攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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見て盗めも何も見るものがないんですがそれは……

 アメさんのスキル《召喚》についての話とか説明についてはこの辺にして、次はガムちゃんのスキル《忍術》だ。

 こちらのスキルについては《召喚》以上にシビアな現状で、マジでほとんど文献がないらしい。そもそもからして。100年続いた大ダンジョン時代にあってなお数人しか過去、保持者が現れなかったっていうんだから筋金入りだろう。

 

 その辺、散々資料を探し回ったんだろうガムちゃんが憮然とした面持ちで、不満あるいは愚痴を溢していた。

 

「過去の保持者の人達もさすがに、ちょっとくらいは資料なり残しとけよって思いません? 日記とかでいいんですよ、手記とかでも。ガッツリした研究成果どころか《忍術》についての言及がされた資料すら見つからないのはさすがにおかしいです」

「まあねえ。そこについては俺も、過去の保持者達は後続の保持者に何か遺すつもりはなかったのかな? とは思うかなあ」

 

 世界的に見ても極めてレアなスキルについて、保持者は何かしら情報を残しておいてもいいんじゃないかとは、たしかに俺も感じる。

 レアスキルについてはとどのつまり、過去の保持者が残した情報こそが頼りとなる。全探組に資料として引き渡されたものもそうだし、個人的な日記や手稿などに書きまとめた雑感だけでも、あるとないとでは大違いだ。

 

 そうしたものをほとんど一切、残すことのなかった過去の《忍術》保持者は一体、どういうつもりだったのか。理由があって何も残さなかったのか、それとも面倒くさがったとかだろうか。

 ガムちゃんの指導官としても活動している葵さんが、ふと口を開いた。

 

「一応、わずかながらですが資料はあったんですけどね……それについても、《忍術》は自らの手で試行錯誤して編み出すものナリとかなんとか書き残して、それだけでした」

「えぇ……?」

「現在でも活動されている《忍術》スキル保持者にも連絡して、よければアドバイスなどいただけないかと頼んでみたんですが、はっはっはー! すげなく断られちゃいましたよ。自分は独学でどうにかやってきた、その子もどうにかやれるでしょ! って」

「後進に対してなんの助言もしないとは……どういうつもりでしょうか」

 

 完全に何も教えるつもりのない資料なり先達に対して、不満を吐露したのは香苗さんだ。探査者としてあるまじきことです、などと鼻息を少し荒くしている。

 この人はA級トップランカーだった頃からだけど、先達は後進への模範たるべしって意識が高い人だからね。S級として対外的にもそうした姿勢が求められる立場になった今、そうした突き放すような姿勢はなおのこと、許し難いのかもしれない。

 

 ただ、葵さんは苦笑いしつつも見解を異にするようだった。

 やんわりと宥めるように、香苗さんへと言う。

 

「昔ながらの探査者達には、そういうタイプもいるっぽいんですよ御堂さん。見て盗め、自分で考えろが基本と言いますか」

「それは知っていますが、そうした人たちもそこまで教えることに対して消極的ではないでしょう? 何一つヒントさえ残さないでは、見て盗むも何もありません」

「そこが超希少スキル《忍術》の大変なところなんですよねえ。自助努力が基本の人たちなので資料は残さないけど、そもそも母数が極端に少ないから見るも何もあったものじゃない。負の連鎖になっちゃってるんですよ、残念ながら」

「自分ができるからと言って、なぜ他人に、それも後進に押し付けるのか……理解しかねますね」

「はっはっはー! ぶっちゃけ同感です」

 

 頭が痛いとばかりに嘆く香苗さんに、豪快に笑いつつ同意する葵さん。どうにも昔ながらの理屈と《忍術》保持者の数の少なさが、相乗効果をもたらしてここまで何も伝わっていない状態を生み出しているみたいだね。

 技術の伝承とか継承とか、割とマジで一切ないんじゃないかな、《忍術》保持者の間には。そんなことだと永遠に同じ形で、独学から適当なスキル運用が行われていってしまうように思うけど。

 

 これ、ヴァールってかWSOは把握してるのかな……してない気がする。さすがに数人しか出現してない保持者までカバーするのは、ちょっと無理があると思うし。

 先人のノウハウやら教訓やらが一切存在しないのはキツい。直接関係のない俺でさえそう思うんだから、ガムちゃんはもっと厳しさを感じていることだろう。

 

 事実、今も呆れたような、苛立ったような感じで呟いてるしね。

 

「最低限の資料とかくらい後世に残しといてよポンコツども……! 自分一人で始めて自分一人で終わるなんてそんな迷惑な話あるかっての……!!」

「が、ガムちゃん落ち着いて? 先生が、先生ならなんとかしてくださるわ」

「怖ぁ……」

 

 八方塞がりな状況に、ストレスが溜まっているのか口調が荒くなるガムちゃん。気持ちは分かるけど落ち着いてほしい、君は穏やかなほうが素敵だ。

 そしてアメさん、俺に何もかもを丸投げする勢いで託してくるの止めて? 《忍術》について教えることは教えるけど、そんな調子で何かあったらとりあえず俺に投げるとかされるとそのうちとんでもないことになると思うの。こわい。

 

「……そうですね。パイセン、すみませんがご教授お願いします。これまで忍者ごっこで一人遊びしてた連中とは違って、私はしっかりと後世に伝えられるよう資料を作りますから」

「う、うん。分かった……頑張ります、俺も」

 

 アメさんの取り成しに、どうにか冷静さを取り戻して俺に頼み込んでくるガムちゃん。

 後世の同スキル保持者のためもあるし、これは本気で取り組まないと大変だぞ……




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