そういうモノがいると知っていれば絶対に召喚できるけど、知らなければ絶対に召喚できない、という性質のモノなんですよ、彼らは」

「と、ということは今。私は先生から聞かされたから……」

「ええ。事実上、召喚条件を満たしました。いつでも呼び出せますよ。確認してみてください」

「は、はい……!」

 

 言われるがまま、アメさんは虚空を凝視した。おそらくスキル《召喚》の発動条件欄──ステータスのような感じで、しかし声に出さずとも念じれば出てくる──を表示し、確認しているんだろう。

 そしてそこには、何体かが召喚可能になっているはずだ。ガムちゃんがソワソワしつつ、アメさんに問い質した。

 

「ど、どうなのアメ姉。召喚、できるの?」

「……で、できるわ。見たことも聞いたこともないモノたちが4体、名前があるもの」

 

 やっぱりな。これでもし表示されなかったらとんだ赤っ恥だよ。思わず内心にて安堵する。

 本来ならば現世や概念領域の誰も知らないがゆえ、そのモノ達は"知られる"ことを条件としている。今回のようにシステム側の存在が教えることが稀なので、となれば本当なら日の目を見ることもないまま終わるはずだったモノ達だ。

 

「ネムレス、ノナメ、ゴンベ、ムメ──これらが、その?」

「ええ。特殊な概念存在たるモノたち、"始原の4体"です。本来は名無しの存在なので、表示されている名前はあくまで日本語訳における仮称でしょうね」

 

 邪悪なる思念がいなければ。システム側が意志を持たなければ。大ダンジョン時代が訪れなければ。そして俺が、コマンドプロンプトでなければ。

 未来永劫に次元の狭間にて存在していたモノたちが今、鹿児島天乃の手に渡った。こう聞くと大層だけど、実際のところ大した強さはない連中だからね。

 まあ、上手い感じに呼び出してあげてほしい。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

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基本山形視点の本編なため、他キャラ視点での話が読めるのは概ね特典関係ばかりですので、興味がお有りの方はぜひぜひ、お求めくださいませー

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作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)
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