攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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漂着、あるいは敗残していたモノ達

 秘密主義も大概にしなさいよ、なワールドプロセッサはともかくとして。ダンジョン聖教過激派の目的について、明らかになったその詳細こそが問題なのだとヴァールは言った。

 召喚系スキル保持者を大量に集めて神の本体を呼び出す……というのはすでに知っている話だったけど、具体的にどんな神を呼び出すのかが今回、判明したそうだ。

 

「単刀直入に言えばやつらの呼び出そうとしている神は、この世界のモノではない」

 

 そう切り出したヴァールの表情は、先程までと異なりひどく真剣な、そしてどこか怒りをも湛えた無表情だ。この子がこんな顔をするのもなかなか珍しいな。

 邪悪なる思念に絡んだ話をする時、大体こんな感じの顔をしていた気がする。つまりは今から話す内容はそれにも匹敵する、ヴァール的にも断じて許せない事項らしいのが分かるね。

 

「それは……概念存在とやらなのでしたら、この世のものでないのは当然では? ミス・ヴァール」

「概念領域でしたっけ、こないだ公平さんが殴り込みをかけたっていうところ。そこの何かしらなんでしょう?」

 

 ベナウィさんとエリスさんが疑問を呈する。この世界のものではない、となればそうだね、概念領域のほうだと思うよね普通。

 こないだ殴り込みをかけたって言われると若干語弊があるけれど、俺も先日お伺いした領域。妖怪、悪魔、そして神々など概念存在が存在するその次元から何かを呼び出すのだと、二人が考えるのは当たり前のことだ。

 

 だけど、システム側の存在である俺やリーベ、そしてシャーリヒッタは違う。

 ヴァールは今、わざわざ"この世界"と表現した。この世とかあの世とかでなく、世界と。システム領域における世界の定義とは、ありとあらゆる次元領域のことをひっくるめて指す。

 プールに浮かんだボールそのものを言うのだ。

 

 であれば。

 俺も自然と険しい顔つきになるのを自覚しつつ、彼女に問いかけた。

 

「まさか、元はこの世界に存在していなかったモノ……つまりはかつて、邪悪なる思念が食い尽くした世界の残滓か? 察するにモンスターにもならずにどこかに揺蕩っているのを、過激派は呼び込もうとしているのか」

「そのとおりだ、山形公平。やつに食われる前にどうやったのかその世界から逃げ出し、たまたまこの世界に辿り着いて紛れ込んだと思われる──異世界の神。異なる世界の概念存在こそが、過激派が自分達の信奉する神と解釈して召喚しようとしているモノの正体だ」

「い、異世界の神……!?」

 

 香苗さんが絶句する。まさか邪悪なる思念を倒してからの今になってそんなもんが絡んでくるなんて、思いもしていなかったみたいだ。

 俺だって同じ思いだよ、今さら邪悪なる思念絡みのアレコレが尾を引いてくるなんてなあ。っていうか赤鬼の鬼島が3組織揃って同じ目標で動いていた、みたいなことを言ってたけど、つまりは異世界の神を現世に受肉させるために活動してたってことか。

 なんてこと考えるんだか。

 

 

『……食い損ねていた? この僕が、完璧な捕食をしていなかった? は?』

 

 

 脳内でなんかショックを受けてるやつがいるけど、どこに衝撃を受けてるんだお前は。そもそも異世界を捕食なんてするなと言いたい。もう遅いけど。

 

 まあ、完璧を目指すこいつが食べ残しだなんて、ってのは俺も意外に思うけど……探査者ツアーの時に見たこいつの端末、死ぬほど汚い食い方しててまさしく食い散らかしてたしな。

 思わずふざけんなって言いそうになるくらい雑だったわけだし、それを思うと世界単位でも似たようなことになっていてもおかしくはないのかも知れない。

 

 しっかし、異世界の神か。そんなのが紛れ込んでたなんてなあ。少なくともコマンドプロンプトは全然、感知してなかったなあ。

 困惑とともに、ヴァールの説明に耳を傾ける。

 

「倶楽部の目的もそこにあったようだな……召喚した異世界の神の肉体、器を製造するべくバグモンスターやスレイブモンスターを試作していたようだ。件の隠しアジトから資料が次々と出てきている」 

「その異世界の神については俺、全然知らなかったけどワールドプロセッサはどうなんだろ? なんか聞いてるか?」

「いや……あなた同様に知らなかったと言っているが、正直本当かどうかは疑わしい。実は知っていて、対邪悪なる思念用のプランの一つに組み込んでいたとしてもワタシには不思議でないよ」

「そうですねー……ワールドプロセッサならそのくらいの仕込みはしますねー」

『ワールドプロセッサだしなあ』

 

 俺と精霊知能三人娘、この場にいるシステム領域の存在から総出であいつ信用ならねーわ扱いされるワールドプロセッサ、南無。これが日頃の行いというものです。

 マリーさんが呆れつつも面白そうに笑っている。でも実際、あいつならマジで全部知っててその上で意図的に黙ってたとかやりかねないんですよ。アドミニストレータ計画以外の対邪悪なる思念用サブプラン、複数抱えてたっぽいし。

 

 なんなら今回、そのサブプランにゆかりのあるモノも関わってきているらしいもの。

 ヴァールは過激派の目的が"異世界の神の召喚"であることを明かした上で、さらに続けてワールドプロセッサへの疑念を口にした。

 

「実のところアンジェリーナ達の手元にも一つ、異世界由来のモノがある。それを考えると、やはりワールドプロセッサが何も知らないというのは考えにくくはあるように思えるな」

「……うん? アンジェさん達のところに何か、あるのか?」

「うむ。ワタシ直属のエージェントがニ名、アンジェリーナ達に先んじてサークルと交戦しているという話は以前したな?」

「あ、ああ」

 

 たしか、アンジェさんとランレイさんが首都圏に行くにあたって家に挨拶しに来た時、そんな話を聞いたな。

 ヴァールの指示でサークルと一年も前から戦ってきていたという、二人組の戦闘員。名前は、えーっと?

 

「神奈川千尋さんと、ステラさんだっけ。それがどうかしたのか?」

「結論から言えば、ステラは精霊知能だ。それも異世界から流れ着いた対概念存在用決戦兵器、通称"聖剣"を保護管理する役目を担っている。システム領域内でも特異な立ち位置にあった存在でもあるな」

「────は?」

「へ────ステラが?」

 

 まさかの話パートツー。ステラという名前の精霊知能がいたのは把握してるけど、その本人がわざわざ現界しているというのだ。

 それも人間とコンビを組んでサークルと戦っているって、なんでまたそんなことに? 寝耳に水の俺とリーベはお互い、顔を見合わせていた。




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