攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ある意味ビジネスライクなスキル

 特殊な、いわば概念存在のプロトタイプとも呼べる存在が4体。本来であればすでに役目を終えており、二度と現世にも概念領域にも姿を見せることのなかったはずのモノ達。

 始原の4体。それが今、俺を介してアメさんが召喚できるようになった。まあ、結局プロトタイプだし戦闘力って点においては微妙だし、使える力もあんまり大したものじゃないけど……

 

「その4体の一番のメリットはやはり、ほぼ無条件で呼び出せることでしょうね。戦闘力もほぼないですし特殊能力もないですから、言い方は悪いですけど囮とか陽動がメインの使い方になるかもしれません」

「そんな……無条件で召喚できるだけでもすごすぎます、先生……」

 

 愕然とした様子で俺を見るアメさん。ガムちゃんもどこか、俺を得体の知れないものを見る目でいる。

 さすがに、大盤振る舞いしすぎただろうか……いやでも、アメさんの今後を思うとこのくらいはしておきたいところはあったしなあ。この人、焦ると極端に視野が狭くなりがちだし。

 

 ほぼ無条件で呼び出せるってだけでも、パニックになったアメさんにはとりあえずしがみつける藁になってくれるかもしれない。そして召喚したら召喚したで、何かはさせられるだろう。

 もっとも、と付け加えて彼女に話す。

 

「繰り返しになりますけど、その4体は大した力を持ちません。戦闘力って意味でも特殊な能力って意味でもほとんどない、言っちゃうとサラマンダーをはじめとした下位精霊よりもなお弱いモノたちです」

「それでも状況を問わず召喚できるって点で、汎用性が突き抜けてるわけですか、パイセン」

「そういうことだね。今の話で言えばサラマンダーはダンジョン内じゃないと喚べないけど、始原の概念存在たる4体はどこでも喚べます」

 

 ガムちゃんの質問にも応えつつ、彼ら始原の4体のメリットについて語る。どこでも呼べる場所と状況の選ばなさ、これこそが彼等の強みだ。

 反面、戦闘力については恐ろしく低い。そもそも戦うための存在じゃないから当たり前なんだけど、加えてなんの特殊能力も持ってないからね。

 

 なんせ試作品だし、戦闘なんて想定してない頃の創造物だし。結局のところ原型でしかないため、最低限度の機能しか持たせてなかったんだよな、ワールドプロセッサもコマンドプロンプトも。

 

 普通の概念存在の中にももちろん、そうした戦闘に不向きなモノたちもいるけど……大概の場合彼らはそれはそれとして各自、神通力的な不思議パワーを持っている。現世の信仰心やら認知度などの認識を受けて、バフがかかっているモノだっているくらいだ。

 一切そういうのがない、誰にも知られずなんの力も持たない存在なんて、数ある概念存在の中でもその4体くらいなものだろう。

 

「現時点のアメさんにとってはそれなりに有用とは思いますけど、実力が上がってきていろんな概念存在を召喚できるようになれば、その時点で彼らはお役御免ってことになるでしょう。言っちゃうとつなぎというか、《召喚》というスキルそのものに慣れるための練習台的な概念存在だってことは、覚えておいてほしいです」

「それは……なんだか、使い捨てみたいで可哀想な気が……」

 

 顔を曇らせるアメさん。ハッキリと練習台って言っちゃったのはちょっといけなかったかな。

 必要がなくなったら喚ばなくなるってのは、優しい彼女の心が痛むんだろう。今でさえそうだったら、実際に召喚して彼らに接するとさらに愛着やら罪悪感やらが出てくるかもな、これだと。

 

 とはいえ始原の4体も、彼らは彼らで自身の元いる次元でのんびり暮らしているから、そこまで可哀想とかって話でもないんだけどね。

 たまにシステム領域に姿を見せては、精霊知能とあれこれ世間話なんかして適当に過ごしてたりもするし。

 

 概ね暇を持て余している連中が、ちょっとしたアルバイトを始めるって程度の感覚でいてもらっといたほうが、アメさんにとってもいいのかもな。

 そう考えて俺は、彼女にかいつまんで説明する。

 

「《召喚》っていうのは、スキル使用者の呼びかけに概念存在が応じて、一時的な協力関係を結ぶってプロセスのスキルです。なんなら彼らも彼らなりにメリットがあるんですから、あまり気の毒がる必要はないですよ」

「そ……そういうもの、なんですか?」

「ええ。逆に何も用がないのに呼び出すとか、喚んであげないと可哀想だから呼び出すとかのほうが概念存在たちは嫌がると思いますよ」

 

 嫌がるっていうか、そもそも見向きもしないだろうしスキルの発動も不発に終わるだろう。

 《召喚》は決して、概念存在を従えたり屈服させたり、ましてや愛玩動物のように扱うためのものではない。互いの利害が一致した上で一時的に共闘する、一種の契約スキルなのだ。

 

「あくまでアメさん、あなたの都合で概念存在に契約を持ちかけるんです。そして向こうは向こうの都合でそれに応じる。ビジネスライクなものでしかないので、そう気に病む必要はありませんよ。今すぐには無理でも、少しずつ割り切っていきましょう」

「わ、分かりました……頑張ります」

「アメ姉、気を遣いすぎなんだよ」

「うう……」

 

 妹分のガムちゃんにまで言われて、落ち込むアメさん。

 その心優しさ、繊細な感受性は決して否定されていいものじゃないし、俺としてはとても素敵で綺麗な精神性だと思うんだけど……こればかりは向こうとの兼ね合いもあるからね。

 一方通行の善意が話を食い違いさせかねないとなると、ここは申しわけないけど言っておかないとね。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

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「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」
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基本山形視点の本編なため、他キャラ視点での話が読めるのは概ね特典関係ばかりですので、興味がお有りの方はぜひぜひ、お求めくださいませー

現在サイン本、書籍版、電子書籍版の予約も行っておりますので、
作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)
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