攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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やっぱり師弟じゃないか(呆れ)

 隣県にあるという、倶楽部の拠点の一つ。そこに潜入して、組織に関する情報を少しでもかき集めるべく行動していた際にウィリアムズさんは偶然、幹部二人の会話を聞いたのだという。

 すなわち今回捕まえた翠川と、もう一人──香苗さんの師匠でもある青樹さんのやり取りである。

 

「私が潜り込んだ拠点の、管理者はどうやら青樹佐智だったみたいなのですが……翠川に対して"早急に残りの拠点からスレイブモンスターを連れてこい"と要求していた場面を見ました。おそらくは空間転移できるあの男が、スレイブモンスターを運搬する役割を担っていたのだと思われます」

「……青樹さんは私同様、隣県の生まれ育ちです。土地勘もあることでしょうし、そこの拠点を管理するのは分かります」

「加えて翠川こそが空間転移系スキル《座標変動》を持っていた。であれば運搬役を務めるのもおかしくはないな」

 

 スレイブモンスターを、どうしたことか隣県の拠点に収束し始めたという倶楽部の、不穏な動き。どうも青樹さんが主導となって、翠川にも手伝わせていたみたいだな。

 どう考えてもろくなことが起きない気がする。というかこれ、間違いなく一斉蜂起の準備なのだろう。

 

 新人類優生思想を根底とする倶楽部は、既存の社会のあり方を破壊して能力者を至上とする価値観の世界を創造することを目的として、これまで活動を続けてきたみたいだし。

 それがこうして動き出すということは、いよいよその目的に向けて準備が整ったのか、はたまた別の思惑があるのか。

 俺はヴァールに向けて挙手をした。

 

「どうした、山形公平」

「翠川は取り調べの時、その辺のことは何か話していたのか? スレイブモンスターの運搬役って言うんなら、どんな連中をどれだけの数、運んだのかくらいは分かってると思うんだけど」

 

 せめて質と量だけでも今のうち、把握しておけば対処のしようはあるだろう。拠点の位置もウィリアムズさんが把握してるし、なんならこちらから攻めたっていい。

 そう思っての質問に、うむとヴァールは頷いた。淡々と、しかし真摯な瞳で俺へと答える。

 

「実のところ、やつは聞かれたことに関しては素直に答えるのだが、自分から何か供述することはあまり、していないのだ。それ以前にそもそも、倶楽部の幹部という立場も名ばかりに近いものだったようで、実際の運営や指示については火野と鬼島が行い、極一部の実務部分を青樹と翠川で行っていたらしい」

「さっき言ってた、交渉だの密輸ルートだのってかい。ちなみに翠川はそっち方面としても、青樹佐智は何を?」

 

 幹部4人、とするにはあまりに比重の偏っている話に、マリーさんが続けて質問する。

 日本の倶楽部を率いているのが火野老人であるのはさっきも聞いていたけど、話を聞くに未だ姿の見えない鬼島という幹部も相当、重要な立ち位置にいるみたいだな。反面、青樹さんと翠川は極端なまでに権限が与えられていなかったようだ。

 

 じゃあ、密輸ルート関係の仕事を受け持っていたらしい翠川はさておき青樹さんは何をしているのか、というのは気になるよね。

 香苗さんとの一件もあるし、あまりエグい話──言っちゃうと暴力方面──になると、ちょっと怖いけれど。彼女の罪を知らないことには、香苗さんだってどう向き合うべきかも分からないだろう。

 俺と、隣の香苗さんが固唾を呑んでヴァールの言葉を待つ。彼女はそして、ちらと俺達を見つつも言葉を発した。

 

「青樹は主に、組織の拡大や拡充方面のいわゆる勧誘活動をメインにしていたらしい」

「勧誘……?」

「探査者であることをいいことに右も左も分からない新人に声をかけ、新人類優生思想について吹き込み倶楽部へと入会、とまではいかずとも思想教育を行っていたそうだ。その、なんだ……やはり、師弟なのだな?」

「何がですか!? なんですかその微妙な視線は!!」

 

 弟子が弟子なら師匠も師匠だよ、と言いたげなヴァールの視線に、まあ当然ながら我らが伝道師は立ち上がって吼えた。

 こう言っちゃ悪いけど、やってること自体はほぼほぼ一緒だからなあ。新人類優生思想を喧伝する青樹さんと、救世思想を啓蒙する香苗さんと。

 

 違いって言えば結局のところ、思想そのものの違いや犯罪性の有無くらいしかない。その点を言えば一応、香苗さんのほうは全然穏当なんだけど。

 ただ活動範囲や対象層の広さも香苗さんのほうが明らかに大きい。世間一般でもドン引きされている新人類優生思想に比べて、いいのか悪いのか救世思想のほうは着々と規模を大きくしてるし、差別思想なんてないからあらゆる層に向けてアピールできちゃえるからね。

 

 まあ、とはいえ。やってることを箇条書きしたらほぼほぼ一致してしまうというのがここでのミソなわけでして。

 周囲の、香苗さんの伝道師ぶりをご存知の方々もあー……みたいな残念な生き物を見る目をしている。むごい。

 そんな反応に、香苗さんはキリッと反論した。

 

「私は青樹さんとは違います。救世主山形公平様を讃え崇め、彼の思想を一人でも多くの人に伝えるべく日夜活動していますが──」

「同じじゃないですか」

「していますが! 彼女や倶楽部のような、社会や時代を変えるためと称して犯罪に走るような真似は一切、しておりません! 救世主山形公平様の名に泥を塗るようなことを、するわけがありません!!」

 

 力説されてもなあ……まあたしかに、救世の光はあくまで合法的な範疇での活動しかしてないみたいだし。

 あくまで救世主ファンクラブでしかない団体と、ガチで革命を目論んでそうな犯罪組織を一緒には、そりゃできないよね。




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