攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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コマンドプロンプトとどこぞの最高神のタッグとかそれなんて無理ゲ?

「まだ現世にいたのか。それにその土産……」

「家族が多いと土産も多くなりましてね。いやはやさすがは古都と言うべきですね。観光がてら素敵なものを多く、買い揃えさせていただきましたよ」

 

 場の状況にそぐわないやり取り。妖怪の軍勢を前にして、俺も織田も一切緊張はない。

 概念存在の中でも神々、それもおそらくは最高神クラスだろう彼だからか、妖怪達になんら脅威を覚えていないようだ。反面、急に現れた彼の存在、魂の色合いと格に老爺含めて妖怪達は恐れ、慄いている。

 

「…………神!? それもどこぞかの最高神ではないのか、その魂は!? なぜこんなところにそんな姿で、しかも山形公平と親しげにしている!?」

「おやおやこれはこれは妖怪総大将殿、相変わらず元気でいらっしゃいますねえ大勢引き連れてお散歩とは。そちら様の神話の方に教えたらいろいろ楽しいことになりそうだ」

 

 老爺──なんか偉い妖怪らしいね、やっぱり──の狼狽に、せせら笑って答える織田。先生に言ってやろー的なことを嘯くのは、やはり概念存在の中でも神々が上位カテゴリに存在しているのを端的に表していると言えなくもない。

 実際、妖怪総大将殿とやらは言われた途端、可哀想なくらい慌てふためいているからね。

 

「ぐむっ……!? か、神々も現世に介入しているのか!? 馬鹿な、そのような情報はどこからも!」

「どこぞの妖魔と悪魔が手を組み、藪を突いていたようですからねえ。我々としても困るのですよ……ましてやこうも見事に、鬼どころではないモノが現れてしまっているわけですから」

「ただの人間捕まえて言うよなあ、織田なにがしの神」

「ただの人間はこんなところに生きたまま来ませんし、あまつさえこの数の妖怪達をまとめて封印するなんてしないのですよ、山形なにがしの人」

 

 そりゃそうだ。俺は明後日のほうを向いて肩をすくめる。

 織田も苦笑いしながら歩き、俺の隣に立って妖怪たちを見る。なんだか不思議な気分だよ、神と並び立って妖怪軍団と相対してるんだもの。

 

 思わぬ織田の出現に、老爺は完全に萎縮してしまっている。当然配下の妖怪達も、身動きがとれないということもあり諦めムードを醸しているな。

 何体か叫び暴れようともがいているけれど、因果レベルで動けないのをどうにかできるわけもなし。

 

 戦力、戦闘という意味で言えば完全に決着だ。

 だが織田は続けて、俺に問いかけてきた。

 

「察するに倶楽部との最終局面と言ったところですか? 表で暴れている化物は探査者に任せ、あなたは概念存在のお相手と」

「見たのか? あの化物」

「ええ。クリストフ・カザマ・シルヴァやベナウィ・コーデリアに一方的に攻撃されていますね。やたら再生能力が高いようでしたが、それさえ上回る破壊に晒されていますよ。これだからS級探査者というのは恐ろしい」

「そ、そう……まあ、大体あなたの言うとおりだよ」

 

 探査者の恐ろしさについて語る時だけ真顔なのが怖い。オペレータを脅威に思っているのは、妖怪も神々も変わらないってわけか。アプローチの仕方が違うだけと考えるべきだな、これは。

 俺が頷くと、彼はまた微笑んだ。目だけが寒々しい、どこか酷薄な瞳を妖怪達へ向ける。

 震える老爺に、織田はであれば、と告げた。

 

「概念存在の不始末は概念存在である私がつけましょうか? 山形公平。率直に言ってあなたにあまり長いこと、この領域にいてほしくありませんし」

「だろうな……探査者や大ダンジョン時代特有の現象に関しての干渉と介入を禁じさせたい。それさえ都合がつけばすぐに帰るよ」

「ふむ。ちょうど出迎えも来てくれていますし、脅しつけは我々で受け持ちましょう。何、あなたの威圧よりかは幾分マシですよ……喰われ果ててしまえば、怯える必要もないわけですからね。クククッ」

 

 そう言って嗤うやいなや、遠く、遠く──彼岸のはるか向こうから、犬の遠吠えが聞こえた。

 何か来る。織田ほどではないけれどそれでも強大で、しかも強力な概念存在が。凄まじいスピードでこちらへ向かってくる。

 妖怪達も気づいたのか揃って顔を青褪めさせている。総大将たる老爺が、歯を剥き出しにして叫んだ。

 

「わ、わかったっ!! 山形公平の言う通り、不干渉不介入を誓う! 頼む、見逃してくれ!」

「権能で誓ってもらえるか? 《妖怪は今後、探査者に関係するあらゆる物事に介入、干渉しないことを誓う》、はい」

「《妖怪は今後、探査者に関係するあらゆる物事に介入、干渉しないことを誓う》!! 頼む、権能を解いてくれ!!」

「……ん、これで誓いは成った。ほら、解除したよ」

 

 今ここに向かってきているモノがよほど恐ろしいのか、一も二もなく老爺は誓いを掲げた。

 これで探査者に関係する物事、能力者だとかステータスだとかは元より、ダンジョンやダンジョンコアだとかにも今後妖怪が関係してくることは絶対にない。もし関係してきたらその時点でその妖怪は消滅、ないし極端な弱体化を果たすだろう。

 概念存在にとっての誓いとはそれほどまでに大きなものなのだ。

 

「総員退却! 今すぐこの場より去れ! 散れーっ!!」

「やれやれ、雉も鳴かずば撃たれまいとはこのこと……自分達が何に手を出そうとしていたのか、もう少し深く調査するべきでしたねえ……ぬらりひょん殿」

「あ、ぬらりひょんなんだ……」

「ええ。元は一妖怪でしたが現世での風評を受けていつの間にやら総大将にまで登り詰めた、強かな大妖です」

 

 慌てて逃げていく妖怪軍団。老爺も例に漏れずめちゃくちゃ機敏に逃げ出したわけだけど、織田からその正体を知って驚く。

 俺でも知ってるすごい妖怪じゃん。なるほど、妖怪の総大将なわけだね。それが現世の風評由来なのは知らなかったけど……はー、本物見ちゃったよ。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー

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「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」2巻、発売中です!
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