攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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モンスター3分スレイビング

 エラーダンジョンと言っても結局のところはダンジョンだ、内部構造に何か変わりがあるわけじゃない。

 至っていつもどおりの光景。土塊の床と壁、そして通路。この分だと部屋だってあるんだろう、そんな道を俺と葵さん、そしてヴァールはひた走っていた。

 

 モンスターはやはり外へ出ようとして倒され尽くしたのか、道中にはなんの気配もない。かといってトラップの一つもあるのかと内心身構えていても、そうした感じもない。

 ただ、入口付近に大量の素材が置いてあったのはちょっと新鮮な光景ではあるな。俺のトラップに引っかかって、称号効果による素材確定ドロップでこんなことになったんだろう……今はさておき帰り際、ちゃんと回収しとかないとな。

 

 ともあれそんな調子で平和な道中そのものだ。

 若干拍子抜けな感じがするなと思っていると、ヴァールが走りながらも俺と葵さんに話しかけてきた。

 

「トラップが無数に張り巡らせてある、くらいは覚悟すべきと考えていたが……そもそもモンスターで溢れかえっていたダンジョンだからな」

「罠なんて仕掛けるスペースもなし、でしょうかね。というかそこまでモンスターが飽和していた中を、よくもまあ翠川は入り込めたもんです」

 

 なるほど。元々からしてこのダンジョンはエラーのため、モンスターで内部が溢れかえる地獄の様相だったはずだ。

 となれば罠の設置なんてとてもじゃないけどできなかったことだろう。そもそもスペースがないし、下手するとモンスターが先に引っかかっちゃうしね。

 

 しかし葵さんの疑問ももっともで、そんなモンスターだらけのダンジョンの中を、逃走するためとはいえよく突っ込んでいけたもんだな、翠川は。

 ……いや、けれど。青樹さんが関わっているとするならば不自然でもない、のか?

 

「青樹さんが翠川を補助する形で、ダンジョン内でも安全に移動できるようにした? 他人まで含めて次元移動できるのか、バグスキルは」

「そんな馬鹿な! ……と、言いたいですけど可能性は高いですよね、この状況だと。スキルが使えない状態でなおこんなところにまで逃げ込むなんて、なんらかの確信がなければ絶対にしません」

 

 隣を走る葵さんの、苦い顔と声。そうなんだよ、翠川は少なくともスタンピードを誘発した時点ではまだ、スキル封印拘束具を取り付けられていたんだ。

 そんなコンディションでなお、人類の敵であるモンスターの巣窟を逃げ場所に選択するというのは、やけっぱちでなければ勝算あってのものだろうし。

 

 だとするならばやはり、その勝算とは第三者による協力──暫定最有力候補である青樹さんによるもの──と見ていいのだろう。

 ヴァールが唖然とした様子で呻いた。

 

「スレイブモンスターといい、バグスキルといい……厄介極まる連中だな、まったく。真正面からであれば負けるつもりもないが、ここまであれこれやって来られると対処に惑う」

「私らが追ってたスレイブモンスター、まさしく氷山の一角だったんですねえ。倶楽部って組織の保有戦力、大幅に上方修正しないといけませんよ、これ」

「なんということだ……!」

 

 歯噛みして苛立ちを隠しきれないヴァール。葵さんも口調こそ呑気だがの声音はひどく緊張と不安を孕んでいる。

 スレイブモンスターがメイン戦力であって、幹部など構成員についてはそこまで意識していなかったんだろう。モンスターハザードを引き起こさせないって観点に立って、事態を考えていたところはあるからな、ヴァールにしろエリスさんにしろ葵さんにしても。

 

 それがバグスキルという、正真正銘規格外な能力を幹部が持っていた。つまり組織は思っていた以上に、戦力を隠し持っていたということが判明したわけで。

 そんな連中が己の野望のため、見境なしに騒動を引き起こしている。その事実にこそ俺は強く、危機感を抱いた。

 

「なんとしても翠川を捕まえないと。《座標変動》の厄介さだけじゃない、倶楽部そのものの実態を掴むためにもあいつは逃がすわけにはいかない」

「うむ……!」

「元よりそのつもりです!!」

 

 俺の言葉に返事する二人。そして一同、さらにスピードを上げる。

 もうすでに俺の称号効果によるオペレータ感知能力は、この先に人の気配があることを把握していた。

 

 おそらく翠川だ。もっというとモンスターの気配もそれなりにあるな。

 葵さんとヴァールに伝えつつも考える──おそらく、俺の説が正しければそのモンスター達は。

 

「スレイブモンスターだな、間違いなく。翠川の近くにいる」

「この場で作り上げたのか、スレイブモンスターを……どうやった? 製法がいよいよもって分からんな」

「取り巻きのつもりでしょうか? 拘束具をモンスターに破壊させるつもりとか?」

「あり得るな……封印が解かれればすぐ、やつは《座標変動》を用いて逃げるだろう。それは防ぎたい」 

 

 予めテイムしたモンスターを、コアとして持ち歩いているダンジョン内部に収めておくなんてことはできない──ダンジョンは生成される度、ランダムでモンスターを発生させるからだ──んだけど、そうなると翠川は即興でスレイブモンスターを作り上げたことになる。

 マジでどうやったんだ? そんなすぐにスレイブモンスターなんて作り上げてしまえるものなのか。だとしたら想像以上に危険だぞ、倶楽部って組織とその保有戦力は。

 

 膨れ上がる危機感。しかしそれについてあれこれ考えるのは後だ。

 今は俺がここにいる理由、果たすべき役割を果たすだけ。二人へと告げる。

 

「もうじき、敵に追いつく……すぐに封印するから、翠川の相手は捜査官に任せます。スレイブモンスターも俺が相手を」

「頼む。翠川はワタシと葵で倒す」

「山形くんに負担ばかりかけて、不甲斐ないです……すぐに終わらせますから!!」

 

 渦巻く策謀、陰謀の匂い。だがそれらはすべて、これから相対する敵をどうにかしてからだ。

 翠川、そしてスレイブモンスター達。

 倶楽部との本格的な交戦が、もうすぐそこまで迫っていた。




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