攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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笑顔で迎える誕生日、人それを幸せという

 山中で偶然出くわした、倶楽部幹部の翠川を巡っての一騒動が終わってから丸一日が経った。

 今日は8月2日。いよいよ我が愛しの妹優子ちゃんの誕生日当日である。

 

「優子、ハッピーバースデー!」

「優子ちゃん、お誕生日おめでとうございますー!」

 

 そんなめでたい日の夕食は、優子ちゃんのリクエストもあり豪勢にも焼肉だ。

 ホットプレートを用意して、肉なり野菜なりを目の前で焼いて食べていくご家庭焼肉は堪らないワクワク感に満ちている。なんなら目玉焼きだって作れちゃうぞ。

 

 今回は俺が探査者になってから初めての家庭内イベントってこともあり、ちょっとばかりだが奮発してポケットマネーを出動させてみた。

 最寄りのスーパーの中にある、牛肉専門店でいーい感じの見た目とお値段のお肉をね。ちょっとね、kg単位でね。

 

 何人かの諭吉ちゃんに翼が生えたけど、特に問題ないというか……一度の探査で余裕で賄えるからね。

 探査者ってやっぱり儲かるんだよね。その分命懸けだったりいろいろ制限はあったりするけど、金銭面においては一切困ることがないというのは心底からありがたい。

 

 家計ももはや心配することなしだから、父ちゃん母ちゃんにも楽をさせてあげられている程だ。

 まあ、基本うちの家系はリッチな振る舞いが苦手だからそんなに生活レベルを上げようとはしてないし、来年の税金も怖いから節約気味ですらあるんだけど。確定申告こわい。

 

 ともあれそんなわけで今、多種多様な肉と野菜をこんがり焼きつつの食卓。

 俺とリーベで優子ちゃんを祝いながらも、プレゼントをそれぞれ彼女に手渡しているのだった。

 

「ありがとう兄ちゃん、リーベ姉ちゃん! 中身、見ていい?」

「もちろん! 気に入ってくれると嬉しい」

 

 喜びとともにプレゼントの袋を受け取る優子ちゃん。早速包装を解き、中身を見ていく。

 出てきたのは……バッグとネックレスだ。俺が買ったのがバッグで、リーベが買ったのがネックレスだな。どちらも隣県は駅チカにて今日の朝から昼にかけて、二人で買いに走ったのだ。

 

 バッグについては春先から、優子ちゃんが欲しがっていたものを手に入れた形になる。値段は、まあ中学生にはちょっと高めだけど高校生には普通? くらいな感じで、いわゆるブランド物ではない。

 リーベの買ったネックレスも同様で、本気出した数百万もするようなものでは到底なく、あくまで中学生くらいの子がちょっと背伸びして欲しがるくらいの価格のものにしておいた。

 

 あんまり本気で高いものを買ってしまうと、優子ちゃんはもちろん俺たちの金銭感覚もまとめてぶっ壊されてしまいそうだし。

 探査者になりたての人が大金を得た結果、ものの見事に金銭感覚をぶっ壊されて無茶な振る舞いをしだすってのは今でも時折見かける話だ。

 そうならないためにWSOも全探組もその辺の教育には力を入れているし、それを受けて俺もリーベも気をつけているわけだった。

 

 とはいえ俺たちのプレゼントはいいデザインをした、素敵なものであることに変わりはない。

 何よりバッグのほうは元から、この子が欲しがっていたものだからね。だからか優子ちゃんは満面の笑みを浮かべ、俺達に深く頭を下げて感謝を伝えてきてくれた。

 

「ありがとう、二人とも……! 一生、ずっと大切にするからね!」

「喜んでもらえて何よりですー! ねっ、公平さん!」

「ああ、そうだなリーベ」

 

 プレゼントは、もらう側はもちろんだけどあげる側も嬉しい。返ってくる感謝やお礼は、プレゼント以上に素敵なものだからね。

 なんて柄にもないことを考えてしまうのはたぶん、愛する妹ちゃんの誕生日や高級お肉を使った焼肉祭りにテンションが上がっているからなんだろう。

 今ならなんでもできる気がする万能感。いやまあ、じゃあ今ここで腹踊りでもしてみろって言われたら無理ですってなるけどね。

 

「はいはい、プレゼントはそこそこにしてほら、お肉焼けてきたわよー」

「今日はいい肉たっぷりだからな! みんなこれ食って元気つけて、この暑い夏を乗り切ろうじゃないか!」

 

 と、さっきから焼肉奉行をしている母ちゃんと、俺たちを見て微笑みながらさっそくビールを呑んでいる父ちゃんが言う。

 父ちゃんはもうなんか、妹ちゃんの誕生日にかこつけて酒のんで飯食ってるだけにしか思えないわけだけど……

 

 俺は知っている。昨日の夜、この二人が夫婦の寝室でしんみりと、優子ちゃんが生まれた時の話をしていたことを。ちょっと喉が渇いたなと居間に向かう際にたまたま聞こえてきた。

 あの時は嬉しかったとか、あの時は大変だったとか。そういう、思い出を振り返るきっかけのためにもこうして誕生日ってのはあるのかもしれないって、そう思えたよ。

 

「……さ、優子。今日はお前が主役なんだ、たくさん食べてくれよな。元気に、健康に生きていってくれ」

「人生、とりあえず息さえしてればそのうち腹が減る。腹が減ったら飯を食うし、飯を食ったら元気が出る! とりあえず元気が出たらそのうち運も向いてきて、そしたらそのうち幸せだって見えてくる! ……と、思う。たぶん」

「もう酔ってるのかしらねこのおっさんは。いいからほら、焦げちゃうわよ」

「うん! ……みんな、いただきます!!」

 

 なんかいい感じのことを言おうとした俺と父ちゃんだけど、こういう時に壊滅的なのは血なのか、やはり。

 結局グダグダになりつつもそれでも、優子ちゃんは笑顔で箸を手に取った。

 そうそう、人間笑顔が一番ってね!




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