攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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見せてもらおうか、肉弾戦最強のS級探査者のステータスとやらを!

「倶楽部制圧作戦だけどね。当初の予定通り、国内4箇所の拠点すべてに対して同時攻撃をしかけることになったよ」

 

 いよいよ始まる打ち合わせ。

 迫る倶楽部制圧作戦決行に向け、この数日の間でヴァールはじめいろんな組織のいろんなお偉い人々が頑張ってお膳立てしたんだろう。

 その結果として作戦自体は、倶楽部の持つすべての拠点に対して行われるようだった。

 

「東北、関東、近畿、九州。各地方にある拠点のうち、我々は言うまでもなく近畿拠点……つまりはこの地に潜む連中に向けて攻め入ることになる。場所については葵くん」

「はい。こちらに地図をご用意してます」

 

 師匠の声に即座に応え、葵さんは地図をテーブルの上に広げた。日本地図、それも俺たちが今いるこの県に特にクローズアップした地方地図だ。

 その一箇所、山間にあたる地点に赤ペンでバツが書かれている。その下にはかわいい文字で"8月7日には消滅する組織のアジトはここ! "と記されている。

 茶目っ気にしては殺意が溢れているね、うん。怖ぁ……

 

 そこを指差し、葵さんは続けて語る。

 

「このペケ印が拠点の位置になります。我々のいる御堂本家の位置からはそう遠くないですね、歩いてでも数時間程度で行けます」

「遠足じゃないんだ、当然現地へは車に乗って向かう。周辺の封鎖や万一の後詰めに警察と全探組のスタッフがいるから、彼らの何名かに案内してもらいながら拠点へと攻め込む形になるね」

 

 御堂本家の位置にも丸をつけ、そこから道なりにペンを走らせて拠点への進路を示す。実際この通りに行くかは微妙にせよ、まあとにかく俺達のいる場所からそんなに離れてはいないってことだな。

 警察と全探組が用意した人員はすべて、戦闘が行われるだろう拠点周辺の封鎖と近隣住民の避難、そして安全の確保と万一の場合の対応役として配置されるらしい。

 

「また、WSO所属のエージェントと、全探組が依頼を出す形で募集を募った地元の探査者達にはスレイブモンスターの相手をお願いするようですけど……」

「ぶっちゃけここについては、ベナウィさんとサウダーデさんの二人でほとんど片付きそうな気はしてるんだよね。だから正直、彼らについても後詰め、あるいは後始末役って立ち位置になってもらうかもしれないとは、ヴァールさんはつぶやいていたね」

「ファファファ! ま、高々200か300くらいの数、A級ばかりだろうがこの二人にかかりゃあ問題なかろうさね」

「そんなに」

 

 ヴァールはじめマリーさんの太鼓判に、思わず驚いてしまう。いかなS級とはいえたった二人で、それこそ数百からなるスレイブモンスター達を仕留めきれるものなんだろうか?

 

 ベナウィさんの実力を今さら疑う余地はないし、そのお師匠であるところのサウダーデさんも、未だ未確認ながらS級最強格とまで言われる人だ、弱いわけがない。

 とはいえ、いくらなんでも二人で全部相手し切るってのはなあ。

 

「ハハハハ……重い期待ですねえ、師匠」

「そうだな。だがこの期待に応えてこそのS級探査者なのだ、ベナウィ」

 

 気楽に笑うベナウィさんと、それに呼応して生真面目に決意を語るサウダーデさん。

 どちらも気負いはなく、自然体のままにしかし闘志を漲らせている。葵さんが一筋汗を垂らしてごくり、と喉を鳴らすほどの気迫だ。

 

 この人達の風格と威容を見るに、たしかに二人ででもなんとかしちゃえそうな気はするけど……

 だからといって本当に二人だけに任せるわけにもいかないしね。だからこそ、WSOなり全探組なりの探査者達もかけつけてくれるということなんだろう。

 

「ああ、そうだ。今のうちに俺のステータスを、皆さんに伝えておこう。ベナウィとマリアベール先生以外の方は、俺と組んでの戦闘は初めてだからな」

 

 サウダーデさんがそう言って、懐から財布を取り出した。修行着という装いの、どこか荒々しい雰囲気からは考えられないほどに綺麗な革の財布だ。

 そこから探査者証明書を取り出し、ステータス欄が記載された裏面を上にしてテーブルの上に置く。

 俺と香苗さん、エリスさんと葵さんは身を乗り出してそれを覗き込んだ。

 

 

 名前 クリストフ・カザマ・シルヴァ レベル1257 S級

 称号 格闘王

 スキル

 名称 炎魔導

 名称 気配感知

 名称 格闘術マスタリー

 名称 自己再生

 名称 環境適応

 

 称号 格闘王

 効果 モンスターの脆弱な部位を見抜く

 

 スキル

 名称 格闘術マスタリー

 効果 あらゆる格闘技術の威力と発生速度を上昇

 

 

「俺のスタイルは至ってシンプル、《炎魔導》を駆使しつつ《格闘術マスタリー》で威力を高めた肉体でひたすら、敵を殴り蹴りするだけだ。無骨で恐縮だが、よろしく頼む」

 

 厳しい表情で告げるサウダーデさん。ステータスの構成を無骨と仰るけれど、めちゃくちゃド派手なラインナップだと思う。

 まず《炎魔導》からしてヤバい。殺傷力で言えば魔導系スキルの中でも最高峰だし、これ一つだけでも十分、探査者としてやっていけるだろう。

 

 加えて称号の《格闘王》も、言ってしまえば能動的にクリティカルヒットを出しに行けるというとんでもない効果だ。

 つまりはサウダーデさんの攻撃はモンスターに対して事実上、常に致命打になりうるというのと同じだからね。

 

 だが。何よりもっとヤバいのは《格闘術マスタリー》だ。

 俺は引きつった顔を自覚しつつ、つぶやいた。

 

「《空手》や《合気道》みたいな格闘技習熟用スキルを、ざっと6つ7つは獲得しないと派生しない、統合スキル《格闘術マスタリー》……! とんでもないもの持ってますね、サウダーデさん」

「……俺自身も分からなかった習得条件を、サラリと言えてしまう山形殿のほうがとんでもないように思うが。まあ、一応空手や柔道、合気道を含めいくつか修めさせていただいてはいるな」

 

 一つ習得するだけでも大変だろう、格闘技系スキルをいくつも獲得した結果、それらを統合する形で派生した《格闘術マスタリー》。

 無茶苦茶な条件ゆえかその効果は極めて強力で、肉弾戦時においてサウダーデさんの放つ技の威力と速度は、実質素の状態の3倍近くにまで高められるはずだ。

 

 これが、肉弾戦最強クラスの探査者のスキル構成かあ……

 さすがと言うべきかなんというか。頼もしさと同時に恐ろしさをも感じる、俺達だった。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

【ご報告】
「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」2巻、発売中です!
書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー
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