攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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オバケより得体のしれないモノがオバケを怖がってる…

 じいやさんに案内されて、屋敷の中を歩く俺。香苗さんとは玄関で分かれ、ひとまず宿泊させてもらう部屋に通してもらうのだ。リュックサックとか置きたいしね。

 ちなみに香苗さんも自室に戻り、着替えた後で家族の方々に会うらしい。俺もその際は一緒に挨拶するみたいなので、彼女が迎えに来てくれるのだとか。

 

 なんだか緊張するなあ。前にも一度、ご挨拶させてもらった人達だけれど……そもそもこんなご立派なお家とは縁がなかったからね。

 ぎこちなく歩く俺に、先導して歩いてくれているじいやさんが話しかけてきた。

 

「そう緊張なさらず。お嬢様は元より旦那様方もみな、山形様との再会を心より楽しみにしておられたのですよ」

「そ、そうなんですか?」

「ええ。特に大旦那様……先代当主であらせられます、才蔵様は個人的にもあなたの動向を気にしていらっしゃいます。マリアベール・フランソワ様とも最近ではよく、話をするとも」

「マリーさんと……そういえば古くからのお知り合いでしたものね」

 

 思い出すのは3ヶ月前、最初にここを訪れた時だ。

 香苗さんのお爺さん、才蔵さんにいろいろ話を伺ったんだけど、初代当主とも言うべき将太さんはマリーさんの先輩にあたる探査者だったそうで、その縁もあり彼女と御堂家は家族ぐるみで付き合いがあるのだとか。

 

 なんなら現当主、香苗さんパパであるところの博さんは未だに子供扱いされているとか笑って仰っていたし、本当に親密な関係なんだろうな、御堂家とフランソワ家。

 下手するとアンジェさんもここに来たこととかあるのかもね。やたら香苗さんを意識していたのは、A級トップランカーだったことだけでなく、この辺のことも関係していたのかもしれない。

 

「マリアベール様もあなたの話となると饒舌になるようで、今も屋敷を訪れていらっしゃいますが、ずっとお連れ様も交えてあなたのことを中心に話しされていますよ」

「くしゃみが止まらなくなりそうな話ですね……といいますか、やはりマリーさん達はもう来られているんですね」

「ええ。朝早くから」

 

 やっぱいるよね。感知している気配、マリーさん達で確定だわ。

 でも気配の数は5つなんだけど、マリーさんエリスさん葵さんで後の二人は誰なんだろう? まさかベナウィさんにリンちゃんとか?

 ベナウィさんはともかくリンちゃんは今回、部外者に近い立場だからないとは思うけど……思わず首を傾げる。

 

 と、じいやさんが立ち止まった。大きな屋敷の通路を右に左に曲がりつつ進んだ先の、道の途中にある部屋の襖が開けられる。

 

「こちらが山形様のお部屋になります。どうぞごゆるりと、お過ごしくださいませ」

「う、うおお……」

 

 襖の先の部屋は、旅館が何か? って感じに広くて綺麗な和室だった。家族で泊まっても問題ないくらいに広いし、小部屋もいくつがありそうだし。

 テレビもあるし冷蔵庫もあるし、なんか電話まであるし。内線専用みたいで各担当のスタッフへの直通番号の案内が隅に置かれているのがマジで旅館じゃん! ってなる。

 今は締め切られているけど、縁側にも続いてるみたいで緑の気配がすぐ近くにある。

 

 一泊するだけですごい額のお金がかかりそう。庶民派山形くんとしては、豪華さへの感動と恐縮と同じくらいについ、お金周りが気になってしまうよ。怖ぁ……

 ここで5日も過ごすのかと、完全に気圧された俺ちゃんはまたも、若干どもりがちにじいやさんへと言うのだった。

 

「あ、ありがとうございます。ええと、お、俺はそしたらこれから……」

「まずは一族の方々にご挨拶のほど、よろしくお願い申し上げます。お嬢様もじきにお迎えに上がりますゆえ、今しばらくお待ち下さいませ」

「あ。は、はい」

 

 とにかく最初はご挨拶しないとだよね、そりゃ。しばらくお世話になるんだし、滞在を許可してもらった御礼も言わなきゃだし。

 香苗さんが迎えに来てくれるみたいなので、俺はじいやさんに別れを告げてひとまず部屋で待機することにした。

 

 広々とした和室に俺一人。とりあえず荷物を下ろして座椅子に座っちゃったりなんかして、備え付けの給湯ポットと湯呑、お茶っ葉でおもむろにでお茶なんか入れちゃったりなんかして。

 熱々のお茶を啜って一息つくんだけど、そうなるといやに静かな静かな室内が広さもあってちょっとこわい。

 

 なんか幽霊とか妖怪とか出そうじゃない? 深夜とかやばそうなんだけど。

 考え出すと余計に怖くなる、そんな類の妄想を繰り広げ始める矢先、脳内に声が響いてきた。邪悪なる思念ことアルマさんである。

 

『概念存在ごときに何をビビってるんだ君は……ああいうのは未知だから怖いのであって、そういう意味で言えば君や僕のほうがよほど怖いナニモノかだろ、現世にとっても概念存在にとっても』

「う」

 

 言われてしまうとそれはそうだけど、とアルマさんの正論に思わず小さく呻く。

 実際、この世やあの世からして得体の知れないのはどっちかと言うと俺達だ。なんならリーベもヴァールも含め、システム領域のモノこそオバケか何かって感じだと思う。

 

 そもそも大ダンジョン時代やそれに伴うダンジョンやオペレータについても、概念領域のモノ達からすれば意味不明のオンパレードだろうな。

 そう考えるとあいつら、むしろ100年もよく大人しくしてるなあ。裏で何か動いているのかもしれないけど、それにしても表沙汰になるようなことをしてないのは若干気になるところだ。

 

「──公平くん。お待たせしました」

「ん……あ、はい」

 

 と、とりとめもなく考えていると部屋の外から香苗さんの声。応えて襖を開けると、先程とはまた、別の格好をした彼女がいた。

 白色のワンピースにカーディガンを羽織った、打って変わって清楚な姿。いつもはつけないネックレスをつけ、彩雲三稜鏡のブレスレットと合わせて控えめながらも上品な美しさを際立てる。

 

 探査者でも伝道師でもない、御堂本家長女としての御堂香苗さんがそこにいたのだ。




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作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)
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