攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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自分のためだけに生きられなさそうな人

「もー、テンション下がるし何あいつらー。せっかくのデートに水差すなしー。関口なんかの名前まで出しやがってーもー」

「せ、関口くん嫌いなんだねえ」

「好きになる要素ないっしょ、あんなの」

 

 おおう、辛辣ぅ。

 ナンパさんたちがそそくさと去ってから、佐山さんはこんな感じにむくれている。プンスカって感じだ。

 デートに横槍を入れられたイラつきもあるみたいだし、話の中で関口くんの名前が出てきたことにも相当、頭にきているみたいだった。

 

 色々あったからか、佐山さんは相当、関口くんのこと嫌ってるんだな。さもありなんやといった感じだけど、うーむ。

 と思っていたのだが。ちょっと予想と外れる見解を、彼女は俺に言ってきた。

 

「私らを助けようとした山形くんを邪魔したのもそうだけど。何よりあいつ、みんな見下してるし」

「え、見下し?」

「隠してるつもりでもバレバレだっつーの! 探査者以外はみんな無能だって、態度からしてこっちを馬鹿にしてるの分かるし」

「……そう、なんだ」

 

 ビックリした。この人、関口くんが表向き隠している選民思想を、完全に見抜いている。

 

 元より彼はそういう思想の持ち主だ。探査者を、神に選ばれし才覚者とでも認識しているみたいで、非探査者なんて下等民族くらいにしか見ていない。

 なんなら自分より下の探査者すら見下しているレベルだ。

 探査者になりたての頃、彼に蔑まれたことを思い返す。あの場には結構な数の人もいてヤバい発言も聞かれてたはずなんだけど、持ち前のイケメンパワーと探査者アピールとでうまいこと、やり過ごしているみたいだ。ある意味すごい。

 

 まあ関口くんのイケメンさはさておくにしても。そういう、探査者至上主義みたいな考え方を真人類優生思想、とか言うんだったかな。

 とんでもない馬鹿げた考えだし、実際、あらゆる方面からぶっ叩かれてるんだけど、どうにも一定層の支持を獲得していて根強いそうな。

 関口くんがそういう組織にマジで関わってるとは流石に思わないけど、かぶれてるのは間違いないだろう。それを、佐山さんは見事に見抜いたってわけか。

 

「山形くんみたいな、すごくて立派な探査者が身近にいるから余計にさ。あいつ、大したことない癖に何様なんだって思う」

「俺だって別に、大したことないですけど……」

「しょーもない謙遜、いらんし」

「ばっさり!?」

 

 切って捨てるとはまさにこのこと、というか佐山さん、下手すると香苗さん並みに俺のこと高く見積もってないか?

 救世主云々言い出さないだけマシだけど、彼女の中の俺が現実とあんまりそぐわなくなっていくのも怖い。そのうち解釈違いとか言い出したりしないだろうな。怖ぁ。

 

「……動画とかでさ。山形くんの戦う姿、見てるもん」

「へ? ああ、探査の。さっきも言ってたね」

「あんな、化物たち相手に一人で戦っててさ。昨日のリッチ? 相手にだってそうじゃん。人を救うためって言って、泣きながら戦ってたって御堂さん、動画でもブログでも言ってるし」

「別に戦いが嫌で泣いてたわけじゃないからね? 乗っ取られてた人が悲しすぎて泣いてただけだからね?」

 

 独自解釈やめて? いやいや戦わされることに、心が悲鳴を上げてたのでは決してございませんよ?

 あれは望月さんが、生きながらすべてを踏みにじられていたことが、殺してくれと叫びながら家族に会いたい、帰りたいと泣いていたことが辛すぎて泣いたんだ。

 ……似たようなもんだなこれ。どのみち泣いてんじゃーん。いや、あれは絶対泣くわ。あんなん見て、聞かされて泣かないわけがない、憤らないわけがない。

 

 だから俺は泣き虫山形なんかじゃないやい、と謎の自己弁護なぞ考えつつも、佐山さんに続けて言う。

 

「俺は、まあ、色々あって。ちょっとダンジョン探査を通してやらなきゃならないことがあるみたいでさ」

「やらなきゃならない? 何、それ」

「詳しいことはまだ何も。ただ、俺にしかできないことみたいでさ。やらないとまずいらしいし、だったらやってやろうかなって。それだけだよ。大した話じゃない」

 

 俺にしかできないことを俺がやるのはある種、当たり前なんだよね〜。

 誰がやっても良いじゃん、ってな面倒事を、進んで引き受ける人こそが本当にすごい人だと思う。誰かが苦しむくらいなら自分が、なんて、早々考えることはできない。

 ヒーローってのはたぶん、そういう人たちのことだ。比べるに俺は、本当にやらなきゃいけなさそうなことだからやってるってだけの、まあ仕事人だな。

 

『自覚無いって怖いですねー。称号新しいの、来ましたよー』

 

 いきなり響く声。リーベか。

 また変なタイミングできたな、称号。口の中だけでステータスと呟き、表示されたソレを見る。

 

 名前 山形公平 レベル102

 称号 誰かのために泣ける者

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 名称 風浄祓魔/邪業断滅

 

 

 称号 誰かのために泣ける者

 解説 自分のための涙さえ、あなたは誰かに譲るのですね

 効果 日常生活中、勉強効率アップ

 

 

 《称号『誰かのために泣ける者』の世界初獲得を確認しました》

 《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》

 《……他者を思いやり涙を流す。それは誰にでもできて、けれど誰しもにできるわけではないこと。あなたの涙こそが、あなたが何者であるかを表しています》

 

 

 ……システムさんまで。みんな、俺をすごい人にしたがるなあ。

 もう苦笑いするしかない俺なのでした。

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