攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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太平洋に住む男

 話を聞いているとどうやら、サウダーデさんは2日前に関西へとやってきていたらしい。それまでは東北を訪れていたんだけれど、マリーさんからの要請に応じて急遽、こちらへ来たとのことだ。

 

「いきなりで悪いねえ、クリストフ。そういや今、あんたも来日してたなって思い出してね。少しでも戦力が欲しかったもんでさ」

「何を水臭い。たとえ日本に来ておらずとも、師に請われれば駆けつけますとも。ましてやことはモンスターハザード……過去何度となく起きてきた大事件です。見逃す手はありませんよ」

 

 渋く笑って師匠に返す、サウダーデさんの姿はまさしくダンディマッスル。巨岩のような盛り上がった肉体とは裏腹に、顔つきも声音も柔らかい。

 別の目的での来日中に、わざわざ予定を曲げて駆けつけてくださったんだな、この人は。何よりもまずはそこに感謝したいし、呼んでくださったマリーさんにも感謝したい。

 

 葵さんが瞳を煌めかせ、興味津々に質問する。

 探査者に詳しい彼女としては、S級探査者の中でもトップクラスらしい彼を前に好奇心が抑えきれないのだろうね。

 

「あの、あのー! 差し支えなければ元々の来日の目的などお伺いしてもよろしいでしょうか! たしかサウダーデさん、今現在は太平洋ダンジョンを探査されているって聞いていましたけども!」

「詳しいな、早瀬さん。いかにも普段、俺は太平洋にいるよ。今回は母方の故郷を尋ねたのさ。いわゆる帰省というやつだな」

 

 葵さんのミーハーぶりに若干の驚きを見せつつ、気さくにサウダーデさんは答えた。

 母方、察するに風間姓のお母様の故郷を訪れていらしたのか。さっきも本名にカザマってあったもんね。

 たしかポルトガル出身のS級探査者だってこないだ、聞いたから……これはいわゆる国際結婚というやつで、この人は日本人とポルトガル人のハーフってことになるのかな。

 

 というかサウダーデさん、太平洋ダンジョンの探査をしてらっしゃるのか。半世紀経っても未だ踏破がされていないという世界最大規模のダンジョンで、なんと太平洋のど真ん中にポッカリと大穴が空いているとかいう場所だ。

 ソフィアさんが言っていたけど、なんでもその大穴を囲うように豪華客船が群れをなして連結していて、一つの大きな経済圏を確立しているのだとか。

 

 気になって俺も、一つ尋ねてみる。

 

「太平洋ダンジョン……ずっと探査されてるんですか?」

「ん? ああ、まあね。俺の場合はかれこれ、30年はあの辺に住んでいるよ。妻ともあっちで知り合って結婚もしたし、洋上ながら式も挙げた。子も今では8人いて、一人は探査者としてポルトガルで活動中だ」

「か、完全に生活基盤が太平洋にあるんですね……」

「何せまるで踏破の見通しが立たないダンジョン相手だからな。一々拠点と太平洋ど真ん中を行ったり来たりするわけにもいかないのさ。今では10万人規模で人々が住み着いているよ」

「ひえぇ……! 10万って」

「それはすごい。市町村クラスの規模だ……」

 

 なんともすごい話だと、思わずつぶやく。香苗さんパパこと御堂博さんも、初めて聞いた話のようで驚いているね。

 

 10万人の人口を抱え、出会いから結婚、子育てまでもその場で行える程にきちんとした生活ができるなんて。もはや本当に、太平洋ど真ん中に都市が一つ出来上がっている感じだな、これは。まさしくダンジョン客船都市ってわけか。

 そこまできたら政治機構やら法律なんかも出来てるだろうし、完全に一つの国のようになっていると解釈してもいいかもしれない。

 

 というか、普通にロマンに溢れる話だなあ。ちょっと行ってみたい気もする。

 そう言えばこの中で他に、太平洋ダンジョンに行ったことのある人はいるんだろうか?

 

「マリーさんやエリスさんも、太平洋に行ったこととかあるんですか?」

「あー……何度か、クリストフに呼ばれて出向いたね。でもまあ、その頃にはもう60過ぎてたし、特別理事にもなってたから。今さら新天地でドス振り回す気にもなれんくて、すぐに帰ったさねえ」

「私は行ったことないなー。ダンジョン相手より犯罪能力者のほうを相手にしてきたからね。底の見えないダンジョンなんてのはエリスさんの専門外だよ」

 

 質問するとそれぞれの答えが返ってきた。さすがにマリーさんはサウダーデさんとの絡みもあり、何度か行ったみたいだけど……エリスさん的には無限に等しいダンジョンなんて、相手にしてられないってのは分かる話だ。

 そう考えるとサウダーデさん、人生をかけて一つのダンジョンに挑んでる形になるんだな。30年も太平洋の上で生活って、さすがに想像しづらいや。

 

 と、香苗さんがそう言えばとつぶやいた。

 

「私も以前、一度だけ行ったことがありますね太平洋ダンジョン」

「え、そうなんですか?」

「数日程度ですが、A級探査者になったばかりの頃に。ちょっとしたツアーですね……公平くんもA級になったら、機会があれば一度は太平洋ダンジョンに行くかもしれません」

「あー、なんかそんな募集かけてましたね、日本の全探組」

 

 葵さんも続けて言う、なんかA級になるとそんなツアーが組まれるらしい。

 募集制とのことだけど……A級になった時にそういうチラシとかあったら、応募してみてもいいのかもしれないね。




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