攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ポツンと倶楽部拠点

 草木生い茂るものの、一応人間の歩く道としては成立している拠点へのルートを一列に並んで進む。

 なんでも山の頂上ではないにせよ、少しばかり小高い地点に施設はあるらしい。調査の末、推測できていることを戦闘を行くエリスさんが挙げていく。

 

「見かけは平屋で、ちょっと大きめではあるものの香苗さんとこの実家くらいのサイズだ。このことからおそらくだけど、地下に広大な空間を拵えているものと考えられる」

「何百体ものスレイブモンスターを匿うのに、地下のほうがいろいろ都合もいいでしょうからね」

「加えて攻め入られた時にも避難先として使えるだろう。言うなればシェルターも兼ねた、やつらのペット達の庭先ってところかもねー」

 

 つまりは見かけ通りの施設ではない。やつらを象徴するかのように地面の下に、巨大な悪の空間を隠し持っている可能性が高いというわけか。

 スレイブモンスターが地下にいるとなれば当然、攻め入るこちらも地下にまで赴くことになるだろう。幹部の動向はいまいち読めないが、シェルターとしての機能も地下に用意しているなら逃げ込むことも大いにあり得る。

 

 となれば地下の状況によっては長期戦になるか。

 懸念を俺は、並んで歩く一同に伝える。

 

「この周辺一帯、次元レベルでバグスキルの使用を封じますが……翠川の時とは規模が違えば消耗も違います。たぶん、頑張っても3時間しか保たないかもしれません」

「それだけ保てば十分だよ。どうあれ電撃作戦なんだ、チンタラやっていてもいいことなんて何もないしね」

「山形殿の負担を考えても、やはり最速でのスレイブモンスター殲滅と倶楽部幹部の撃滅を目標として設定すべきだろうな。とにかく早く。分かりやすくて結構だ」

 

 サウダーデさんが闘気を漲らせて言う。彼のみならず誰しもが、間近に迫る敵との戦いにいよいよ緊張と気合を迸らせている。

 ここまで士気の高い実力者達が揃っているんだ。おそらく俺が無茶してまで、バグスキルを封じ続けることにはならないとは思う。

 油断はできないけど、不安がりすぎるのもよくはないね。

 

 ────と、そろそろ施設が見えてきた。視線の先、小高い山の上に木々を拓いた土地がある。かなり広い。

 そこにぽつんとある一軒家こそが、話に聞いていた倶楽部の拠点だろう。

 

「いた……エージェントだ。おつかれー」

「お疲れ様です。目標物にこの3時間、一切の動きはありません」

 

 そこからしばらく離れた森の中、監視をしてくれていたWSOのエージェントさんと合流する。

 拠点施設に変化がないことを端的に報告してきながらもエリスさんに答える彼と、交代するようにソフィアさんが前に出た。

 ともにやってきた探査者達も含めて全員に指示を飛ばす。

 

「それでは手はず通りに。本隊はここにて待機、AからF班までは拠点を取り囲むように展開。各地点にエージェントがいますから交代してください」

「交代したエージェントは後方に下がれ、ご苦労だった……各員、配置完了後は指示を待て。早まるなよ」

 

 新川さんと並んでのオーダーに各員応え、散らばっていく。ここからだ……準備が整うまでの、緊張の時間。

 動き出したらあとは正直、勢いに任せるところはある程度あるんだけれど、それまでの間。待つ時間こそが不安と緊張に巻かれる時でもある。

 

 本隊、つまり俺達は待機して待つ。

 探査者達が去っていた後、ソフィアさんがいよいよ臨戦態勢へと入った。

 すなわちもう一人の自身とも言える相方、ヴァールと人格を交代したのだ。

 

「ヴァール。頼みます────む、ワタシの出番か」

 

 いっそ簡素なほどに、そっけないほどに呆気なく。けれど劇的に表情と雰囲気が変化した。

 精霊知能ヴァールの顕現だ。そして彼女は予めソフィアさんが現状をメモっておいた紙に目を通し、俺達のほうを見た。

 

「どうやらここまでは予定通り進んでいるようだな。新川、各班配置完了までどれくらいかかる」

「一番遠い地点まででも概ね5分、それ以内には終わるでしょう。そこから無線にてこちらから指示を飛ばします」

「5分か、分かった。山形公平、オペレータの気配は分かるか?」

 

 現状把握をしつつ、俺に尋ねてくる。

 言われるまでもなくさっきから気配感知は行っているんだけど……ここに来て妙な話があった。

 困惑しつつも説明する。

 

「気配は……2つある。地面の下だ。仮に地下がシェルターだとしたら、すでに潜っていることになる」

「モンスターの気配についてはどうだ? スキル《気配感知》では、さすがに地面の下までは読めんが」

「ああ、それはあるよ。やっぱり地下で、予想通り大量にまとまっている。オペレータの気配は更に地下にあるな」

「ふむ……空振りに終わらずに済んだのはよかったが、なんのつもりだ? 地下にすでにいるなど。地上は完全にハリボテとでも言うのか」

 

 訝しむヴァール。たしかに感知の上では、オペレータの気配は2つきりでしかも地下深くにいる。スレイブモンスターだろうおぞましい数の気配がまだ、上層にあるくらいだ。

 こうなると地上、ここからも見える一軒家はなんなのかと言う話になるんだけれど……目を凝らして見ても人の気配はなさげだ。まさか本当に、地下を隠すためだけのハリボテだったりするのか?

 

「配置完了の旨、報告来ました! いつでも総員、突入できます!」

 

 新川さんからの報告。存外早く配置が終わったらしい。

 それを受け、ヴァールがふむと少しばかり、考え込んだ。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

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