攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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システム領域は今、空前の現世ブームが巻き起こっております!

 アグレッシブという表現では片付けられない、まさかのシャーリヒッタの受肉申請。わざわざ現世に降りてまで、俺の傍にいたいのか……

 とんでもない行動力だ。そもそもそれを理由にワールドプロセッサや精霊知能統括に申請したってのがすさまじい。言ったらなんだけど特に統括役の子はそういうの嫌うだろうに。

 

「ワールドプロセッサもよく許したなそんなこと。完全に私用による申請じゃないか、普通なら通らないだろそんなの」

「あー、まあそこはシャーリヒッタもうまいこと辻褄合わせてましたからねー」

 

 ついリーベに零したところ、苦笑いしつつもそう返された。

 さすがにそのまま俺の傍にいたい! だけを理由にするのでなく、それらしい理由をいくつかでっちあげたか。そりゃそうだ、今でこそ完全にバカンスモードだけれど、リーベでさえアドミニストレータ計画遂行のために受肉したわけだからな。

 

 とはいえその理由ってのも、生半可なものじゃ通らないだろう。ましてやシャーリヒッタはワールドプロセッサの補佐役だからね。

 詳しく聞くと、リーベはコンビニで買ったドリンクを一口飲んで喉を潤してから語り始めた。

 

「倶楽部による意図的なエラー誘発と概念存在の介入。これを受けてシステム領域からも追加で対応精霊知能を投入するべきではないかとかなんとか……ステラのこともありますから、案外すんなり通ったみたいですー」

「ステラ? なんでそこであの子が?」

「さすがに何か裏はあるんでしょうが表向き、完全に男目当てで現世に介入した形になってるあの子こそイレギュラーですからねー。あれが通るならこれも通るだろ! ってー、シャーリヒッタも吠えたみたいですねー」

「えぇ……?」

 

 怖ぁ……シャーリヒッタまさかのゴリ押しじゃん。いやまあ受肉してないとはいえ、ステラがあの理由で現世での活動を許されたなら別にいいだろ! ってなるのはわかるけどもさあ。

 ワールドプロセッサからすればサブプラン絡みの思惑もあり許可を出したんだろうけど、事情を知らない側からしてみればステラにだけ肩入れしたみたいに言われてもおかしくないからね。

 

 あいつの秘密主義がさっそく裏目に出たな。言わんこっちゃない、だから腹心にすら黙って策をこねくり回すのはやめとけって話なんだよ。

 ワールドプロセッサにやれやれとため息をついていると、リーベが何やら面白がって続いて話す。

 

「精霊知能達には今、現世ブームが来てますからねー。これを引き金にみんな、現世観光に行きたい! って声も高まりつつありますー。受肉は難しいでしょうけどー、もしかしたら今後、あちこちで幽体の精霊知能を見かけることもあるかもしれませんよー」

「ブームて……大分現世ナイズされてるってのは聞いたけどそれほどまでかあ。うーむ、システム領域もどんどん一つの世界になりつつあるなあ」

「概念存在がお土産まで買って帰るレベルでガッツリ観光してたそうですしー、そういうのもあって精霊知能の中にも、羨ましいと思う子がたくさんいるみたいですねー」

「…………織田かあ」

 

 どこぞかの神話の最高神らしい概念存在の姿を思い出す。彼、たしかに思い切り観光を楽しんでたしなあ。システム領域からこちらを見ていた子の中には、その姿を羨ましいと感じるモノもいておかしくないか。

 なんだか、いつの間にやら感情豊かになってるんだな、精霊知能達も……精神構造はさすがに人間のそれとは著しく異なるだろうけど、情緒的には現世社会を参考にしてるからか大分、人間的になっていそうだ。

 

 ステラの介入、シャーリヒッタの受肉ときて精霊知能達の観光まで仄めかされた。こりゃそのうち、本当に野生の精霊知能とばったり出くわすとかあり得るかもね。

 これも新時代、誰にも先が見通せない無限の未来の一つの形かと感心する思いでいると、話を聞いていた母ちゃんが俺に向けて話しかけてきた。

 

「えーっと? 結局なに、あんたの幼馴染だけどあんたをパパと呼びたい倒錯しきった女の子が家に来るってこと?」

「同い年の娘とかお前、薄い本でも中々見かけない設定だぞ公平! 一体どこに行くつもりしてるんだムッツリ救世主!」

「ムッツリ言うな、どこも行かないよ! まあ、たぶんそうなるかなあ? 家族のみんなが許してくれればだけど、リーベに続いてもう一人増えるかも」

 

 シャーリヒッタが倒錯してるのは正直、否定できないからスルーするとして。ムッツリ救世主などととんでもない誹謗をかまして来た父ちゃんには断固として抗議しておく。

 ていうか息子に薄い本とか言うな! 母ちゃんと優子ちゃんがゴミを見る目をしてるよ父ちゃん! 怖ぁ……そういう話は女性陣のいないところでしよう?

 

 それはさておき、シャーリヒッタも受肉が叶えばおそらく、まず山形家に加わることを望むだろう。あの子の目的が俺との暮らしだし、俺の娘だと自認して憚ることない子だからね。

 でもそれが通るかどうかは俺やあの子でなく、山形家の人達が決めることだ。ただでさえすでにリーベがいるのに、さらに追加でもう一人なんてさすがに厳しいんじゃないだろうか?

 

 ちょっと不安になりつつ様子をうかがう。

 少しの沈黙の後、家族の反応が返ってきた。

 

「別にいいわよー? 部屋割的にリーベちゃんと相部屋にはなるかもだけど」

「お姉ちゃん……お姉ちゃん? 姪? がもう一人増えるんだ……楽しみ!」

「また賑やかになるなあ! 書面上のあれこれはこっちで特にしなくていいんだろ?」

「あ、うん。そこはヴァールに頼んでやってもらうよ……ありがとう、みんな」

 

 軽っ。めちゃくちゃ軽いノリでシャーリヒッタが受け入れられちゃったよ!

 こういう時、うちの家族は大変話が早いよなあ。賑やかなのが好きだから、家族が増えることが率直に喜ばしいみたいだ。良かったー。




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