攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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"倶楽部絶対潰す包囲網"の本気

 香苗さんと葵さんが戻ってくるまでの間、しばしエリスさんと二人きりで過ごす。

 もしかしたらからかわれまくったりするんじゃないだろうかと一瞬、身構えていた俺だけれど……葵さんが傍にいないと割と静かというか大人しめというか、そこまではっちゃけることはないようでそれなりに落ち着いたやり取りができていた。

 

「それじゃあ、制圧作戦の準備はいい感じに進行してるってわけですね」

「うん。後でみんなにも話すけど結局、明日には動くみたいだよー。なかなか急な話なんだけど、こういうのはさっさとやるに限るからね」

「ですねー」

 

 当然というべきか、やり取りの内容も真面目だ。

 起こり得る第八次モンスターハザードについての懸念と、どうやら明日、8月7日に行われるだろう倶楽部制圧作戦についての組織的な準備に関して。進捗はかなりいいペースで進んでいると、彼女の口から語られていく。

 

「何しろヴァールさんはじめWSOと、警察がそれはもうやる気満々でね。モンスターハザードなんてやらかされたら堪ったもんじゃないから分かるけどさ、面子的にも絶対にここでやつらを叩き潰すって燃えに燃えてるわけ」

「ああ……まあ、そりゃねえ」

 

 絶対倶楽部潰すモードに入っているらしい、ヴァール以下WSOと警察には納得しかない。

 WSOは探査者界の法と秩序そのものとして、警察はこの国の治安を護る存在としての面子がそれぞれある。万一第八次モンスターハザードなんて引き起こされて、あまつさえ犠牲者の一人でも出そうものなら威信や沽券に関わる話になりかねない。

 

 ましてやヴァールなんて、WSOの統括理事としての立場もあればシステム領域所属の精霊知能としての立場もある。

 バグスキルを悪用して世を乱さんとするオペレータへの粛清という側面もある今回の作戦において、まさしく人一倍も気炎を上げるってのは、俺としても理解できる話だね。

 

「特にヴァールさんは今回、相当迅速に動いているみたいだよ? 山形さんにってこんなものまで用意してきたんだから、あの人完全に本気だよ。ハッハッハー」

 

 と言って、懐から一枚、紙を俺に渡してくるエリスさん。なんだ?

 受け取って読んで見る──"倶楽部構成員についての鑑定系スキルの使用許可及び取得情報の取扱許可について"?

 

「……これは?」

「読んで字の如くだね。その令状を持っている限り、君は青樹や火野、翠川や鬼島といった倶楽部所属の者に対して鑑定系スキルを使用していいと公的に認められた。ごく限定的な範囲、つまり私や葵みたいな捜査関係者に対して取得した情報を開示することも同時に行えるよ」

「敵のスキルを、事前に確認できるってわけですか!」

 

 驚きも露にそう言うと、エリスさんは大きく頷いた。

 鑑定系スキル、俺の場合で言うと《よみがえる風と大地の上で》だな。それを倶楽部所属の者に対しては許可なく使用することが許される令状がこの紙らしい。

 しかもエリスさんや葵さん達に対して、得た情報を伝えることまで認めてくれている。

 

 これは非常にありがたい。なんせ翠川の例を見るに幹部の者達は、バグスキルだけでなく何かしら厄介なスキルを持っていることが予想されるからね。

 全探組への登録さえしてなかった翠川はともかく、青樹さんや火野老人は一応探査者だから登録データはあるだろうけど。最新のデータじゃないだろうからあくまで参考にしかできないだろう。

 

 人権やら倫理の問題もあり、彼の時は鑑定するのが憚られたわけだけど……これでリアルタイムで幹部達のステータスを看破できる。そしてそれを、仲間のみんなに伝えることができるわけだ。

 エリスさんが肩をすくめて続けて言った。

 

「ま、簡易的かつ限定的な場面で鑑定士同様に動けると考えてくれるといい。これでこちらも、幹部との交戦に際して情報面でのアドバンテージを得られるよ。助かるね」

「ありがとうございます! これなら完全にバグスキルを狙い撃って封印できますよ」

「そしたら後は私と葵次第に持ち込めるわけだ。例のすり抜けスキルが健在だと、逃走以前に真っ向からぶつかっても勝てるかどうか怪しいから……悪いけどまた、公平さんに頼ることになる。ごめんね?」

 

 申しわけなさそうに謝ってくるエリスさん。葵さん同様、護るべき俺がいなければまともな戦いにも持ち込めそうにないことに忸怩たる思いを抱いているようだ。

 正直、この辺についてはバグスキルを悪用させてしまったシステム側の責任だから、俺のほうこそ立場的には土下座しないといけないところなんだけどね。

 

 まさかコマンドプロンプトなんですーなんて言いふらすのもアレだし、さりとてこの感謝と謝罪に対してドヤ顔で受け取るとそれこそマッチポンプ山形の誕生だ、冗談でない。

 結局、俺は曖昧な笑みを浮かべながら誤魔化すように、エリスさんへと言うばかりだった。

 

「俺のほうこそ、こんなことでしかお役に立てず申しわけないです。どんどん扱き使ってやってくださいエリスさん。あなたと葵さんの指示に、俺は従いますから」

「そう言ってもらえると助かるよ。まったく君は、信者以外にも救世主なんだなあ」

「信者相手にも救世主した覚えはないんですけど……」

 

 しみじみつぶやくエリスさんに、微妙な顔で返す。

 まあ、この人の救世主になれそうならいいんだけどね……?




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