攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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当然ながら分家も伝道の対象です(狂信微笑)

 相変わらずだけど快適な車内だ。軽快に走るスポーツカーに、乗るたびにいつもそう思う。

 固すぎず柔らかすぎもしないシートに、不自由のない程度のスペース。静かに、けれど軽快に流れていく景色は見ていても飽きることがない。

 

 なんなら不思議といい匂いがしているほどだ。うちの車のきつすぎる芳香剤とは違う、自然と漂う爽やかな香り。

 香苗さんの安全最優先の、それでいてスマートで手際のいいことが素人目にも伝わってくる運転もあり、まるで森の中で静かに佇んでいるかのようなリラックスした空間がここにはあった。

 

 高速道路を走ること一時間ほど。問題なくスムーズに隣県へと入り、繁華街の道を行く。そこまでいくと案の定というべきか、車が多くて人も多いため頻繁に渋滞に巻き込まれる今日この頃だ。

 

「混み具合にもよりますが、概ねあと20分くらいで到着すると思います……仮眠程度の時間ですが寝ていてもいいですよ? 公平くん」

「いやー、まあ昨日たっぷり寝ましたから。景色を見るの楽しいですし、こうしてますよ」

 

 あまりに快適、かつ香苗さんの運転が頼もしすぎるからかついついウトウトしちゃいそうだけど、さすがに人に運転させて自分は居眠り決め込むほど肝は座ってない。

 ここは一つ、あの称号効果を使おうかな。俺は気を引き締めるべく、目を閉じ、精神を集中しはじめた。瞑想。

 

 瞬間、眠気や気怠さを含めたあらゆる精神的状態がフラットに、つまりは平時に戻ったのを感じる。

 最初は何に使うんだよと思ってたこの称号効果、地味にめちゃ便利だなあと感謝しつつ、俺は目を開いた。

 香苗さんへと告げる。

 

「────うん。眠気とかももう大丈夫です」

「称号《正しき心はあなたの胸に》の効果であるところの瞑想時に精神異常を完全回復する効果ですね察するに過度なリラックス状態をフラットに戻しその結果として眠気を消し去ったものと推察しますさすがは救世主ご自身がこれまでに得てきた数々の称号効果を都度によって使い分けることでクオリティ・オブ・ライフをより良いものにしようとするその御姿はまさに現代社会においてとても重要な姿勢であり考え方と言えますね」

「は、はい」

 

 まったく持ってその通りなんだけど、突然スイッチが入るのはいつまで経っても慣れなさそうだ。こうなると逆に居眠りキメたくなるから困る。白目剥きそう。

 称号効果を便利使いしただけでこれだものなあ。ていうかこの人、場合によっては親戚さん達の前でこれを披露する可能性もあるってわけだし、ちょっとそれは洒落にならない気がする。

 

「あの、香苗さん? 一応の確認なんですけど、まさかご一族の皆様方に向け、伝道行為などは……」

「? しますが、何か」

「えぇ……?」

 

 しますが何か? じゃないんだよ伝道師さん。あなたそれすごくヤバいことになりかねないんじゃないですか?

 こうも頻繁に伝道師ムーヴしてる姿を見てるから正直、麻痺しかけてるけど……一般的に伝道行為はなかなかにドン引きものの行為だからね?

 

 なんの気もない人達の、それも親戚達の前に唐突に現れてよく分からない句読点がどっか行った長口舌の勧誘を行い始めたらそれこそ、一族レベルの大問題になりかねないだろうか?

 ああでも本家の御令嬢の言うことだし、むしろみんな真に受けてしまう可能性もあるのか。嫌だよ俺、一族総出で救世主とか言われるの。そこまでいったら完全に怪しい教祖様じゃないかよう。

 

 ……と、香苗さんの車が右折した。大通りから小路へと入る。いつぞや見た覚えのある風景、香苗さんの実家の近くだ。

 なんだかんだでもう辿り着く寸前みたいだ。時刻は概ね10時すぎ、大体1時間の行程である。

 

 車は小路をゆっくり進み、やがて停止する。

 めちゃくちゃ長く続く塀の真ん中、これまためちゃくちゃ大きくて豪華な門の前での停車である。

 目的地到着、かあ。香苗さんがふうと一息入れて、俺に言ってくる。

 

「さて、到着しました。お疲れ様です、公平くん」

「ありがとうございました、香苗さん。いやー、相変わらずの豪邸ですね〜……」

 

 そう。これこそが香苗さんのご実家、御堂本家の門前なのだ。彼女の曽祖父である将太さんから一気に大成した、御堂一族の総本山なわけだね。

 門前を護っている警備の方が二人、前来た時同様にやって来る。香苗さんは当然ながら顔パスなんだけど、なぜか俺のほうを見て、あぁー、例の。みたいな納得顔をしてにこやかに敬礼してくるのがこわい。

 

 たぶん見てるんだろうなこの人達も、例のチャンネル……

 すでに香苗さんってば、ご家族にも伝道はしたとかドラゴン騒ぎの直後、言ってたしな。余波で警備の人とか執事さん、執事さん達など関係者のみなさんもシャイニング山形についてご存知でもおかしくない。

 どんどん広がっていっているらしい救世の光に空恐ろしいものを感じつつも車を下り、車庫入れ等を警備の人に頼んで俺達は、門をくぐって行った。




明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いいたしますー

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

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作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)
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