攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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師匠と弟子と─それぞれのあり方─

 香苗さんの話とか、俺に対しての想いとか。いろいろ腑に落ちる話を聞かせてもらい、そしてそれを受け入れて引き続き、ご飯を食べていく。

 何はともあれ今、こうして香苗さんは笑顔でいてくれている。そのことに少なからず俺も力添えできたって事実がなんだか、いつも以上にご飯を美味しくしてくれている気がしてならない。

 

 いやまあ単純に、御堂家のご飯がめちゃ美味しいってのはもちろんあるんだけどね。

 マジでうまい、素材からして違うもの。なんで茄子のお浸しがこんなに美味いんだ? さっきから脳内でアルマがやたらうるさいもの。

 

『野菜が……生きている……! なんてことだ、肉や魚に負けていない! 所詮サブ的立ち位置と侮っていた連中に足を掬われるようなこの感覚は、まさに未知なる味覚との遭遇! ぼ、僕はまだ知らずにいた、この感動を!!』

 

 いや本当にうるさいよこいつ。たしかに美味しいのは美味しいけど何もそんな、叫ぶようなリアクションする必要ないだろ。

 ギャースカ騒ぐこいつを無視して白米とお漬物のコンボを決める。ああ大根が甘辛い、ご飯が進む! 油ものが食べたいお年頃だけど、たまにはこういうのもいいよね!

 

「うむ……やはり日本食はこの歳になるとヘルシーでいい。ダンジョン客船都市は多様な文化ひしめく多文化共生社会ではありますが、基本は若い探査者用にガッツリ系が多いですからね」

「何を爺臭いことを、と言いたいがまあ胃袋ばかりは誤魔化せんからねえ。私ゃこれこの通り、天ぷらだろうがオードブルだろうが問題ないけどね、ファファファ!」

「こないだ1kgのステーキをペロリと平らげていましたからねえ、マリアベール様」

「それはなんという健啖ぶり。見習わなければなりませんね、俺も」

 

 マリーさん、サウダーデさん、ベナウィさんの大人師弟トリオが仲良く語らっていらっしゃる。

 この中で……っていうか俺達の中で一番ガッツリご飯を食べているのがマリーさんだ。

 どういう胃袋してるんだろうねこの人。弟子筋のサウダーデさんもベナウィさんもただただ感嘆するばかりだし。大の男、それも巨躯な二人よりもたくさん食べるんだからすごいわ。

 

「……ふーむ。衣がサクサクなのは当然として……特に天ぷらは茄子がいいんだ、個人的には……うん、美味しい。塩をかけてね……刺身もさすが鮮度抜群…………ハッハッハー、わさびが生き生きしてらっしゃるぞ……おっ、醤油もいい塩梅だ、ちょっと風味に癖が、うん……米も一粒一粒立って、甘くておいしい」

「師匠師匠、こんなにたくさん人がいるのに師匠は一人ぼっちでブツクサ食レポなんですね。はっはっはー! 陰キャすぎません?」

「ハッハッハー、なんせこの中で一番部外者なの私と君だし。もうここは黙って食べるしか選択肢なくない?」

「全然黙ってないですけどねー、はっはっはー!」

 

 一方でエリスさん葵さんの捜査官師弟コンビは、こちらはこちらでいつも通りだ。

 本当にどこでも食レポするなあ、エリスさん。葵さんも呆れ気味でからかうけど、途端に師匠との漫才に移行するし。

 

 この二人はいつでもどこでもこんな感じなんだろうな。師匠と弟子でありながら一人前の探査者同士、そしてあるいは友人同士。もしかしたら擬似的な姉妹的な関係とすら言えるかもしれない。

 ある種、二人だけの世界が完成してるっていうのかな。エリスさんも葵さんも、互いに互いが近くにいてこういうやり取りをするのが当たり前になってそうだ。そういう空気があるもの。

 

「公平くん、こちらのお刺身もぜひご賞味ください。我が家の食卓を支えてくれている料理長が目利きして選んだ魚です。捌き方もさすが、一流ですよ」

「料理長とかいらっしゃるんですね、料亭みたいだぁ……ありがとうございます。いただきますね」

「はい! 欲しい物があったらなんでも言ってください!」

 

 ニコニコ笑顔で刺し身を勧めてくる香苗さんの、幸せそうなお顔ときたらまあ。ご自身のこれまでの事情を打ち明けたからなのか、より一層、俺に対しての対応が前のめりになってきている気がする。

 正直、別に何かをしてもらいたいってわけでもないし。香苗さんが幸せでいてくれるなら、それに勝ることはないわけなんだけど……ここでそれを言うとまた句読点がどこかに行きそうだし口には出さない。

 

 言われるがまま刺身を食べる。煌めく白身、これはブリ。

 醤油とわさびを少しつけて口に入れると舌の上、濃厚かつ芳醇な脂の甘味が塩気と辛味も混ざり合い踊るようにハーモニーを奏でる。

 すごい脂だ。とろけるような味わいとはまさにこのことか、いくらでもいけちゃうなあこれ!

 

「美味しい……! すご、え、すごい美味しい!」

「でしょう? まだまだありますからたっぷり食べてくださいね。いつもありがとうございます」

 

 思わずテンション上がってしまった俺に、香苗さんはやはりものすごい朗らかな笑顔でさらにお刺身を勧めてくる。

 もちろん彼女も合間合間に食べているけど、基本的には俺の世話役みたいな動きをしたいみたいだ。まあ、本人がいいんならそれでいいんだけども……まあいいか!




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「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」2巻、発売中です!
書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー
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