攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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特に理由のない当て擦りがエリス(96)を襲う!

 ベナウィさんの日頃の行い──というほど、そこまで素行が悪いわけでは無いんだけれど──について、サウダーデさんは方々から情報を得ているらしかった。

 厳しい顔に不敵な笑みを乗せて、お弟子さんの肩をしっかり握って制している。

 

「久しぶりの再会だ……お前は太平洋にまで足を運ぶことはこれまでなかったからな。どうせ俺に会えばこうなると思って、避けていたのだろうが運が悪かったな」

「い、いえいえそんなこと! 私がまるで師匠を避けてるみたいに仰りますが誤解ですとも。ええ誤解です、ハイ」

 

 一方で弟子のベナウィさんはもう、すっかり焦りきった様子で目を泳がせてあれこれ言い訳している。

 おそらくこれから行われるだろう説教的な話し合いについて、とにかく少しでも回避できる目がないか、明らかに考えを巡らせている様子だね。

 

 なんとなく、ベナウィさんがサウダーデさんを怖がってた理由が分かってきた。たぶんこの師弟、こんなやり取りと説教をこれまで何回でも繰り返してきたんだろうな。

 何せ筋金入りのうっかりダンジョン破壊魔呑んだくれおじさん、それがベナウィ・コーデリアさんだもの。平時はS級探査者として相応しい人格者で俺も尊敬しているけれど、それはそれとしてアレな時はとことんアレな人でもある。

 見るからに厳格そのものな師匠であるサウダーデさんからすると、まさに説教してもしたりないって感じなのかもしれない。

 

「そうかそうか、俺は師匠想いのいい弟子を持ったな。それならばなおのこと、俺も弟子を想う師として言うべきことは言わねばならん」

「…………あの、今避けたくなりましたので避けていいですか?」

「駄目だな。すでに四十路に至り、探査者としては俺にも勝ろうというお前に対していつまでも老害めいた口を利きたくはないのだが……ま、これぞ老婆心というやつだ。俺は老爺だがな」

 

 渋く笑うサウダーデさんは、もはやまったく揺るがず動ぜずでベナウィさんとともに立ちあがる。

 ……地味に合気の技術を使った、相手の抵抗さえ利用しての流れるような動作だ。間違いなくベナウィさんのほうは立つ気なかったのに、完全にコントロールされてしまっている。

 

「師匠!? 待ってくださいせめて自分で」

「立つのを待っていたら日が暮れてしまいそうだからな。さあ行くぞ、他にもいろいろと話も聞きたい」

「……すごいねー。あんな風に人間、誰かをコントロールできるものなんだ」

 

 とんでもないテクニックを今、サラリと披露したな。鮮やかすぎて他の人達も、それこそ俺の隣、腕に抱きつくエリスさんすらも息を呑むほどだ。

 近接格闘術のエキスパートで、近接戦闘の分野ではS級探査者の中でも最強クラスといろんな人が評するのも頷ける。まさしく達人の業だった。

 

 マリーさんがそんなサウダーデさんに、呆れたように声をかける。

 

「還暦くらいで何言ってんだいあんたも。老爺ってのはそこの老いぼれみたいなのを言うんだよ、クリストフ」

「お主に言われたくはないわい老婆が! いつまでも業界に居座りおって、なんなら老害はお主じゃろうがい!」

「何ぃ!? 今エリス先輩のことなんつったァてめぇ!」

「おやおやさり気なく自分を棚上げして、こちらに流れ弾飛ばしてきたよ。昔馴染み相手となると往年の狂犬ぶりが蘇るねぇ、マリーも」

「えぇ……?」

 

 才蔵さんとまたしても怒鳴り合う。エリスさんの言うように、昔からの知り合い、とりわけ同年代の喧嘩仲間のような人と話すと若い頃に戻られるみたいだ、マリーさん。

 うーん、物騒。ソフィアさんやヴァールからもそこそこ聞いてたけど、本当に激しい気性だったんだね。ドラゴン騒ぎの時にキレてた姿がまだ抑えめだったって知ったら、リーベのやつ震え上がるんじゃないかな。

 

 土産話に帰ったら教えてやろーっと、と内心考えている俺達を横切り、サウダーデさんがベナウィさんを連行して部屋から出ようとする。

 去り際、彼は博さん、栄子さんのほうを向いた。深く一礼して、そして告げる。

 

「それでは御堂殿、我々はひとまずこれにて失礼します。しばらく御息女様の護衛として近場に滞在いたしますゆえ、なにとぞご承知おき願います」

「ありがとうございます、風間さん……モリガナさんも、早瀬さんもマリーさんもコーデリアさんも。どうか香苗と山形くんのことを、よろしくお願いいたします」

「お願いいたします」

 

 ご夫妻揃って、香苗さんばかりか俺のことまで案じて頼み込んでくださる。博さんと栄子さんのお姿に俺は、深い感謝を抱く。

 才蔵さんや光さんも含め、やっぱり素敵な方々だ。こんな素晴らしい人達のためにも、香苗さんには幸せでいてほしいと改めて思う。

 同時に、だからこそ青樹さんの凶行を止めなければならないという使命感と責任感もまた、強く湧き上がる。

 

「……お任せください。誰一人、傷つけさせはしない。誰の未来も奪わせない。誰の幸せも、壊させない。そのために微力ではありますが俺も、こうして駆けつけたのです」

「私らがいるんだ、安心するといいさね博ちゃん。公平ちゃんも香苗ちゃんも、必ず守り抜くさね。ファファファ!」

 

 サウダーデさんとマリーさんもまた、瞳に強い光を漲らせて不敵に笑い、応える。ベナウィさんもエリスさんだって、言葉には出さないけど同じ眼差しで頷いている。

 探査者の頂点に立つS級たちの心強い言葉に、俺は心底からの信頼を寄せるのだった。




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