攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
慣れないファッション店巡りもそこそこにして、商店街の中心ほどにあるゲームセンターに次、俺達は向かった。
ゲームセンターっていうか、クレーンゲーム専門店って感じだろうか? 流行りのアニメグッズとかぬいぐるみが景品になっている筐体がずらり、ところ狭しと並んでいる店だね。
「あっ、かわいーぬいぐるみー」
「このフィギュアあれだよね、あのアニメの。山形っちってやっぱさ、こういうフィギュア家に飾ってる感じ?」
「ありませんけど……」
やっぱりそうなの? 的な感じのナチュラルなご質問やめてもらえませんかね遠野さん。
アニメは見るけどフィギュアとかプラモとか、立体方面にはあまり興味ないから、俺。
カラフルな装飾や電灯でどこか薄暗いながらも、カラフルに彩られた店内を固まって歩く俺ちゃん達。あちこち見回しては新鮮な反応を返す梨沙さん、遠野さんに木下さん。
正直、さっきまでとは別の要因でソワソワしちゃう俺だ。
だってこんな、見るからにギャルな梨沙さんやクールな木下さん、陽キャな遠野さんと一緒にクレーンゲームの前をうろちょろしてるところ、もし知り合いとかに見られたらなあ。
困りはしないけど、俺も陽キャと誤解されそうだ。
「ん……何?」
「げっ……」
ほら来た!
道を横切る人の中、つい昨日遭遇したモノの顔を見かけてしまい呻く。なんなら向こうも俺を見かけてえっ? みたいな顔をしつつも、にこやかに近寄ってきて俺に話しかけて来る始末だ。
あからさまにいや~な顔をした俺に、梨沙さんが目聡く気づいて心配して尋ねてくる。
「公平くん、大丈夫?」
「あ、ああうん。ちょっと、知り合いがいたから。数分だけ離れるね」
不安がらせることはすまい、と笑顔で断って、俺は店の前に出た。
まさかここから戦闘に発展するとは思わないけど、何せよくわからん相手でもある。何かしてきてもすぐさま対処できるよう、ある程度開けた場所に出とかないとね。
そんな俺の思惑──場合によっては殴りかかろうとしている──を知ってか知らずか、やつは俺の前までやってくる。
なんか紙袋提げてるし。土産?
訝しむ俺に、男は微笑み挨拶してきた。
「やあどうも山形公平。美少女を3人も連れてお出かけですか、さすがはハーレム救世主ですねえ」
「単なるクラスメイトだよ、織田。お前こそ、何してるんだこんなところで。神様が、お忍びで観光旅行かな?」
昨日、わざわざ身分を偽装してまで御堂本家に突っ込んできた概念存在の端末、織田。
おそらくはどこぞかの神話の最高神とか、そのレベルのやつじゃないかなぁ。そんなお偉いさんだが直々に、端末体までつかってこんなところをうろちょろしているのだ。
何やってんだこいつ。
率直な質問に織田はニヤリと笑い、手に提げていた紙袋を軽く掲げ、俺に示してきた。
「それをあなたが仰りますか? ふふ……いかにも観光ですよ、観光。滅多なことでは現世に降り立ちませんからね。息子娘や友人知人に、土産なんかを買ってやろうと思いまして」
「はあ……つまりたまたまなんだな、この状況は」
「あなたから受けたヒントについての確認さえ、まだですからねえ。あなたの元を再度訪れるのは諸々、真実とやらに到達してからのほうがいいと思っていましたよ。なんの因果か、こんなところでお会いするとは」
肩をすくめて苦笑いする。織田の様子からは、白々しさというものはまるで感じられない。
どうも本当に偶然の再会みたいだ。まあ昨日の今日だし、早すぎるよなそりゃ。
次会う時はこの世の真実を知ったこいつに、ストッパー役を与えたことについて文句の一つでも言われる時かと思っていたんだけど、たまたまってのはあるもんだね。
俺も警戒度を最低限度まで下げる。土産とか言ってるけど、こいつ家族がいるタイプの神なんだな。それだけでも結構、神話マニアさんとかなら正体に気付けそうだ。
と、織田が少し真面目な顔で、心なし小声で言ってくる。
警戒度を下げた俺に反して、こいつはこいつで何か異様に警戒している。なんだ?
「山形公平……今、すさまじい力を持った何者かが一人、私を注視しています。あなたと何か関わりが?」
「え? …………あ、あー」
緊迫感のある顔でそんなことを言ってくるから、何かと思えばすぐにその、注視している存在に気がついた。
俺の護衛を担当しているエリスさんだ。少し離れた雑居ビルの屋上から、なんかコーヒー? さっきのカフェで買ったっぽいドリンクを啜りながらこっちをガン見している。
探査者として強化された聴覚で、こちらの話も聞いていたみたいだね。眼の前の男が、昨日話していた織田だと同一人物だと確信して強い警戒とともにこちらを見ていた。
なるほど……彼女ほどの実力者に、ここまで強く警戒されていたらさすがに笑顔ではいられないか。
「私も神の端くれ、特に智慧には自信がありますが……それゆえに分かります。人間の領域を越えた者に今、敵視されていると。心当たりは?」
「俺の護衛。昨日俺達の話し合いに参加していた早瀬葵さんのパートナーでもあるな。仔細は言わないけど、たぶん探査者の中でも最強格の一人だよ」
「護衛……ですか、なるほど。あなたにそんなものが必要なのかという疑問はありますが、まったく覚えがないわけではないようで何よりです」
ふう、と息を吐いて俺から二、三歩離れる織田。
世界最強クラスに睨まれてるんだ、そりゃこうなるよなあ。
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