攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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2022/09/09追記
佐山との約束では日曜の午後からという話になっていたのですが、読み返すと普通に朝一から遊びに出かけていました。
ですので今般、その理由づけを追記しております。
お手数おかけしました。


報連相はしっかりと

 リッチ退治から一夜明けて日曜の朝。非常に爽やかーな春の日差しを受けて俺は、家を出て待ち合わせ場所に向かっていた。

 この間佐山さんたちと交わした、遊びの約束である。

 

 約束した当初、俺の探査の都合もあってこの日は午後から遊ぶつもりで話をしていたんだけど……

 昨日のリッチ事件の報告やらなんやらで忙しかったので、日曜は思い切って一日休みということにしたのだ。

 

 そしたらちょうどいいタイミングで昨日の夜、佐山さんから待ち合わせの時間とか場所を確認するメッセージがSNSで届いたりしちゃって。

 実はいろいろあって日曜は一日フリーになりましたーって連絡したら、じゃあ朝一から遊ぼう! とお誘いの言葉を頂戴して。

 それで今、予定を繰り上げて朝から出向いてるわけだね。

 

 場所は湖岸に架けられた橋を渡ったところにあるショッピングモール。車ならすぐそこなんだろうが、歩きや自転車だとまあまあな距離だ。

 近くに電車とかないから、公共交通機関を使うにしてもバスくらいしかない。タクシー? 高いよ。

 

「まあ、俺は走ったらすぐなんだけどなあ」

 

 言いながら軽くジョギング──あくまで俺視点だ。他の人から見たらゆるい姿勢で全力疾走みたいな速度を出している、気色悪い動きに見えていることだろう──する。

 それだけであら不思議、普通、10分からゆっくりな人だと20分近くかかって渡るこの橋を、なんと1分で渡れちゃいました!

 

「うん、帰りは普通に歩こう」

 

 まばらに行き交う人たちの、ギョッとした視線が痛かった。あからさまに不自然だったから逆に、ああ探査者かな? と納得はしてもらえそうなんだが……不審者みたいな扱いは御免被りたい。

 昔、まだスキルを授かってなかった時。やたらゆったりした動作なのに、異様に早く歩いていた人を見かけたことがある。その時、正直に言って不気味だったし、探査者って言われてもいや気持ち悪いしってなった。

 それを思うともう極力、日常動作はゆっくりしたもので通した方が良いんだろう。人々を不気味がらせてまで急ぐ用事も、別にないしな、俺。

 

『別に気にしなくても良いと思いますけどー。一時的に不思議がったって、直に興味を失いますよ。そんなもんでしょう、人間って』

 

 そうかも知れないけどね、リーベ。たとえば昔の俺みたいな子どもがいるんなら、変に探査者へのイメージを、悪くさせちゃうようなことは良くないと思うよ。

 

『お人好しですねえ、もう』

 

 呆れたようなリーベの声。そう言うな、気にしすぎる性分なんだ。

 

 昨日、あれだけ盛大に俺、ひいては人間に対して警告を放ってきたシステムさんとリーベだったが、少なくともリーベの方はもう、通常営業らしかった。

 まあ、いつまでも辛気くさくても面倒なわけだし、俺としては助かる。あんな不穏な上にハードルまで天高く上げてそうな話、いつまでも引きずっていたくない。

 そんな俺の思いに、リーベは敏感に反応していた。

 

『承知しています……公平さん。リーベちゃんもシステムさんも、あなたに大変なご迷惑をおかけしていると常々、申し訳なく思っています。せめてその御恩に対し、全力で報いることをお約束します』

 

 げ、聞いてたのかい。冗談だよ冗談。

 何かしら理由があってのことだって分かってるし、そもそも俺たち人間にとって無関係の話じゃないからな。たまたま割り当てられただけなのかもしれないけれど、なっちゃったからにはやり抜いてみせるさ。

 

『……絶対に。絶対にあなたに報います』

 

 何か、覚悟を決めたみたいにリーベが呟き、そして気配を消した。

 いやあの、これから死地に向かうみたいなノリやめてもらえる? 話の流れからしてこれ、俺が鬼畜な要求したみたいになるじゃん怖ぁ。

 頼むからシステムさんにいらんことを吹き込まないでほしい。報酬ですとか言ってわけわからんポエム付き称号とかスキルを十重二十重に送り付けられたら、俺はその場で発狂しない自信はない。

 

 戦々恐々としながらも俺は、元々の待ち合わせ場所として決められていた場所に到達する。まだ開いていないショッピングモールの、出入り口前だ。

 予定時間の30分前。よしよし、後はみんなが来るのを待つだけだな、と。

 

「山形くーん!」

「うん? ……佐山さん!」

 

 間もなくクラスメイトのギャル系女子、佐山さんがやって来た。

 いつもの制服ではない。若草色のワンピースに白いカーディガンを羽織った、めちゃくちゃ清楚な感じのファッションだ。しかもなぜか、派手な見た目に反してやたらマッチしている。

 着こなしている、ってやつかな。結果的に清楚系ギャルという、無敵すぎる女の子が目の前にいた。率直に言うね、すっげぇかわいい。

 

 ドキドキしてきた。こんなレベル高い女の子と現状二人きりとか緊張すごいわ。そして嬉しみも禁じえない。

 そんな超絶美少女佐山さんは、俺に向け、微笑みかけてきた。

 

「ごめーん、待ったぁ?」

「い、いや今来たところ。その、に、にあ、似合ってるねその服チョー可愛い。見惚れた」

「にひ……にひひ。そうっしょ、そうっしょ!」

 

 本音の言葉に、佐山さんは一瞬、面食らいながらも。

 頬を赤らめ、嬉しそうに楽しそうに、俺の背中を叩いてきた。てか密着ぅ〜! 当たる、当たってるぅ〜!

 女子にこんな近付かれる人生送ったことないから、緊張しか勝たん。ええい他の面子はまだか!

 

「み、みんなもそろそろ来るかな」

「へ? え、今日デートじゃん? 私ら二人きりだし。何言ってんのぉ?」

「……………………ヘアァッ!?」

 

 思わず光の巨人か伝説の超戦士みたいな声が出た。

 え、なに。これデート? え、二人? え? え?

 

 怖ぁ…………

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