攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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聖剣計画・レジェンドオブブレイブ

「ステラって、あのステラなのか!?」

「あの子が現世の事態に関与してるんですかー!?」

「ああ。受肉はしていない、シャーリヒッタ同様の半透明の精神体としてだがな」

 

 驚きに、俺とリーベの声が重なる。

 首都圏にてサークルと交戦しているエージェント、神奈川さんの相方らしいステラという名の人がなんと精霊知能だという。

 受肉こそしていないものの、半透明状態で神奈川さんとコンビを組んでいるのだという。

 

 俺も名前や役割だけは知らないでもなかったものだから、いろんな意味でびっくりせざるを得ない。

 だってあの子は、そしてあの子の役割は……

 

「聖剣──異世界から流れ着いたソレはたしかにあったけど。その管理と保護のために創られたステラが、なんでまたサークルなんかと交戦してるんだ……」

 

 ダンジョン聖教過激派が呼び込もうとしている異世界の神同様、本来この世界には存在するはずのない外部からの異物。

 それははるかな400年前に偶然、現世はユーラシア大陸の山奥に漂着した。

 

 すぐさま回収したワールドプロセッサと精霊知能統括役アフツストによる解析の結果、その剣は異世界においては元々、対概念存在用の決戦兵器──いうなれば神殺しの剣だろうか──として扱われていたであろう性能が発覚。

 それを踏まえた上でシステム領域は直ちに聖剣を上位階層に保管し、特別に精霊知能を生み出してその管理にあたらせたのである。

 

 その、特別に生み出された精霊知能こそがステラだ。システム領域に近しいデータのみの階層にて、聖剣を保管して管理するだけの任についていたプログラム。

 だが、それがなんで現世に? 首を傾げる俺に、シャーリヒッタが答えてくれた。

 

『父様はタイミング的に輪廻に乗ってただろうから知らないとは思うぜ。大ダンジョン時代が始まってからステラ、日本の誰も来ない山奥の遺跡に聖剣ごと河岸を移したんだ』

「え……なんで?」

『ワールドプロセッサの指示さ。あの方、やっぱりと言うべきか聖剣を使用してのサブプランを考えてたんだよ。今だから言うけど、スキル《勇者》保持者に聖剣を使わせることで、邪悪なる思念にも届きうるオペレータを育てられないか画策してたんだ』

「…………えぇ?」

 

 今明かされる衝撃の事実! ワールドプロセッサ、お前どんだけ複数ラインでプラン進めてたんだ!?

 たしかに大ダンジョン時代が訪れてからの話なら、その頃には俺はもう輪廻に乗って転生を繰り返していた。聖剣がよもや現世に移されたなんて、知る由もなかったことだ。

 

 にしても、《勇者》と聖剣を組み合わせたサブプランって……

 いかにもヒロイックだけど、いくらなんでも周囲にバフを投げるスキルと対概念存在用の兵器とでは食い合わせ悪いだろうに。

 仮に関口くんをそのプランのメインプレイヤーに据えたとして、何をどういう手順にして彼を邪悪なる思念と戦えるようにするつもりだったんだ?

 意味が分からないよ。

 

 ヴァールがこめかみを指で抑えて呻いた。彼女にとっても寝耳に水というか、ことの仔細は知らされないでいたらしいな。

 その辺、シャーリヒッタはさすがワールドプロセッサの補佐役と言うべきか、サブプランの存在や内容については知っていたみたいだ。肩をすくめて、若干気まずそうにしている。

 

「やはり、か。ワタシには"管理運用上の一時措置に過ぎない"などと言っていたが、そんなはずがあるかと思っていたのだ。まさか《勇者》保持者をサブプランに据えていたとはな……」

『ずいぶん気の長いプランだったみたいだぜー? 勇者と聖剣を合流させて以後、世代継承で少しずつ《勇者》保持者の実力を底上げするつもりだったらしいし。聖剣も成長する特性があるとかで、アドミニストレータ計画が失敗に終わった場合、セーフモードが解けるギリギリまで成長させるつもりでいたみたいだな』

「成長する剣、ですか。なんともはや、ファンタジーそのものな話ですね……メモメモメモり、メモメモメモり」

 

 香苗さんが、理解の範疇を超えるとばかりに呟きながらも軽快にペンを走らせメモ帳に記述していく。ああ、伝道師の伝道ネタが増える……

 でも今回のこれについてはぶっちゃけ俺、そんな関わりないよね? 俺がシステム領域から消えた後の話だし、何より聖剣もスキル《勇者》もアドミニストレータ計画にはてんで関わりないし。

 

 というかそもそも、そんなサブプランにと考えられていた代物がなぜ一年前からサークルとの戦いに用いられるようになったのかが未だ不明だ。

 そこだよそこ、と問を投げると、ヴァールとシャーリヒッタはどこか愉快げに、面白そうに笑って言った。

 

「聖剣が今の形で運用されるようになったのは完全に偶然……いいや運命というやつだ」

「運命、だって?」

「そう。運命の出逢い、と言うべきかな。こういう表現をするのはいささかこそばゆいが、ワタシでもそう評さざるを得ない」

『たしかに。ありゃーまさしく運命の出逢いだ』

「ほ、ほほー? なーんか素敵な話しそうでリーベちゃん、胸がドキドキしてきましたよー?」

 

 ヴァールにしては珍しく、若干楽しげに頬まで染めて口元を緩めている。シャーリヒッタもなんか、えらく嬉しそうに笑っているな。

 運命の出逢い……なんだろう、なんかすごい砂糖を吐かされそうな予感がしてきた。なんだろう、ぶっちゃけバカップルの気配がする。

 

 その手の話に目がない、トレンディドラマ大好き精霊知能リーベちゃんが鼻息を荒くし始めるのを横目に、俺は一年前にあったというその"運命"について詳しく聞き始めた。




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