攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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伝道師は不在だから救世主ネタともしばらくおさらば、などとその気になっていた山形の姿はお笑いだったぜ

 外で立ち話もなんだからと、早速俺達はじいちゃんに案内されて親元の家に入る。いわゆる引戸の玄関はなんともノスタルジックというか、少なくとも近所じゃ見ないタイプの入り口だ。

 すでに親族もみんな揃っているようで、玄関先にたくさん靴が並べられている。俺達もそれに倣い靴を脱ぎ、しっかり整えて家にあがった。

 

 実に一年ぶりのじいちゃんの家。木と畳の匂いに生活臭が混じり合った独特の匂いが、あーじいちゃん家だなーって感じさせるね。

 

「きゅうー、きゅうきゅう。きゅうー」

「アイ、もしかして匂いが気になるか?」

「きゅう!」

「でも嫌がってる風でもないね。アイちゃん、大丈夫?」

「きゅうきゅうきゅう」

 

 鼻をスンスンと鳴らして、そうした匂いを嗅ぐ我が家のマスコット・アイ。それなりに鼻が利くから、嗅ぎ慣れないタイプの匂いにちょっと反応してるみたいだけれど……拒否反応を示している感じでもない。

 むしろちょっと気に入ってる感じ、なのかな? 羽をパタパタさせて空を飛びつつあちこち嗅ぎ回るミニチュアドラゴンの姿は、可愛らしいの一言だ。

 

 そんなアイを見て、じいちゃんが感心して言った。

 

「またこりゃへんてこな、ぬいぐるみが翼はやして飛んでるみたいだなあ」

「きゅう?」

「この子、モンスターなんだろ? 公平が何やら助けて懐かせたって聞いてるけど、襲いかかったりはせんのか」

「ああ、その辺はまったく大丈夫だよ。俺が保証する」

 

 何しろ見た目はマスコットと言っても、元々がモンスターだったことには間違いないからね。凶暴性を疑われるのは仕方のないところだ。

 ただ、アイがなんの理由もなく人を襲うってことは絶対にないと断言できる。なんせ手前味噌ながら俺のスキル《ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で》の効果で、この世界に適応できる形に変生しているわけだからね。

 

 耐久性や生存力こそあるし、生命力だってこの世の生物の中でもトップクラスに備わっているけど……反面戦闘力とか凶暴性についてはまったくと言っていいほど存在しない、そんな生物がアイだ。

 どんな場所でも生きたいように生きていけるよう適応できるし、どんな危険に晒されてもまるで意に介さないだけの防御力と生命力に溢れている生命体。

 

 だから危険性についてはまるで心配いらないよーというのを、俺はある程度の真実を隠しつつじいちゃんに伝えた。

 

「この子は極端に穏やかなモンスターなんだ。とにかく頑丈でどんな場所でも住めるしどんなものでも食べられるけど、戦ったりするのは苦手な優しい子なんだよ。ほら、アイ」

「きゅう。きゅー、きゅうきゅう」

 

 声をかけると俺の肩に乗り、じいちゃんに向けて愛らしく鳴いて何度か頭を下げるアイ。前足をご丁寧に下ろしているあたり、自己紹介しつつよろしくとでも言っているんだろうな。

 珍妙ながら愛くるしい姿に、じいちゃんも目尻が下がっている。さすがだぞアイ、近々WSOのマスコットになるだけのことはある。

 

「知能も大分高いから、こうして人の話してることも分かる。その辺を買われて、今度WSO公認のマスコットキャラクターとして公表されることになってるほどなんだ。安全安心の生き物なのは、それこそソフィア・チェーホワさんの太鼓判が押されてると思ってくれていいよ」

「はー、WSOのマスコット! そりゃすげえや、俺の心配する話じゃねえやな、それじゃあ。疑って悪いな、アイ」

「きゅ? きゅきゅきゅー」

「お、かわいいじゃねえか! ははは、いい子だ!」

「きゅー!」

 

 さすがは国連組織WSOの説得力というべきか、公認だよって話をした途端にじいちゃんが即座にアイを可愛がり始めた。

 普通は孫がいきなり国連がどうの言い出したら与太話としか受け取らないと思うんだけど、何しろ全国放送のテレビにも何度か映っちゃってるシャイニング山形ですからね、俺。

 WSOとそれなりに繋がりが深いってのも世間的に知られてるみたいだし、母ちゃん伝にその辺も聞いてるのかも。

 

 さておき、アイとも打ち解けたじいちゃんが案内するままに家の中を進む。

 御堂本家ほどとんでもない規模じゃないけどそれなりに広く、どこの部屋も襖が全開放されて風通しが良くなっているところがあっちとの大きな違いだろうか。

 山間で緑豊かだからか風がよく吹いて涼しい。夏の田舎ってこういう、自然の涼を堪能できるのも醍醐味だよなあ。

 

「おーうみんなー、噂の救世主様の到着だぞーい!」

「えぇ……?」

 

 と、しばらく歩いたところで居間に辿り着いた。長テーブルがいくつも並べられたそこには親族が勢揃いしていて、賑やかに歓談している。

 そこにじいちゃんが気軽に片手を挙げて告げたのがまさかの救世主とやらのご到着。いやー誰だろうねー救世主。優子ちゃんかな? それともリーベ?

 

「呼ばれてるぞ優子、ほらほら」

「何言ってんの救世主。ほら行きなよシャイニング兄上」

「いやいや俺なんてとてもとても。あ、そうだリーベ、ゴー!」

「ミッチーがいないからって救世主扱いからは逃げられませんよー? もう諦めたほうがいいと思いますけどー」

 

 ……なんとか逃げられないか試したものの、優子ちゃんには素気なく返されてリーベにはやれやれって感じで背中を押されてしまった。

 ああっ伝道師がいないから救世主絡みの話はしばらくないと思ってたのに! いや別にやりたければやればいいんだけどこっちもたまには息抜きしたくなると言いますか!

 

「せっかくだしさあ行け、我が家の救世主!」

「行ってらっしゃい、シャイニング山形!」

「こういうのってせめて先に親が行くもんじゃないですかね!?」

 

 怖ぁ……両親までもが乗っかっちゃってる。俺に逃げ場はないらしい。

 これも定めか……と俺は促されるままに、親族達の前に姿を見せるのだった。




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