攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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いざ、全面抗争!

 青樹さんの倶楽部内での立ち位置に関連して若干、話がズレてしまったけれども。

 つまるところは倶楽部の中核は火野老人ともう一人、鬼島なる幹部の二人らしいというのが翠川からの取り調べで得られた組織の内情だった。

 

「翠川は組織内においては《座標変動》の存在もあり、唯一無二の存在として重宝されていたようだがそれもすでにこちらで押さえた。隣県の拠点にスレイブモンスターを集わせようとしていたのも、この時点で頓挫していると見ていい」

「青樹と翠川が話していたその場面で私は見つかってしまい、山中に転移させられて殺されようとしていました。つまり翠川が捕まった時点ではまだ国内のスレイブモンスターは集まりきっていなかったものと推測されます」

 

 ヴァールとウィリアムズさんの推測は、俺としてもおそらくそうだろうなと思える。

 翠川以外には座標の縦横を弄れるスキルを持つ者が、まだ倶楽部にいる……なんてのはさすがに考えにくい。実際、唯一無二の人材だったみたいだからね。

 

 そもそもバグスキルとは、発生したバグを修復した結果の産物だ。そのため逆説的にバグスキルが製作された以上、同じバグが起きることはもう二度とないと断言できる。

 あるとすれば別のプロセスで座標のズレを引き起こしちゃった結果、空間転移系スキルを手に入れた場合だろうけど、今しがたの口振りからすればそんな都合のいいこと、さすがになかったみたいだし。

 総じて倶楽部によるスレイブモンスターの一極集中というのは中途で頓挫したと考えて間違いないだろう。

 

 ただ、問題はウィリアムズさんも言っていたとおりだとして。逆に言えばすでにいくつかの拠点が抱えていた分のスレイブモンスターについては、隣県に移送済みだということだ。

 元々が一拠点につき約100体という話で、それだけでも十分すぎるほどの脅威だ。それが倍に膨らんでいるとしたら、これは大惨事の気配しかしない。

 

「"残りの拠点から"……という物言いからして、最低でもどこか一箇所からはすでに運搬済みで、けれど最低残り一箇所からはまだ、運搬できていないって考えられるさね、こいつは」

「となると、今現在ミス・青樹の拠点に集まっているスレイブモンスターの数は最低200から最大で300体前後ということになりますね」

 

 マリーさんとベナウィさんの読みもおそらくは当たっているだろう。すべては集めきっていないけど、少なくとも1つか2つの拠点からはすでに移送済みと考えておくべきだ。

 となれば推定、AからB級のモンスターが概ね200体から300体。隣県のどこかダンジョンの外で蠢いているということになる。

 真っ青な顔で郷田さんが叫んだ。

 

「とんでもない数だ! そんな量のモンスターが一斉に町に解き放たれてしまっては、大変な事態になる!!」

「……第八次、モンスターハザード」

「第七次から約四半世紀の時を経て、今また惨劇が起きようとしている……!」

 

 新川さんや烏丸さんも、事態の深刻さに強い危機感の篭った声で呻く。WSO、全探組、そして警察の偉い人達が揃っての悲壮な様子に、俺も思わず息を呑んだ。

 

 第八次モンスターハザード。恐れていた事態がまさに間もなく、隣県で起きようとしているんだ。

 町中にそれだけの量の凶悪なモンスターを解き放たれてしまったら、もはやその被害は探査者ツアーの時のドラゴンどころじゃなくなる。

 

 罪なき人々の命が、暮らしが、平和が日常が今、目の前にある危機に脅かされている。

 それをどうにか未然に防げるかどうかは、他ならぬ俺達にかかっているんだ。

 

「倶楽部の各拠点へと攻め入る」

 

 ヴァールのつぶやきが、小さくともたしかな強さを秘めて俺達の耳へと届いた。

 

「スレイブモンスターの蜂起が起きる前に、こちらから打って出て奴らを殲滅するのだ。同時に可能であれば各拠点の位置も割り出し、近隣の警察と能力者犯罪捜査官で踏み込み制圧する。強制執行だ」

 

 相当強気に思い切ったな、ヴァール。つまりはこれまでに得た情報を足がかりに、一気に日本国内の倶楽部を壊滅時にかかろうと言うのだ。

 事実上の決戦宣言。可能であればという前提だけど青樹さんの拠点のみを対象にしていないのは、仮に隣県でのモンスターハザードが防がれた時に敵が、他の拠点のモンスターを解放しかねないことを危惧してのものだろう。

 

 どこか一箇所でもモンスターが市街地に解き放たれてしまえば、その時点で大惨事だからね。

 

「近畿拠点以外の場所についても翠川はすでに白状しています。元よりやつこそが空間転移にて各拠点の幹部を仲介していたいわば連絡役。位置関係については組織でも随一に詳しい」

「我々が入手したUSBメモリにも拠点の位置については記載がありました。後ほど翠川の供述と照合し、双方の信憑性についてはたしかめます」

 

 烏丸さんと神谷さんの言葉が続く。なるほど、翠川の供述が嘘じゃない保証もないからな。素直そうにしている裏で、どんなブラフを噛ましているかもしれない。

 そこでウィリアムズさんの入手した情報も併せて、総合的な判断を下すってことか……倶楽部の各拠点に同時制圧に踏み切るのか、ひとまず隣県のみの制圧に留めるのか。

 

「作戦の立案から段取りまではWSO、全探組、警察ならびにダンジョン聖教と密に連携を取りつつ速やかに行う。実際の準備もあるが……概ね一週間以内。つまり8月10日以内には行動を起こすものと思ってくれ」

「一週間後。ちょうど私が実家に戻っている、最終日ですね……つまりは帰省中にことが動きますか」

 

 どこか憂いげに香苗さんがつぶやく。

 実家での親戚対応のこともあるだろうけど、それ以上にやはり、泣いても笑っても一週間以内には青樹さんとなんらかの形で、決着をつけなければならないかもしれないからだろう。

 

 その時にはどうか、お互いが納得し合える形に落ち着いてくれればいいんだけど。

 そんな想いを抱えながらも、俺は彼女の横顔を見ていた。




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