攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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コーデリア氏(43)「酒しか勝ちません」

 マリーさんとベナウィさんの提案というかお誘いを、香苗さんもエリスさんも葵さんも普通に受け入れた。

 みんなでお昼という素敵な案に、諸手を挙げて賛成の意を示したのだ。

 

「作戦にも一部、絡むかもしれない話ですからね。ぜひお二人も聞いていってください」

「なんならマリー。御堂さんの帰省中には一緒に、みんなで観光でもするかい? 久しぶりにお酒でも……ってごめん。私ら護衛の任があるし、そもそも若い時分のアレが祟って今もう、呑めないんだったね君」

 

 香苗さんに続いてにこやかに同意するエリスさんが、ちょっと気まずそうにマリーさんに謝った。

 どうやら彼女もご存知みたいだ。マリーさんが、若い頃にめちゃくちゃなお酒の飲み方を長年続けた結果、肝臓をボロボロにしてしまったことを。

 

 精霊知能リーベご自慢の医療用スキル《医療光粉》をもってしてもなお、定期的な治療が必要なほどに手遅れ感溢れる状態なのだから、よく今の今まで生きてましたねってのとなんでこうなるまで飲み続けたんですか? って感情が俺としてもせめぎ合う。

 先日の夜祭からこっち、今もマリーさんは数日おきに我が家にやって来ては治療を受けているようだけど……その度にリーベから、割とガチ目の説教を食らって冷や汗をかいているのが印象深い。

 ドラゴン騒ぎの時とは立場が逆になってるよなあ。

 

 この辺の話をされるといつもの飄々さとか強気さが鳴りを潜めるマリーさん、ましてや相手は先輩にあたるエリスさんだ。

 すっかり後輩っぽい空気を出して頭をかきつつ、苦笑いして答えていく。

 

「ファファファ……まあ肝臓については快方に向かってるんですがね。まだ油断禁物だから呑めないってのは合ってますねえ……」

「快方ではあるのか……すごいね人体。えーとじゃあ観光ともなればお酒は抜きにして、美味しいものでも食べようか」

「そうですねぇ……分かったかえベナウィや、あんたもだよ? 呑まないのは」

「え」

 

 唐突に釘を差されて、ベナウィさんが愕然と口をあんぐりと開けた。図星を突かれた、そんな様子だ。

 ああ、三度の飯より酒が好き、ってタイプだもんなあベナウィさん。仮にエリスさんやマリーさん、葵さんが諸々の事情からお酒を自重するにしても、特にそういうのがないこの人は遠慮なしに飲むだろうし。

 でも別に、彼一人で飲むくらいならいいんじゃないかなあと思わなくもないんだけど……

 

「お前さんまさか、大師匠だのさらにその上の先輩だの、さらには仕事中の後輩までいるってのに呑んで酔っ払うつもりかえ? タイミングによっちゃクリストフまでいるってのに? 勇気あるねえ」

「はははは! 何を馬鹿なことを仰りますか! 師匠がいるかもしれない場所でそんなこと、するわけないでしょうこの私が! はははは!」

「怖ぁ……」

 

 先輩後輩を持ち出す、案外体育会系チックなところを見せたマリーさんはともかくとして。ベナウィさんほどの酒呑みが名前を聞いただけで震え上がる風間さんってどういう人なんだろう。

 なんか怖くなってきたんですけど。鬼軍曹みたいな人だったらどうしよう、出会い頭に罵倒とかされないだろうな? 不安になってきた。

 

 さておき、今日のお昼はこのメンバーで食べることには決まったので県警本部を後にする。

 施設を一歩でも外へ出た時の、何やら解放感がすごい。娑婆の空気ってこういうのだろうか。娑婆バンザイ。

 

 県警本部の近くの店、となると大型商業施設のフードコートとかかな? 最寄りにあるんだけど、そこがまず思い浮かぶ。

 夏休み入ってすぐ、梨沙さんや松田くんたちとプール帰りに遊びに行った施設だね。梨沙さんのお友達のみなさん、元気してるかなあ。

 

「フードコートかぁ。どんな店が並んでるかにもよるけど、まあラーメンは鉄板かな。あとカレー、ナンで食べたい」

「今日は一人じゃないんですから食レポごっこ止めてくださいよ師匠。グルメに走るとすぐブツブツ小声で喋りだすんですから」

「先輩、いつの頃からかすっかりそんな癖がついちまってますねえ……」

 

 エリスさん、葵さん、マリーさんがそんな会話をしながら先に歩くのを、俺と香苗さん、ベナウィさんが後に続く。

 たしかあそこのフードコートはラーメンもあったしちゃんぽんとかもあったなあ。ちゃんぽんいいかもなあ、たまに食べると美味しいんだ。

 

 問題は今ちょうど12時だから、混雑してそうってことくらいかな? ぶっちゃけ暇だから待つのは余裕だけど、それでも腹は減ってるからなるべく早く料理にありつきたいところはあるよねー。

 などと思いつつ商業施設に到着。案の定ながら入り口の時点で結構人がいるけど、フードコートは5階にあったはずだ。そっちはどうなってることやら。

 エレベーターに乗ってみんなで一息に5階へ。俺たち以外誰もいない静かな室内に、ベナウィさんの朗らかな声が響いた。

 

「いやあ真夏の陽射しが厳しいですね、ミスター・公平、ミス・御堂。こういうお昼はジャパニーズビールでスカッと喉を潤したいところです」

「えぇ……?」

「やはりというべきか、思い切り飲むつもりですねベナウィさん……」

 

 もうなんか、酒しか勝たんみたいな感じになっていっているベナウィさんにドン引き。いやまあ、オフをどう過ごすかはお互いの自由なんだけどね?

 マジかよこの人……と思いながらも俺達は、フードコートのある5階へと到着したのである。




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