攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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逃げて!分家の人達逃げてーっ!!

 香苗さんとあれやこれやと話していると、あっという間に時間が過ぎて気づけばもう、お昼時だ。

 今日も、というか帰省中は本家の長女として、可能な限り毎食を一族の皆さんと食べる必要があるらしい彼女は渋々といった様子で、名残惜しそうにしつつも部屋を出ていった。

 

「それでは公平くん、またお会いしましょう……分家の者達は私が責任を持って伝道しておきますので……」

「去り際にすごいこと言わないでください。止めてくださいよ本当に」

「ハッハッハー。じゃあ行こうか香苗さん、葵は公平さんをよろしくー」

「はっはっはー! まあお昼ごはん一緒に食べるだけなんですけどねー」

 

 入れ違うようにやってきたエリスさんと葵さん。そのうちエリスさんは香苗さんの護衛として彼女について昼食会に行き、葵さんは俺とともにお昼ごはんだ。

 昨日とはちょうど逆な感じになるね。エリスさんと二人きりだったのが、今日は葵さんと二人きりになるって構図だ。

 

 女中さんが数人、やってきてお昼ご飯を用意してくれる。

 なんと寿司桶とオードブルがテーブルにデデン! と置かれたのだ。ぶっちゃけ4人分はありそうな量なんだが、たぶん早朝に一仕事終えてきたということでちょっと多めにしてくれたんだろう。ありがたいっちゃありがたいけど、食いきれなかったらどうしよう。

 

「腹ペコなんでこの量はありがたいですよ。早朝からここまでなんだか、ドタバタしてましたねー」

「そうなんですか? 結構、おにぎりとか食べてたような……」

「あんなの食べた内には入りませんよ、はっはっはー! 探査者なんてのは身体が資本なんですから、食べれる時には多少無理したって食べなきゃ、命取りになるってなもんなんですよね!」

 

 明るく笑ってそう答える葵さん。ご馳走を前に涎を垂らす姿はとてもじゃないけど、青樹さんを捕縛し終えた後にひたすらおにぎりを頬張っていた姿からわずか半日が経過した程度とは思えないほど、飢えた感じのお姿だ。

 かく言う俺も割とお腹ペコペコなので、とにかく二人、欲望の赴くままに食べ始めたのである。

 

「んー! おいしい~! お寿司サイッコーですねはっはっはー!」

「あー、美味しい……! いいのかなあこんな贅沢、バレたら家族に怒られそうだわー」

 

 新鮮なネタがプリプリして美しく煌めく、寿司を堪能して思うところを述べる。なんだろう、とにかく旨いものが食える今が果てしなく幸せだあ。

 オードブルの鴨肉なんかも最高だ。最近になってスーパーとかでやたら見るようになってきたけど、癖のある味わいながらブラックペッパーとの相性がよくてこれがまた美味しい。

 

 早起きしてよく分からん連中の拠点を攻めて、挙げ句意味不明な化物と化した人間一人を、どうにかこうにか助け出した昼にはふさわしい豪勢な食卓。

 改めて食事最高! と受肉したてのリーベちゃんみたいなことを考えながら食べまくってると、葵さんがそう言えばと話しかけてきた。

 

「青樹、無事に病院に搬送されたみたいですよ。まだ意識はないものの、身体には一切の異常がないそうです」

「あ、そうなんですね……よかった。後遺症とかあったら目も当てられない話でしたしね」

 

 今朝方、確保した青樹さんの容態が安定しているらしいことを受け、ひとまずホッとする。

 まあ肉体的には丸一日、ロールバックしたわけなので後遺症なんてあるはずもないんだけれど……それはそれとして無事に越したことはない。

 

「意識を取り戻し次第、取り調べに移ります。孤児院で受けたという人体実験の件も含め、彼女からは聞き出さないといけないことが山程ありますからね」

「そうですね……人工的に探査者を創り出すなんて、そんなことが行われていたなんて」

「しかも子供相手に……おぞましい話ですよ」

 

 吐き捨てる葵さんに、同意を示して俺は頷く。

 戦いの最中、あきらかになった青樹さんの正体。育った孤児院にて行われていた人造オペレータ実験の被験者として、たった一人の成功例だという彼女は、そこを火野につけ込まれて真人類優生思想に染まった。

 自分という成功例を生み出すために犠牲になった多くの子供達に価値と意義を与えるためにと、自らを新たな支配者層と思い込むようになったみたいなのだ。

 

 だがそれは結局のところ、手駒が欲しかった火野の操り人形と成り下がることに他ならず。

 最終的に彼女は裏切られ、切り捨てられてしまった──スレイブコアを体内に仕込まれ、無理矢理人間でなくさせられてしまうという無惨極まる形で。

 

「どうあれ犯罪に手を染めた青樹にも非があるにせよ、火野の悪辣さがあまりにも酷い……師匠も本気で怒ってましたよ。あいつはこの世にいてはならないって。だからって殺すわけにももちろん、いきませんけど」

「少なくともこれ以上、野放しには絶対にできない存在であることは間違いありませんね。俺も、あの男は捨て置けない」

 

 探査者としてとかシステム側としてだとか関係なし、それ以前に人として、一個の命として火野源一の悪魔の所業は見逃せない。

 次、相対することがあれば絶対に逃しはしない。何があろうと捕まえて、これまでの人生に対する落とし前をつけさせなければならないだろう。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

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「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」2巻、発売中です!
書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー
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