攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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陰キャあるある:思考が異様に後ろ向き

 あれこれ用事も片付いて夕暮れ、晩御飯までにはあと数時間はあるという頃合い。

 香苗さんやエリスさん、葵さんもひとまず部屋を出られて、俺一人での自由行動になっているのが今だ。四六時中近くに誰かいるのもなんだし、こういう孤独というのは時にありがたい。

 

 この時ばかりは倶楽部だの織田だのなんだの、再び全国デビューを果たしてしまったシャイニング山形の名前だののことは置いといちゃって、縁側に出てのんびり日向ぼっこなんかしている俺ちゃん。

 たまにはいいもんだよね、ボーッとする時間も。夏祭りからこっち、まあまあシリアスな忙しさがあったもんだから助かる。

 まだ日の高い夕方に、ひぐらしの声を遠くに聞いてホッと一息入れる夏。うーん、ノスタルジック。

 

「そういや、盆の時期には爺ちゃん婆ちゃん家かあ」

 

 ノスタルジーに浸っていると不意になんとなし、もうすぐそこに控えているお盆についてあれこれ考えだす。

 2泊だか3泊だか、県は湖西地域に位置する爺ちゃんと婆ちゃん家に帰省するんだよね。

 ちなみに父方のほうで、母方の祖父母は実は我が家の意外と近所にあったりする。正月はそっちに行くんじゃないかなぁ。

 

 元気にしてるかなあ、爺ちゃん婆ちゃん。最後にあったのがちょうど一年前の今頃なんだけど、その時にはピンシャンしていたから大丈夫とは思うけど。

 まあ父ちゃんの妹さん、つまり叔母さんが実家ぐらしだったり弟さん、つまりは俺の叔父に当たる人の一家が近辺に住んでいて交流も活発らしいから、何かあったとて問題はないんだろうな。

 帰省の際にはいわゆるいとこ達やはとこ達とも会うことになるだろうし楽しみだ。

 

「あ! いたぞシャイニング!!」

「シャイニング山形だ! 有名人だー!!」

「へあ?」

 

 と、急に子供達の声。見れば広い庭園の遠くから、小学校高学年くらいの男女が4人、はしゃいでこちらに駆け寄ってきている。

 ここに来てからチラホラ見てる子達だ……御堂分家のお子さん達なんだろう。彼らは元気いっぱいに俺のところまで来て、けれどちょっと遠巻きから寄り集まってチラチラ、こちらを見てきた。

 

「わあー……シャイニング山形! 本物だあ」

「カッコいい……くは、どうかな? ふ、ふつう?」

「大人っぽくはあるよね。イケメンかは……ふ、ふつう?」

「でもさめっちゃすごい探査者なんでしょ? 本家のお姫様がなんか、すごい喋ってたけど」

 

 ふつう。普通かあ……ブサメンなどと言われなかっただけありがたい。ここでカッコいいとかイケメンとか言われると、逆にお世辞かな? と疑っちゃうのが陰キャな俺らしいところだ。

 身近にいるのがマジで芸能人級のイケメン関口くんとかだしなあ。そこまででなくとも、松田くんや片岡くんも割と顔は整ってるし。

 

 あれっ? そう考えるとあのグループってかあのクラス、俺以外の見た目よくない? むしろ俺だけ浮いてない?

 ふとした気付きに背筋が凍る。別に顔で友達選んでるわけではないし、イケメンとかフツメンとかどっちでもいいといえばいいんだけれどさあ。

 気づいちゃったらこう、普通な俺が逆に浮いてるよなって感じはしてくる。

 

 これも世の中の無情ってやつかな。そこはかとなく黄昏れていると、子供達はいよいよ近寄ってきて興味津々に俺を見る。

 さてどうしたかな。話しかけていいものなんだろうか。話しかけた途端不審者による声がけ事案とか言われて、潜んでいた大人の皆さんに袋にされたりしないだろうか怖ぁ……

 

『君のそのネガティブ思考はなんなんだ……500年もボッチやってるとこうまでねじ曲がるんだね、考え方。人間不信なんて大層なものですらなくただただ、思考回路が後ろ向きなだけじゃないか』

 

 脳内のアルマさんが、呆れと哀れみをミックスしたみたいな声色でつぶやいてくる。うるさいよー自分でもないとは思ってるけど、ついつい非現実的なまでに最悪な事態を考えちゃう癖があるんだよー俺にはー。

 拗ねたようにアルマに答えつつ、俺は腹を括って子供達を見た。男の子が1人に女の子が3人。わんぱくボーイっぽい男の子におしとやかな女の子達が引っ張られてついてきている、そんな印象の四人組だ。

 

 俺これ知ってる、ラノベだラノベ。5年後とかで高校生になったらなんかこう、ラブがコメっちゃうんだろう。

 青春の前段階、まるで羽化を控えた蛹を見るような感覚に目を細めつつ、俺は彼と彼女達に話しかけた。

 

「えっと……どうしたのかな? 君達、御堂さん一族の子達?」

「あ、う、うん! しゃ、シャイニング山形……さん! に、会ってみたいなって思って!」

「お、お忙しいところごめんなさい……」

「いやいや。見ての通り暇してるから、平気平気」

 

 案外礼儀正しいお子さん達が、揃って緊張の面持ちを見せている。さすが御堂一族の子達、心優しいのが分かるよ。

 努めて不安がらせないよう、微笑んで応対する。光っちゃってもいいのかもしれないけど、そうなると挨拶したら光ってくる珍妙な男になってしまうのが確定しているのがね……

 

 せめて脈絡は入れないと、ただでさえ持ち芸みたいになりつつあるんだから。雑に披露して受けを狙う、なんてやるのはそれしかない人みたいに思われそうだ。

 でもたぶん、どこかのタイミングで光るんだろうなーなんてことを考えながらも、俺は子供達との交流を開始した。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

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