攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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戦い終わって誕生日

 さて、ヴァールのほうもおまわりさんたちとの話し合いが終わったようで、いよいよ翠川を引き渡すことになった。

 《鎖法》が解除され身軽になった彼の身体にすぐさま、対犯罪能力者用の捕縛ロープが巻かれていく。スキル封印拘束具の手錠も改めてなされた。まさしくお縄って感じ。

 

 護送車に運ばれていく翠川をみんなで見送りながらも、ヴァールと香苗さんがある懸念について話していた。

 今回の件、翠川の脱出に加担したと思しき何者かについてである。

 

「この男にエラーダンジョンのコアを握らせた何者か……十中八九青樹だろうが、再度接触を図るために忍び込むかもしれないな。どうしたものか……」

「公平くんの推測通りのバグスキルであれば、あらゆるものをすり抜けるに等しい能力ですからね。防ぎようがありません」

 

 おそらくは青樹さんと思われるその者の、侵入を防ぐことはまず不可能だろう。次元を移動するだろうバグスキルは、あらゆる床であれ壁であれ遮蔽物であれ、その一切を無視してしまえるからな。

 となると彼女が翠川の居場所を突き止めた時点でもう、事前に接触を止める方法なんて事実上存在しないのだ。《座標変動》もだけど、それほどまでに理不尽な効果がバグスキルというものなのだ。

 

 となればどう対処すべきか。何かしら対抗策はないだろうか。そこについて頭を悩ませる二人。

 それに対して考えがある様子なのがエリスさんだ。ヴァールに対し、あっけらかんと笑って言う。

 

「接触を防げないのであれば、接触した後に防げばいいんですよ、ハッハッハー。翠川には常時、10人がかりで警備をつければいいんです。部屋の外でとかまどろっこしいこと言わず、四六時中視界に収めれば、青樹が現れた時にフクロにできる。なんなら盗聴機に監視カメラ、GPSを体内に仕込むくらいしたっていいかもしれませんよ?」

「怖ぁ……」

「かなり直截的な手段できましたね……」

 

 まさかのみんなでタコ殴りにしようプラン。要するに翠川を囮にして誘き寄せるって計画なんだけど、ストレートに暴力的だしプライバシー的にもまずい。

 いくら犯罪者だからって、一切のプライバシーを剥奪していいわけじゃないからね。エリスさんもそこは分かっていると思うけど、だからこそそれでもそんな提案をしてきたことは率直に恐ろしい。

 ヴァールが呆れ顔で答えた。

 

「簡単に言うがな、エリス……人権的に難しいぞ。そういうことが許されたのは精々50年ほど前までだ」

「なあにそこは翠川も協力的だったということにすればいい。減刑でも引き合いに出せば、喜んで頷くでしょう」

「この国で司法取引はかなりのグレーゾーンだ……勘弁してくれ……」

 

 すごいなこの人……必要とあればダーティーな手段も一切躊躇なしか。なんだかんだ96歳というべきか、清濁併せ呑む感覚はどこかワールドプロセッサにも通ずるものがあるな。

 実際、善悪や倫理、良心や秩序というものを一切考慮しなくていい場合、彼女の言った案はそれなりに有効だろう。ヴァールもそこは理解しつつも、けれど昨今の現世の有り様や自身の立場、影響を考えて不可能だと言っているし。

 

「監視体制を、問題が生じない限りの最大限において強化する、というのが落としどころだろうな。翠川一人にそこまで人員を割いていられないという事情もあれば、先に言ったが倫理的人道的な配慮もある」

「でしょうねー。ま、私が今言ったのはあくまで極論、青樹をどう対処するかという一点においてのみ着目したものですし。実際にやるとなったらさすがに無理がありますよそりゃ、ハッハッハー」

 

 結局、妥協案というかまあ現実的に見てそれしかないだろうなあ、って感じの地点にまとまる。

 エリスさんも苦笑いしている。自分がかなりアウトなことを言っていたのは自覚していて、それでもなお手段を選ばなければこういうやり方もありますよ、と初っ端に極端なことを言ったわけか。

 

「師匠って割と腹黒ですよねー。年の功とかじゃなくて魂的なものからしてドス黒い感じしますよ」

「ハッハッハー、泣かすぞ」

 

 葵さんの茶化しに笑顔で答える、エリスさんはもうすっかりいつもの呑気な雰囲気で。

 エリス・モリガナという人物の多面的な側面を一部、垣間見た気になる俺だった。

 

「……まあ、こうしていても仕方ない。一旦解散としよう。改めてになるが今回は助かった、3人とも」

「いやほんと、来てくれてマジ感謝だよ。ありがとう」

 

 話もひとしきり終わり、ヴァールから解散宣言がでた。エリスさんともども、今回呼ばれるがままに事態の収拾にあたった俺たちを労ってくれる。

 

 やっと落ち着いたなあ……まったく慌ただしい数日間だった。

 そろそろこの辺で一旦間をおいて貰わないと困るよ。俺だってもう今日中か明日の夕方までには、リーベと一緒に妹ちゃんの誕プレ買いに行かなきゃなのにー。

 

「ほう? 山形優子は明日が誕生日か。それは素晴らしいな」

「齢を重ねる、いいことだねえ。年齢関係でいろいろあったエリスさんとしては、心の底からめでたい話だと思うよ」

 

 ふとそんな話を溢したら、ヴァールとエリスさんにやたらと食いつかれた。不老組のお二人ってあたりがなんていうか、歳を取ること取らないことについて思うところあるんだろうなって感じる。

 ちなみに香苗さんも妹ちゃんの誕生日についてはすでに承知済みで、なんならこないだ直接会ってお祝いの言葉をくれたのだとか。

 兄としてまったく、感謝感激だね。




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