攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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新しい時代を、守ろうとする者達を護る力

 元々、最終決戦直前に旅館に泊まっていた際にそういう話はもらっていたのだ。

 香苗さんのご実家、御堂本家に親戚がやって来るタイミングが夏休み中、ちょうど8月上旬から盆明けくらいまでに入れ代わり立ち代わりであるからぜひ来てくれと。そんなことを彼女から言われて俺は怖ぁ……なんて言いながらも考えときます、なんて答えていたわけである。

 

 それが今回、実現したのにはいくつかの事情があった。まず第一に香苗さんの事情だ。

 

 改めての話になるけど彼女は元々、本家なんて言われちゃうような名家の長女だ。曽祖父の将太さんから始まった、いわゆる探査者成金なんて呼ばれがちではあるけど立派なご令嬢なわけで。

 そんな人だから、親戚がひっきりなしに訪れるという時期ともなればなるべく優先して実家に戻り、対応に追われなければならないのだという。

 

『対応という程、大層なことはこちらからはしていませんが……むしろ親戚たちのほうがいろいろ、媚を売ったり諂ってきたりとしまして。その相手をするのが面倒というのは、正直ありますね』

 

 ──とは香苗さん御本人の談である。

 親戚筋からさえも欲目剥き出しで接してこられるって、ものすごいストレスなんだろうなって感じられて思わず怖ぁ……ってなったよ。

 少なくない数の友達の、何割かを親からの指示で接近してきていると見なしている関口くんもそうだけど、話を聞いてるだけでも人間不信になりそうだ。いやまあ、俺ちゃんには今のところそんな話一つもないけど。なんせ影の薄い陰キャですし。

 

 えー、それはともかく。

 そんな親戚筋の対応に追われるという香苗さんのお家の催しに、そもそも参加しないかという話は頂いていたわけである。

 ただ、当然行く筋合いに乏しいから俺としてはなんやかんや理由をつけて、できる限り避けておきたいなぁーなんてことを考えていたんだけれども。

 

 ここに来て第二の事情が絡んできてしまったのだ。

 そう、スレイブモンスター密輸組織・倶楽部に関するあれこれである。

 

 幹部の一人である翠川を、すったもんだの果てにどうにか捕まえたのは記憶に新しい。

 それを受けて明日には改めて、やつから聞き出した情報やダンジョン聖教の手にした例のメモリについての話なんかをする予定なんだけれども……こうなるとやはり、残る二人の幹部・青樹さんと火野老人の動きが気になる。

 

 翠川の奪還、あるいは口封じに向けて動くのか。はたまたそれはもう置いておいて、引き続き香苗さんなりエリスさんなりに執着して行動するのか。

 前者であればまだしも、後者であればそこで問題になるのが、香苗さんの帰省だ。

 

『いくら比較的近いとはいえ、御堂さんのご実家は隣県だ。その間、山形さんとは分断される格好になってしまうし、そうなると必然的に護衛の私と葵も離れ離れになる。それはあまりよろしくないね』

 

 と、いうのがエリスさんの見解で、俺からしても頷ける話ではある。

 青樹さんは香苗さんを、火野老人はエリスさんをつけ狙う可能性がある以上、俺と葵さんもなるべくなら彼女達の近くにいたいからね。

 

 半々に別れた結果、双方あるいは片方だけが襲撃に合うとなれば、いくら俺が空間転移能力を持っていようが対応はどうしても後手に回るし。

 S級のお二人なら幹部二人だろうが問題なく倒せそうな気はするけど、翠川からして分かるように幹部の異常性というか、一筋縄ではいかない感じはすごいし。

 油断大敵なのを考えると、ここで俺たちが分断されるのはよくない、という点で4人全員の見解が一致したのだ。

 

「……ってなわけで、どっちかって言うと探査者としてのお仕事の一環なんだよね。今回香苗さんのお家にお邪魔するのって」

「あんたそれ、大丈夫なの?」

「犯罪組織って……またとんでもないことに巻き込まれてるなあ」

 

 両親の心配そうな視線。見れば隣の妹ちゃんも、ひどく気遣わしげに俺を見てくる。

 "万一があった時にすぐ助けを呼べるよう、説明はしておいたほうがいい"というエリスさんや葵さん、ヴァールからのアドバイスを受けて先日、今の俺達を取り巻く状況について家族には知らせておいたわけなんだけど……当たり前だけどしっかり不安がらせてしまった。

 

 しかも自分達に危害が及ぶことでなく、俺や香苗さんに何か不幸が起きないかを案じてくれているのだから、この人達は本当になんて優しいんだろうって思う。

 せめて怖がらせないようにと俺は、戯けて肉を食べながらも明るく告げる。

 

「目下、3人いるボスのうち一人は捕まえてもらったし。残る二人もぶっちゃけちゃうと、俺についてはそんなに関係ないっていうか……どちらかと言うと香苗さんを狙ってる節があるからね。俺についてはそんなに心配することないよ、ありがとう」

「……まあ、あんたはなんかすごいんだし平気か」

「そうだな……むしろお前、何かあったら御堂さんをしっかり護るんだぞ? 男だ女だ言いやしないけど、それは公平、日頃お世話になっているお前の役目だ」

「そこはもちろん」

 

 家族については俺の正体を知ってるから、そこは安心してくれているみたいだ。

 代わりに父ちゃんからしっかりと言い含められたけど、言われるまでもないことだ。香苗さんはもちろん、エリスさんも葵さんも強い方だしなんの心配もしてないけど、それでも相手は何をしてくるかも分からないんだ。

 

 そんな時、ある程度対応力のある俺がこの力を使うのは当然だろう。新しい時代を護ろうとする人々のためにこそ、コマンドプロンプトの力は使いたい。

 

「兄ちゃん、気をつけてね……死なないでよ、絶対」

「優子……当たり前だろ。妹を泣かせたりしないよ、お兄ちゃんは」

 

 優子ちゃんの、不安そうな表情にも柔らかく、しかし決意を持って応え。

 俺は力をつけるべく、再び肉に野菜にと箸を踊らせていった。




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