攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ロマン謳われる山形

 ショッピングモールの3階に映画館はある。この辺だと滅多にない施設だからか、いつでも人の多い印象のある人気の映画館だ。

 来たは良いものの、何やってるか分からん。上映スケジュールにある作品名からパンフレットを見繕い、佐山さんと見ていく。すぐ近くに喫茶店があるから助かるね。

 

「えっと、こういう時って大体、恋愛物を見るものなのかな」

「分かんない。男の子と二人きりで映画なんて来たことないし」

「じゃあ……」

「でもさぁー。せっかくなら見たいもの見よ? 私、山形くんの好きそうなものが知りたいな」

 

 お互い、佐山さんはコーラを、俺はメロンクリームソーダを飲みながら何の映画を見るか、喋る。

 好きそうなものって言われてもな。ふむ……今日やる予定の映画タイトルを見る。

 

 ……一番見たかったやつって、ぶっちゃけもう見てるんだよね〜。こないだ香苗さんと映画館に行った時に見た。結構いい映画だったからもう一回見ても良いかなって気にはなるんだけど、佐山さんとってのがヤバい気がする。

 別に、もちろん香苗さんとも佐山さんともそういう関係じゃないんだが……別々の女性と別の日に、同じ映画を見るって中々ヤバない? バレたらマズそうな気配が、なんとなくする。

 

 さりとて他に見たいものとか、ざっと見たって分かりゃしないよ!

 どうする? どうする? ……ああなら、これとか!

 

「あ、あー……そうだなあ。いっそ、特撮映画とかどう?」

「えっと、変身! っとかヒーロー物? 好きなの?」

「嫌いじゃないよ。カッコいいし、ヒーローだし」

「ふぅん……? まあ、そうなんだろうねー」

 

 きょとんとしつつ、けれど何かに納得したように頷く彼女。

 何がそうなんだろうねー、なんだろう? ヒーロー物が好きそうに見えるって? 自覚はあるけどこう、第三者の反応から窺い知れるのはだいぶ、かなり、恥ずかしいな!

 

 顔を赤くした俺に何か察したか、幾分、慌てた様子で佐山さんが言う。

 

「別に、私だってたまに日曜、そういうの見たりするし……CGとかすごいなって思うよ。イケメンも多いし。それに」

「それに?」

「……戦ってるシーンとか。山形くん、いつもこんな風にモンスターと戦ってるのかな、って。まるでヒーローみたいに」

「お、え、あ、う」

 

 何とも、照れること言ってくるねこの子ったら!

 しかしまあ、なんとなく見えてきた。佐山さん、前に狼人間から助けられたことを、ずっと感謝してくれてるんだな。

 というか、何やら変身ヒーロー同然に思われてない? いや、百歩譲って光りはするけど、変身は流石にしないよ。

 困惑する俺に、さらに佐山さんは続けてくる。

 

「山形くんの探査配信とかも見てるんだけどさ。すごいね……あんな怖いやつらにたった一人、一歩も退かずに立ち向かって。昨日も、ものすごい力に目覚めて人を救ったんでしょ? 何だったっけ、ふうじょーふつま? なんとかかんとか? みたいな」

「ちょーちょーちょー、ストップストップー。え、何それどこから漏れた?」

 

 配信云々は、いや見てるのかよ! で済む話なんだけれども。

 昨日のリッチ討伐の顛末について知ってるなんて、いくらなんでも耳早過ぎませんか? 誰だ、言ったの。

 

 ──ああまあ、予想は概ね付いた。あの人しかいねえ〜。

 

「……《風浄祓魔/邪業断滅》なんて、あの場にいた人間か広瀬さんくらいしか知らんし、佐山さん例のチャンネル見てるみたいだし。かな、御堂さんか。SNSで?」

「あ、うん……動画と、呟きと、ブログで語ってるよ。ほら」

 

 スマホを見せられる。画面内で香苗さんが、ハープを弾きながら厳かに昨日の顛末を歌っている。なんでハープなんだ、吟遊詩人かよ。

 次に、呟き系のSNS。今しがたの動画の内容とほぼ同じだが、こっちではどちらかというと他ユーザーとのやり取りメインになっている。おいおいレスバトルしてんじゃん、おいおいおい論破してんじゃん。おいおいおいおい、シャイニング山形旋風巻き起こってんじゃん。

 この時点でもう、冷や汗に軽い震えが止まらない訳なんだけれども。俺は最後にブログを読んだ。

 

「……………………怖ぁ」

 

 そこにはもう、狂信者の狂信者による狂信者のための救世主神話伝説がひたすらに書き殴られていた。

 美辞麗句に過剰装飾された文章が、ただただ俺が邪悪なるリッチを倒したことを神話的に伝えてくる。

 ていうかすべての媒体で言えるけど、あのリッチが人の体を乗っ取ってたことまで書いていいのかよ!?

 

 慌てて自分のスマホで香苗さんに連絡を取る。

 SNS見ましたけど、リッチの乗っ取りにまで言及して良かったんですか? ──返事は即座に返ってきた。

 

「『問題ありません、既に本部長からの許可も降りています』……マジかよぉ」

「ほ、本当にこの辺の話、あったんだ? ……すごい」

 

 盛大に頬を引くつかせる俺と、香苗さんの与太話みたいな話が本物だったことに、目を輝かせて俺を見てくる佐山さん。

 なんとも、変な空気のデートになってきたなあ。

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