攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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システム領域にも陽キャ陰キャの区別はある。あるのだ……!

 火野のバグスキルについてはシャーリヒッタに任せる、という方向性は間違いないものの、具体的にどこまでさせるべきなのか。

 スキル、称号、レベルの事実上ロールバックに近いことをさせるのであれば、それはそれでシャーリヒッタにそこまでの権限が今回、与えられているのかどうかについて考える必要がある。 

 

 ここについてはもう、本人に直接聞くしかないだろうと俺は言う。

 

「ぶっつけ本番であの子を呼んであれこれ指示するのもリスキーだ。せっかく方向性が定まっているんだから、今のうちに呼んでしっかりした説明をしておこう。それに、みなさんへの面通しにもなるしな」

「そう、だな……シャーリヒッタか。久々に会うな」

 

 どこか億劫げにヴァールがつぶやいた。彼女にしては珍しい、憂鬱げな表情だ。

 なんだ? シャーリヒッタとの間に何かあるのか、ヴァール。不思議に思って尋ねると、彼女は苦笑いとともに柔らかく首を横に振った。

 

「別段仲が良い悪いという話ではないが、彼女はどうにも直情的な性格をしているからな。噛み合わなさは正直なところ、感じるのだ」

「そうなのか。シャーリヒッタ……俺もパーソナリティにまで触れるのは今回が初めてだけど」

「後釜をよりストレートにしたようなモノだ、あなたとはたぶん、噛み合うと思うよ……そういえばその後釜こそが、シャーリヒッタとはそれなりに仲が良かったような気がするな」

「あー……たしかに、輪廻に乗る前に見た覚えがあるわ」

 

 言われて思い返すのは、コマンドプロンプトであった頃。すべてから独立して一人、淡々と邪悪なる思念を封殺するためのスキルを創っていた時だ。

 誰にも気づかれずとも私はすべてを観察していた。精霊知能達の奮闘も、合間に時折、彼ら彼女らが魂を得たがゆえの心の交歓を果たすのも。

 つまりは精霊知能同士の触れ合いをちょくちょく、見ていたわけだね。

 

 そんな中でヴァール言うところの後釜、すなわちリーベはとにかくたくさんの精霊知能達に積極的に絡んでいた。

 学校で言えばスクールカースト最上位ぶっちぎった究極の陽キャパリピムーヴで、精霊知能間の関係性の中核になっていたのだ。

 

 今にして思えば、それはあの子なりの邪悪なる思念との戦いの一環だったんだろう。そうでなくともアドミニストレータ敗北前までのリーベは、各精霊知能間の連携を受け持つパイプ役を担っていたからね。

 結果としてあの子はシステム領域の中でも一番、顔が広いし慕われてもいる。そして彼女を通じて各精霊知能達が互いに親密になっていったところもあるため、本当にすごい重要な役割を果たしてくれていたのだ。

 

「リーベのやつ、ものすごい勢いで他の精霊知能に話しかけまくってたもんなあ」

「うむ……アドミニストレータ担当になる直前の少しだけの間だが、ワタシも妙に話しかけられた記憶がある。用事もなければ頼んでもいないというのに、妙に距離を詰めてきて困ったものだった」

 

 ────まあ、俺やヴァールみたいなのからしたらちょっとグイグイ行き過ぎてた気がするんだけどね!

 コマンドプロンプトたる私から見ても、リーベの距離の詰め方は陰キャ殺しの詰め方だ。陰キャとまではいかないが比較的、パーソナルスペースが広くて生真面目なヴァールからすれば、あの子の距離の詰め方はさぞや反応に困ったことだろうな。

 

 ともかくそんなコミュ力つよつよリーベちゃんなわけだけど、シャーリヒッタとはかなり仲が良かったと記憶している。

 具体的にどんな話で息が合ったのかは分からないけど、傍から見ても相性の良さは感じていたものだ。それを踏まえると、この場にシャーリヒッタを呼ぶにあたってはリーベがいないのが悔やまれるよなあ。

 

「空間転移でリーベを呼ぶとか……いやでも万一、こっちにリーベを呼んでる間に家族に何かあったら嫌だしなあ」

「そもそもシャーリヒッタ一人を相手するのにそこまでする必要もないだろう。アレも精霊知能だ、あなたには従うだろうしな」

「まあ、たしかにやり過ぎ感はあるよなあ……」

 

 一瞬、リーベをここに呼び出そうかとも考えたがヴァールの意見を受けて止めておく。

 仕事で呼び出すんだから、友達付き合いまで考慮する必要もないし、そもそも御堂本家の敷地内に勝手に人を招き入れていいわけないからね。織田でやらかしちゃった分、二度目はさすがに控えたい。

 

 結局、今の面子のままでシャーリヒッタを呼び出すことにする。

 俺とヴァールの二人だけで進めた話だけど、みなさん揃って興味津々でいてくださっていて助かる。特に香苗さんなんて、スマホ構えてメモ帳広げてペン持ってと、余すことなく今から現れる精霊知能を記録する気満々だ。

 

「リーベちゃんヴァールヌツェンと続いて4体目の精霊知能すなわち光り輝く救世主山形公平様に仕える守護天使とも言うべき存在がまたしても我々の前に現れようとしていますヌツェンの時はタイミングがタイミングだったせいでろくに記録もできませんでしたが今回は準備万端ですシャーリヒッタなる精霊知能の姿から声から言動から何から何まで映像としても文章としてもしっかりバッチリねっとりじっくり記録していつの日にか救世主様に仕える天使として扱える日が来る時のために保管しておきましょう今という時代はまさに救世主様による神話の時代ですであれば神たる山形公平様には多くの使徒や天使が仕え侍ることは至極当然なのですから後世にも絢爛たる天使達の姿を伝えるためにも不肖伝道師御堂香苗心して記録して参る所存です」

「怖ぁ……」

 

 俺が精霊知能を呼ぶ度、似たようなことするんだろうかこの人? 精霊知能マニアとかとんでもない称号を与えられそうだ。

 相変わらずの香苗さんを微妙な顔で眺めながらも、俺はスキルを発動した。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

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「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」2巻、発売中です!
書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー
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