攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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かつてからこれからへ。やり遂げた者達の安寧

 神奈川さんやステラについてのまさかの真実も明らかになり、ドラマみたいな恋って本当にあるんだなぁーと、思春期真っ盛りな俺ちゃんにそこはかとない衝撃が加わりつつも話し合いは終わった。

 倶楽部壊滅。そして首都圏はサークルとの戦いへの移行と、ダンジョン聖教過激派の真の目的──異世界の神。加えて倶楽部の真の目的と思われる神の器それぞれについての調査も今後、WSOのエージェントを主体に行うみたいだ。

 

 これらの話だけでもお腹いっぱいだったのに、加えてステラ絡みの話までされたもんだからもうお腹いっぱいだよ。

 しかも何やら俺まで首都圏に出張らなきゃいけないかもしれないんだから大変だ。もうそろそろ自由研究やっばいんだけどどうしよう? やはりセミの抜け殻を標本するしかないのだろうか?

 

「我々が首都圏に向かうタイミングは恐らく、御堂香苗のS級探査者認定式と同時になるだろう。そこからアンジェリーナ達と合流し、サークルと過激派を一気呵成に攻めたてる」

「敵組織の拠点などは判明しているのですか? ミス・ヴァール」

「絞り込めてはいる。認定式の行われる今月25日までにさらなる特定ができるよう、向こうの対サークルチームが行っている……虱潰しに拠点候補に殴り込みをかけ、壊滅させることでな」

「怖ぁ……」

 

 手当たり次第に殴りかかってシロクロつけてるってことじゃん! アンジェさんやランレイさん、ノリにノッてるなあ。

 非常に強い使命感や正義感をお持ちなんだけど、それはそれとして喜々として修羅場に身を投じるバトルジャンキーな性質も持ち合わせていたりするからね、あのお二人。

 

 なんていうか、かたやマリーさんのお孫さん、かたやシェン一族ってだけはあるよね。

 若い頃は無茶苦茶だったらしいマリーさんが、ファファファと笑って自分の性質を受け継いだ、孫娘に言及した。

 

「まー、今のあの子なら問題ないだろうさ。なんせ直前に公平ちゃん直々に天狗になってたのをへし折られてるからね、ファファファ!」

「アンジェちゃん、そんなに慢心してましたかねー? 立派に探査者してたような気がしますけどー」

「初対面の公平ちゃんを、完全に見かけだけで侮った時点でまだまだだったんさね。常日頃からどんな相手でも舐めずに、初見で実力を測ってどう動けば倒せるか考える癖を付けてりゃここまでは言わんかったよ私も。ファファファファ!!」

「えぇ……?」

 

 怖ぁ……慢心の基準おかしくないですかマリーさん? 普通そんな、会う人会う人に一々"おっ、強そう! こいつはこう動けばきっと倒せるな"みたいなことを考えたりはしないと思います。

 さらりと狂気の習慣を告げる元S級最長老様に、俺はもちろんシステム側のヴァールやリーベ、探査者側の香苗さんやエリスさんも曖昧に苦笑いを浮かべるしかない。

 だってたぶん、この人自身がこれで83歳までやって来れてたんだろうからね。今さら何を言えるわけでもないしねえ。

 

「慢心していたかというのはさておくにしても。先生のお孫さんは将来有望な探査者だと聞いているな。そしてシェン・ランレイ殿は太平洋にもその名が轟くA級随一の近接戦闘者。これは、お会いするのが楽しみだ」

「うう、どっちもA級トップランカー候補。つまりは香苗さんの後継者ですかあ。大物だし実力者だなあ……」

「マリーのお孫さんに噂のシェン一族か。葵、探査者としてはともかく能力者犯罪捜査官としては君のほうが先輩だろうし、気後れせずに行くんだよ。ハッハッハー、大丈夫大丈夫! 君は私の誇りだからね」

「は、はい! 頑張りますよ、はっはっはー!」

 

 サウダーデさんや葵さん、エリスさんがまだ見ぬお二人に思いを馳せている。特に葵さんにしてみればいろいろ近しい立場だし、プレッシャーみたいなものを強く感じているみたいだね。

 でも葵さんは葵さんで、少なくとも初対面の時より格段に強くなっているとは昨日の火野戦で感じたなあ。フーロイータによる底上げ前提なのはあるけど、今のこの人ならA級でもトップ層のとっかかりくらいにまではいけるんじゃないだろうか?

 エリスさんがその肩を叩いてにこやかに励ましてるけど、俺も、そうアンジェさん達に見劣りすることはないと思うよ。

 

「新旧入り交じり、こうして探査者達が力を合わせて問題解決に取り組んでいる」

「……ヴァール?」

「大ダンジョン時代が終わった今、世界の有り様そのものがこうなっていくのだろう。素晴らしい光景だ」

 

 ふと、ヴァールがポツリとつぶやくのが俺の耳に入った。

 見れば無表情に目を細めて、どこか嬉しげに、けれど寂しげにも見える。

 彼女は俺やリーベ、シャーリヒッタに続けて語りかけた。

 

「いずれ、いつの日にかワタシやソフィアの役目も終わるだろうと思っていたが。それも存外近くなってきたのかもしれないな……いいことだ」

「……隠居したら、どうするつもりなんだ? 二人とも」

 

 150年以上、戦い続けたソフィアさんとそれを支え続けたヴァール。

 すべては邪悪なる思念を倒すための役割だったがそれも終わった今、彼女らが本来あるべきだった姿に戻るのもたしかに、近い将来待ち受けているのだろう。

 

 長い旅路のゴールが、今やっと見えてきているのかもしれない。

 そんな彼女に俺は、少しばかり気になって尋ねる。ヴァールはキョトンとして、それから答えてくれた。

 

「うん? ……ワタシはまた精霊知能としてシステム側の、今度は裏方として動くことになるだろうな。ソフィアは、輪廻に還ることになる」

「そうか。そうだよな……お前はともかくソフィアさんは、半ば無理矢理延命しているに近いしな」

「彼女を散々、こちらの都合で振り回してしまった。それも遠くない未来には終わるかと思うと、何やら今からでも肩の荷が下りる気分だ。ふぅ……」

 

 どこか憑き物が落ちたような、背負っていた重い荷物を下ろして、立ち止まって周囲を見回したような。

 そんな気の抜けた顔を晒すヴァールは、深い達成感と幾ばくかの虚無感、寂寞を醸している。

 

 やり遂げた人、成し遂げた人は……こんな顔をするんだな。

 きっと邪悪なる思念を倒しきった後、俺も浮かべていたんだろう。そんな、透明感のある顔つきだった。




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