攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
話の流れで今日、梨沙さんはじめいつものグループの女子組と古都でお昼ごはんをいただくことになった俺。
何はともあれボディーガードであるエリスさん、葵さん、何より宿を貸して頂いている香苗さんにあれこれ事情を説明すると、3人とも笑顔で快諾してくれた。
「ハッハッハー、モテモテだね公平さん。いいよ私がさりげなーくコッソーリ、後ろから君達を見ていてあげよう」
「職質食らいそうですね、はっはっはー! ま、倶楽部も事実上ほぼ壊滅状態に近いとはいえ火野に鬼島とやらも残っていますし、師匠なり私なりが護衛についておくのは間違いないですねー」
エリスさんと葵さんが、さすがにまだ護衛は必要とのことで片方、俺を見てくれるみたいだ。
昨日の制圧作戦の結果、倶楽部の拠点から構成員からスレイブモンスターまで、一網打尽にできた俺達。火野と鬼島が未だ逃亡中というのはあるにせよ、組織としての倶楽部日本支部というのは事実上、壊滅状態に陥ったと言える状態にある。
ただ、だからこそ野放しの幹部二人が何をしでかしてくるか分からないと言うのもあるのだ。
特に火野なんて、エリスさんがいるんだから余計にこっちめがけて何か仕掛けて来ない保証がない。そういう意味で、やはり護衛はまだまだ必要なのかもしれなかった。
香苗さんも穏やかに微笑み、俺を労いつつも言ってくれる。
「昨日は大変でしたからね……日常を、古都を存分に楽しんでいただけるとここで生まれ育った者としては嬉しい限りです」
「ありがとうございます香苗さん。ちなみに今日は、香苗さんは?」
「……青樹さんを見舞いに行こうかと。話さなければならないことも、ありますからね。我らが救世主様が再び全国ネットで放映されたこと、本来であれば何に優先してでも救世の光チャンネルにて取り上げねばならないところですが……申しわけありません、それは帰ってからさせていただきます」
「なんならしなくてもいいくらいですけど……」
伝道師としての発言はともかく、ホントともかくとして。
俯き加減に、けれど覚悟を秘めた眼差しで俺を見据える彼女は、師匠といよいよ腹を割って話す気でいるようだ。
ここに関してはもう、俺からは何も言えない。ただただ、双方納得の行く形で決着がつけばいいと願うばかりだ。
凄惨な人体実験の末、たった一人生き残ったことをつけ込まれて道を踏み外した青樹さんと、そんな彼女を数年前、見限った香苗さん。
師弟としての二人の時間はきっと、そこで止まったままなのだ……今こそ時計の針を動かすべき時だと俺には思える。
たとえその先に訪れるのが訣別の時であれ和解の時であれ、前に進むことはきっと、それだけで価値のあることなのだと信じるから。
俺は彼女をじっと見つめ、静かに頷くばかりだった。
──そうして朝9時過ぎ、俺はエリスさんと、香苗さんは葵さんとそれぞれ出かけた。
梨沙さんとの待ち合わせは10時に繁華街の外れにある駅の前。ここからだと概ね30分かそこらでたどり着く。
天気は曇りがちだが雨という感じでもない。いい感じに太陽が雲で遮られ、体感気温は心なしか落ち着き気味だ。助かる。
「で、どこ行くつもりだい? ハーレムデートなんだししっかりしたとこ選びなよ〜」
道中までは並んで歩く、エリスさんが何やら尋ねてきた。ニヤニヤしていらっしゃるあたり、完全に面白がっているねこれは。
なんなら肘でウリウリと突いてくる、微妙に動作のノリが古臭い彼女に苦笑して俺は返す。
「ハーレムじゃありませんって、友達の女子ですよ3人とも……そうですね、俺もこの辺はよく知らないんですよ。むしろ彼女達のほうがたぶん、いろいろ詳しいのかなって」
「生兵法でいくと恥をかきそうだね、ハッハッハー。ま、なんかいろいろ店もありそうだし、あちこち巡っていればなんとなし盛り上がりはするんじゃないかな?」
「そう願いますよ本当」
本当にマジで、どうにか空気が冷えないことを祈るばかりだ。今回のメンツで雰囲気が悪くなった場合、俺の胃腸へのダメージは通常の実に3倍にまで達するだろう。
女の人だらけの中に男は俺一人、という状況はこれまでにも何度かあったけれど、それって実のところ探査者としての仕事の中での話だからね、大体。
今回は完璧プライベートかつ、メンバーは探査業とか関係ないクラスメートの女子3人だ。つまりは話題に困った時に振れる話題に、探査者関係のことは盛り込めないのだ。
学校でのことなんて俺、特に話せることないよ? 彼女達とは同じグループで体験していることも概ね被ってるし、俺オンリーの時なんて基本ボッチだし。
ああ一応、関口くんとの絡みもあるにはあるけどそれだって探査者としての側面が強い。夏休み中の今でもたまに、おかし三人娘の指導についてお互い、情報共有はしているとかそんな感じだ。
彼を通じて、本来の指導教官である斐川さんや荒巻さん、葵さん達にも教育内容を伝えとかないといけないしね。
ともあれそんなんだから、こと今回、困った時の話題という点では俺の手札はないに等しいという、無抵抗主義山形くん状態なのだ。
「どうしたらいいんでしょうか?」
「ハッハッハー、私にそれ聞く? お手上げだよー、私が同じ立場なら一昨日よろしく血の気が引けてダウンするかもね」
「ですよねー」
ボッチ道を行く者としては同志であるエリスさん、だからこそこの手の話を相談する相手としてはぶっちゃけそぐわない人でもある。
葵さんだったら何か、アドバイスでもくれただろうかと考えるも、あっちはあっちで陽キャだしなあ。
会話? ノリっしょノリはっはっはー! みたいな返しされたらこっちとしてはお手上げせざるを得ない。
ノリで発言したら空気が冷える、なんて経験はきっと彼女にはないだろうからね、はははは怖ぁ……
ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー
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