攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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僕はね、人間だけど人間じゃないんだ。システム領域から来た、コマンドプロンプトなんだよ!

 世界の仕組みの真実、世界維持機構ワールドプロセッサと因果律管理機構コマンドプロンプト。その存在に始まり精霊知能やシステム領域について。

 500年前に起きた異世界からの侵略、邪悪なる思念というモノ……その反撃のために芽生えた意志。絶望的な状況下、発狂寸前の抵抗を続けた350年間。

 

 初代アドミニストレータからソフィア・チェーホワまでの奮闘と無惨な末路、そして至ったセーフモード。

 あるべき流れを停滞させてまで得た猶予の中、企画立案されたるメインプラン、アドミニストレータ計画とオペレータ計画。

 結果として現世に訪れた、それこそが大ダンジョン時代。

 

 そして──誰にも悟られず発生し、最後の最期を受け持つべくあえて輪廻転生を選んだ1つの魂。

 すべてをやり直す《滅尽滅相、大ダンジョン時代》を携えて、けれど御堂香苗という奇跡を受けて《攻略! 大ダンジョン時代》へと辿り着いた因果律の化身。

 

 コマンドプロンプト=山形公平。

 

「────かくかくしかじかちんちろりん。という次第でしてつまるところ、俺って実は500歳なんですよね」

「……………………」

「……………………」

「おお……いつ聞いても何度聞いても素晴らしいなんという気高くも壮絶な御心コマンドプロンプトこと救世主山形公平様の500年にも亘るたった一人での孤独な戦い仲間にすら何も言えずただ最終決戦の最後の局面のためだけに御自身という最強にして最重要のファクターを温存しなければならなかったその苦しみ辛さはどれほどのものなのでしょう私にはまるで想像もできませんですがそれだけに哀しくもあります公平くんの覚悟はこの世のどんなものよりも崇高で尊いものであることに間違いはないのですがだからこそそんな風に御自身を犠牲にするという決断を下されたことに伝道師として探査者として人間として女としてやるせなさを禁じえません私も人間不信ではありましたが家族に愛されているという実感くらいはありましたけれど公平くんはそれすら抱く余地もなく数百年もの時を一人ただ一人じっと耐えてきたのですね世界のために最後には御自身を犠牲にしてでもすべてをやり直すという凄絶な想いを胸に」

 

 この世の裏側、システム側について一切合切打ち明けたところ、ご覧の通りの有様です。さしものエリスさん葵さんも情報量の多さに耐えかねたようで、完全にフリーズしてしまったみたいだ。

 もうすでに真相を御存知な香苗さんは、二人よりは全然余裕なんだけど余裕な分、暴走して句読点が何処かへ行っている。こないだガンダーラまで行ったのに、今度はハワイかグアムかな?

 

 隣でひたすらマシンガントークをする香苗さんはさておき、エリスさん達を見る。

 絶句という表現が当て嵌まるくらい言葉を失っていたお二人は、やがて納得したように、けれど痛ましいものを見るように俺に視線を向けてきた。

 

「……なる、ほどねえ。つまり公平さんは、本当に救世主だったわけだ。すべてを背負って一人犠牲になろうとしたなんて、どこかで聞いた話だよ」

「そんな大層な話でもないんですけどね。独り善がりに最適解を決めつけて、何もかもなかったことにしようとしたコマンドプロンプトの判断は……あくまで正解の一つでしかないと、今の俺なら理解できますから」

 

 なんなら本当に滅尽滅相が行われていた場合、今あるこの世界のすべてが犠牲になっていたわけだし。それを考えるとコマンドプロンプトだって、立派な加害者の一人と言えなくもないんだよなあ。

 やり直すという選択が完全に過ちとは言えないけれど、ものの見方は角度を変えれば形も変わる。一方的に既存のすべてを否定した私のやり方は、否定される側からすれば邪悪なる思念と大差ないのだろうな。

 

「《奇跡》のおかげで蘇った俺、山形公平だからこそすべてひっくるめて前に進む道を選べました。俺に、そうするだけの心と勇気をくれたのはこの世界です……この世に生きるすべてのもの達のお陰で、大ダンジョン時代は終わりを迎えたんですよ」

「っはぁ〜……もうなんか、スケールが違いますねえ。正直山形くんの話でなければ、小説投稿サイトにでも投稿したらどうですかねって言っちゃいそうでした」

「お気持ち、すごくよく分かります」

 

 葵さんの素直な感想に、照れ笑いで応える。

 中学2年の頃の俺とかこんな話聞いたら、そうなんだすごいね! で、どこで読めるのそのお話? みたいな反応をたぶんすると思うもの。

 まして俺自身がシステム領域の最上位プログラムの魂の転生体で〜なんて、今でも吹聴したら邪気眼扱いされて終わりになると思うもの。包帯とか差し入れされそうだもの、ちゃんと右腕に封じ込めとけよとかコメントも添えられて。

 

 さておき、これでお二人も経緯について完全に把握した。

 これで今後、変な隠し立てもなく話ができるだろう。打ち合わせとか話し合いの時になるとどうしても、俺の経歴に似つかわしくない知識量とかで疑問視されることは多かったからね、これまで。

 

「事情はなるほど分かったよ……やー、なんかすごいな。神様よりすごい世界の理の擬人化さんがここにいるよ、葵さんや」

「ねー、すごいですよねー。大ダンジョン時代の成り立ちについても驚きましたし、事実って小説より奇妙なものなんですねえ」

 

 真実を咀嚼しつつ、どうにか受け入れて気楽さを取り戻そうとしてくれているお二人。

 これなら今後も、前までの調子で楽しくやっていけそうだと思いつつ……ひとまずの話し合いはこれにておしまいとなった。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

【ご報告】
「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」2巻、発売中です!
書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー
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