攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

768 / 2045
よくわかる(といいなあ)、山形くんの権能講座!

 探査者であれば誰しもにとって馴染みの深いもの、ダンジョンコア。

 ダンジョンを形成する核であり、ダンジョンの最奥に位置するそれを持ち帰ることこそが探査者の活動の証ともなっている……ある意味ではスキルやレベル、称号に並び大ダンジョン時代を象徴していた代物だ。

 

 それが、人間の手によってどうやってか加工され、性質を変えたもの。スレイブコアの正体とは、俺やヴァールにとってもまるで予想し得なかった驚愕の事実を孕んでいた。

 

「ダンジョンコアを加工して、スレイブコアを生み出した……そもそも加工ってどうやったんだ、あんなもの……」

「そこは分からん。青樹によれば製法はトップシークレット中のトップシークレット。火野ですらそれを知らず、残るもう一人の鬼島なる幹部のみが知り、実際に精製しているのだといっていたが」

「鬼島だけが、スレイブコアの製法を知っている? ……何者なんだ、そいつは一体」

 

 愕然とした空気の漂う、俺の部屋に集う一同。俺とエリスさんがただただ訝しむのを、ヴァールは冷静に答えた。

 目下、倶楽部日本支部のトップと思しき火野でさえ知らないスレイブコアの製法。未だ姿を見せない鬼島という者のみが知るそれは、果たしてどういった方法なのか。

 

 正直、まともな方法ではないんだろうなって気は、今の段階でしてるんだよね。

 思い起こされるのは一昨日、遭遇したどこぞかの神、織田の言葉だ。彼は俺に対して、今回の件について神々は関与していないと言っていた。

 それは裏を返せば神々以外のモノについてはその限りでないと言うことを意味している。

 

 悪魔か、妖怪か、はたまた精霊だったり幽霊だったりするのか、そこは分からないけど。

 ダンジョンコアに手を加えるなんてのは、バグモンスター同様に人間にできることの範疇を完全に、超えてしまっているように思えるのだ。

 

「織田の言い分を考えれば、恐らくだけど神々以外の概念存在が絡んでいる。そいつらが権能でコアに手を加えた、ってのが現実的な可能性として挙げられるかもしれない」

「エリスから報告は受けているよ、山形公平。あなたの前に単身、姿を見せるとは命知らずもいたものだが……お陰で概念存在の関与が逆説的にほぼ、確定したのはありがたい。ワタシも同意見だ。ダンジョンコアを加工するなど、物質的な方向しか干渉できない現世のもの達では不可能だからな」

「神々、悪魔、妖怪──本当にそのようなモノ達がいたのか、という驚きもありますが。よもや倶楽部に関与しているなどというのは、なんとも恐るべき話ですね」

 

 ヴァールも同意し、サウダーデさんが難しい顔をして唸った。

 大ダンジョン時代を迎え、モンスターという存在がダンジョンやオペレータとともに広く認知されることとなり……いわゆるファンタジー的な存在は現実のものとしてすっかり常識というか、当たり前のものとして受け入れられてはいるけれど。

 概念存在にあたる神やら悪魔やらってのは本質的に無関係なため、やはり変わらず人々にとっては空想上の存在にすぎなかったのだ。

 

 それが、実のところはバッチリ存在していてあまつさえ、裏社会で暗躍し続けてきた悪の組織にガッツリ関係していた、などと。

 サウダーデさんに限らず多くの人にとっては驚愕の真実そのものだろう。広く知れ渡ればあるいは、社会情勢に影響すら及ぼすかも知れない。

 神はもちろんのこと悪魔についても、宗教的価値観に重きを置く人々や国家にとって天地がひっくり返るような話だろうからね。

 

 それはともかく。

 ヴァールがふむと考え込む間に、俺は続けて自身の考えを発表した。

 

「おそらくですが鬼島というモノ、なんらかの概念存在なのではないかと俺は見ています。ダンジョンコアの改竄法を知っていて、かつ実際にスレイブコアを精製しているというのであれば十中八九、権能持ちである可能性が高い」

「そもそもですけど山形くん。その、権能って一体なんなんですか? なんとなしスキルのようなもののように解釈してますけど、ここで一回正しい定義を知っときたいなーって」

「あ……そうですね、失礼しました。当たり前みたいに使っちゃってましたね、その単語」

 

 葵さんに言われて反省する。なんか当たり前のように使ってたけど権能なんて言葉も概念も、システム側の専門用語に近いものだからなあ。

 はっきりと先走ってしまった。申しわけなくて頭を掻きつつも、俺は端的に説明を始める。

 

「権能というのは、まあ簡単に言えば概念存在やシステム領域のモノがそれぞれ持つスキルのようなものですね。探査者のスキルと異なるのは、呼称自体は権能で統一されているけれど内容はそれぞれ異なるってことでしょうか」

「スキルで言えば《権能》って名前でみんな等しいけれど、でも効果はそれぞれ異なるってわけかい公平ちゃん」

「そうなりますね。たとえば……そうですね、他者を操る権能を持つモノもいれば、空間転移ができる権能を持つモノもいます。炎や雷を出したりするモノもいれば、五穀豊穣を地域一帯にもたらしたり、悪しきモノから土地を護るモノだっています」

 

 オペレータのスキルと決定的に異なるのは、戦闘に限らない幅広い分野に効果が及ぶことだろう。別に概念存在全員が、戦うためにいるわけじゃないからね。

 神々のほとんどとか一部の悪魔、妖怪などはそうした、暮らしに関する権能を持っていたりするな。そうすることで人々の畏敬や畏怖を高められるというのもあるし、単なるゴリ押し集団ではないってことだね。

 

 ちなみにシステム領域の中で明確に権能を持つモノは限られている。今ではそれぞれの担当する役割という形で、精霊知能達は明確な枠の中に収まっているからね。

 ワールドプロセッサとコマンドプロンプト、あと一部の特殊な精霊知能あたりかな、今なお権能を持つモノは。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

【ご報告】
「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」2巻、発売中です!
書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。