攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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帰ってこないならこちらから会いに行く系の自称娘

 親元の家は車で一時間と少しかかる場所にあり、途中までは市街地に沿って走るものの段々と山間のほうにむかって行き、終いには深い渓谷とも言える山と山の間に辿り着くというルートになっている。

 そのため途中、市街地にあるコンビニに寄って食糧やドリンクを買い込み、軽食程度につまみながらのんびりとした道程を俺達山形家は過ごしていた。

 

「え、あんた娘ができたの? ついに誰かに手を出したの、誰!?」

「やっぱ御堂さんか!? それか望月さん!? お前まさか同級生とかじゃなかろうな!!」

「春先デートしてた佐山さんって人? 兄ちゃんやばいよ、ドラマじゃあるまいしー」

「出すわけないだろ! 義理っていうか疑似だよ、擬似!!」

 

 軽快に走る車の内部、家族からの謂れなき濡れ衣を俺は、払拭すべしと叫び返している。

 ことの発端はリーベとのやり取りの中、シャーリヒッタについて軽く話していたら母ちゃんに誰? それと聞かれてしまったのだ。

 それに応対するはあの子の同僚リーベちゃん。嫌な予感はしてたんだけど、ものの見事にズバッと俺の娘とか言ってくれちゃって、それでこんなことになったわけである。

 

 っていうかついに手を出しただの相手は誰だだの、あまつさえ具体的な人名を複数名出すのホント止めて! 先方に迷惑かかるだろ!

 まあ本気で動揺してるっぽい父ちゃんはともかく、母ちゃんと妹ちゃんは分かってて弄ってるんだろうなとは思うんだけど……必死の思いで抗弁しつつ、俺はリーベにどういうつもりか問い質した。

 

「ややこしくなるんだからお前やめろよこういうの! マジで!」

「いやいや隠そうとしたってどうせ、遠からず嫌でもバレますしー。早いうちにカミングアウトしといたほうがいいと思いますよー?」

「え……い、いやバレるかなあ!? リーベが話してなけりゃ一生バレなかった気もするなあ!」

「え、あんた自分の子供の存在を一生隠すつもりだったの? ないわー」

「ほらこういう話になっちゃう!! 今説明するからちゃんと聞いてくださいお母様!?」

 

 か、隠すつもりが一切なかったとは言わない。なんならどうせ俺とシャーリヒッタの間だけの疑似関係だし、黙っとけば概ね墓まで持っていけるだろとか考えてたところは正直ある。

 だって本当に娘じゃないものあの子! 同い年なんだし昔から存在を互いに知ってるんだし、どっちかって言うと幼馴染のほうがしっくりくる関係性だもの!

 幼馴染にパパ呼びさせてる俺の外聞がヤバいことになるってリスクも考えれば、黙っといたほうがみんな幸せになれるんだもの!

 

 本気で重く受け止められてるならもっと深刻な雰囲気になるんだろうけど、幸いにして日頃の行いがいいからかジョークかワケアリと受け止めてくれてるみたいでそこは助かるんだけど、だからこそ説明なしはまずい。

 慌てて俺は、シャーリヒッタという精霊知能が俺を父と見なして接してくること、あまりに健気な姿勢に、周囲の後押しもあり俺もある程度は娘として接しようとしていることを説明した。

 

「かくかくしかじかとんとんびょーし! というわけで僕は無実! 無罪です! お分かりいただけましたでしょうか?」

「そっかー……まあ、分かってはいたわよ。あんたがそんなことするわけないしね。女の子と会話するのさえ最近までビビり倒してた子が」

「兄ちゃん今でも女の人と話す時若干キョドってるもんね。手を出すなんてできるわけもないよ」

「公平だしなー! ワハハ、安心したー」

「むごい」

 

 厚い信頼感に泣きそう。しかたないだろキョドるのは、最近ほんと、美女と美少女が大勢近くにいるんだから! 怖ぁ……

 俺の置かれた現状はともかく、シャーリヒッタとの関係について誤解なく伝えられたようでひとまず安心だ。いや、幼馴染と父娘プレイに興じている息子というカミングアウトにはどのみち変わりのない話ではあるので、俺としては正直大変遺憾でございますけど。

 

 これも概ね、いきなりリーベが爆弾発言したせいだ。ただ、あえてこのタイミングでバラしてくれやがった意図がいまいち分からない。

 面白がってとかでなく呆れた様子で、仕方ないですねー公平さんはーみたいな顔をしているあたり何かあるのかもしれない。そもそもジョーク優先でこんなことをする子でもないからね。

 

 その辺、妙に違和感を覚えて訝しむ俺に、リーベはあれ? と首を傾げて言った。

 

「シャーリヒッタ、もしかして公平さんには言ってないんですかー? 昨日の夜、私にはテレパシーで伝えてきたのにー」

「は、え。な、何を?」

「あの子、受肉申請してますよ今ー。肉体を得て現世に降りて、公平さんの側で暮らしたいってなんか楽しそうにしてましたよー」

「────ええええ!?」

 

 初耳なんですけど! あいつ受肉してこっち来んの!? なんで!?

 ……俺か、原因は。俺と500年ぶりに再会して、思いを打ち明けたそれがトリガーか。側で暮らしたいとか言ってるあたり確実にそうなんだろう。

 

 いやでも、ワールドプロセッサの補佐役はどうするんだ? いくら邪悪なる思念が消えたとはいえまだまだ、システム領域も慌ただしいだろうに。

 その辺をリーベに聞いてみたら、なんとも反応に困る答えが返ってきた。

 

「日中、公平さんがお仕事や用事を済ませている間にシステム領域に戻って、仕事はちゃんとこなすみたいですよー? 前より全然負荷も減ったから、余暇でこちらに来るみたいですー」

「えぇ……?」

 

 実家の近くに仕事場があるのにわざわざ、遠く離れた場所で一人暮らしを始めるようなものじゃん……

 シャーリヒッタのまさかの行動に、ただただ驚く俺だった。




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