攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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俺達の乗っちまった葵さん特急はよ!途中下車はできないぜ!

 御堂本家の門前、すでに用意されていた香苗さんのスポーツカー。その運転席と助手席にそれぞれ葵さんとエリスさんが乗っていて、俺と香苗さんは後部座席に乗ることとなった。

 俺はともかく香苗さんが後ろなのは新鮮だなあ。普段は当然ながら運転席に座るから、前にエリスさん葵さんがいることも含めて珍しく感じる。

 

 しっかり座ってシートベルトも装着。これで後は葵さん次第だね。

 どこかおっかなびっくりって感じでハンドルやレバーを触る葵さんを、助手席に座るエリスさんがどこか冷や冷やした顔つきで見ている。

 え、何? 香苗さんと顔を見合わせて、二人の様子を窺う。

 

「それじゃあ出発しますねー。えーと、ミッション車久々だなー……」

「ハッハッハー、やっぱ葵その車動かすのやめない? 勝手知ったる香苗さんに任せようよ、怖いよ」

「えー? でも、こんな立派なスポーツカー乗り回すなんて機会早々ないですしー。一応葵さん、各種操縦免許に資格も総ナメですしー」

「だからって運転に慣れてるかどうかとはまた別の話だよね? ……ヤダ、下ろしてやだ! こーろーさーれーるー!!」

「はっはっはー! 葵さん特急は途中下車できませんよ〜!!」

 

 怖ぁ……ジョーク混じりのやり取りだけど、その割にエリスさんが割と本気で恐々としてるのが本当に怖い。

 葵さんも免許は持ってるし、こないだも軽トラをスムーズに運転されていたから、スポーツカーでも問題はないとは思うけど。といっても手付きがやはりぎこちなくて、それがどうにも恐ろしい。

 

 見かねた香苗さんが、引きつり笑いをしつつも葵さんに声をかけた。

 

「あ、安全運転でお願いします葵さん。いえその、たとえトラックと正面衝突したとて生還はできますが……そもそも事故を起こすこと自体が論外ですので。そこはお願いいたします」

「信用されてない! あの、皆さんをお運びするからにはちゃんとしますからね? 師匠のブラックジョークを真に受けないでくださいね?」

「ま、まあいざとなれば因果操作で事故らないようにはしますから。その、頑張ってくださいっ」

「はっはっはー! 私の運転が因果レベルで危ういことにされてますね! まあまあ見ていてくださいよ、さあ出発進行ー!」

 

 思わず俺も、最悪の事態を想定して発言はするけれど……葵さんの運転は一応信頼してるよ? うん。ただ、あからさまに手付きが不慣れ感出てるから転ばぬ杖を再確認しておきたいなーってだけだよ、うん。

 そんな後部座席の俺達に叫んで答えつつ、葵さんが運転するスポーツカーは出発した。

 御堂家の警備員の方々に見送られつつ、狭い路地を慎重にゆっくりと進む。

 

「えーと、ここからですと高速とかバイパスを使うまでもないですね。ちょっと南に行って、国道を道なりに走ればそのまま公平くんのお家に辿り着けますよ。スムーズに行けば30分かかるかどうかってところですか」

「そんなにスピードを出さずに済むってことだね、それならまあ、安心かな? まあ、人にぶつけたりは絶対になしだよ葵くん」

 

 思ったより早めに家に帰れそうだ。葵さんも事前に道を調べてくれているようなので、ひとまずは安心かな。

 今日は午後から一仕事あるのだし、早めに帰って一息つきたいところだ。とはいえそのためにスピードを上げたりして事故でも起こしたら、元も子もないけれどね。

 エリスさんが重ねて安全運転を呼びかけると、葵さんがあはは……と苦笑いして応える。

 

「当たり前のことを一々確認されてしまう私……いやまあ、思ったよりこの車、レスポンスいいんで気をつけなきゃなーって今、背筋に冷たいものが走ってますけど」

「えぇ……?」

「私の癖がついてるでしょうから、多少違和感はあるでしょうね」

 

 俺はあんまり詳しくないけど、普段遣いしている人の運転の癖とかつくものなんだな、車って。

 乗り物関係にそんな興味がないから分からないけど、だからこそか車について話す葵さんや香苗さんがいつも以上に大人びて見えるや。考えてみればこのお二人、同年代でもあるしね。

 

 市内を流れる川に沿って少しの間、車が走る。そしてある程度進んだところで左折したら、いくつも車線のある大通りに出た。あとは看板標識の通りの方向に進めば、懐かしの我が家に至るルートに乗るそうな。

 葵さんも、香苗さんの癖がついた車ということでより注意深く運転してくれている。最初にエリスさんとギャーギャーコントやってたのが嘘みたいに真剣で、丁寧な運転だ。

 エリスさんが感心した様子で言った。

 

「いやー、しかし便利だね車ってのは。私もトップスピード出したらそれこそ、高速道路でヤンチャする車レベルには走れるけど疲れるからさ。簡単にこんな速度で移動できるってのは、毎度ながら感動ものだよ」

「師匠の小さい頃って、そもそも車がそんなに走ってなかったんですよね?」

「馬車がメインの時代だったからねー。あと蒸気機関車とか? どうあれ貧しい村娘だったエリスさんは、狭い寒村が世界のすべてだったからどうでも良かったんだけど。思えば変な成り行きでここまで来たもんだと思うよ」

「はっはっはー! 本当に歴史の生き字引みたいな人ですねー!」

 

 そうか、エリスさんの生まれた頃にはこういう、自動車なんて影も形もない時代だったもんな。ましてや田舎のほうの生まれらしいから、今、目に映る景色なんてまさに異世界めいたものがあるだろう。

 しみじみ語る彼女は、まさにこの100年の歴史を生き抜いてきた重みがあるように俺には思えるよね。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

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書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー
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