攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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それこそゲームならこの場面、イベントスチルが挿入されると思うの

 お昼ご飯も食べ終えて、各々のんびりと過ごす昼過ぎ。今日の予定は15時頃からお坊さんが来るのでお迎えして、ご先祖様の供養をするのにみんなで参加するくらいなもので基本、特にやることもない。

 なんせ盆休みだからね、忙しくするのも変な話だし。最近はいろいろあったから、ここらで羽休めをしたいと思っていたから好都合だね。

 

「8月入ってから結局、ずーっと面倒ごと続きだったからなあ。早期決着してくれて良かったよ、本当に良かった」

「リーベちゃんはあまりお手伝いできませんでしたねー結局。お疲れ様でした公平さん、ゆっくりお休みしてくださいねー」

 

 親元の家、俺用に割り当てられた部屋にてリーベと過ごす。なんとまさかの膝枕だ。人生初めての体験を今、俺はしています!

 

 これっていうのも、とりあえず部屋に来てふぃーって一息ついてたらリーベが唐突にやってきて、まあやることもないし話でもしようかと思って座り込んだところ、彼女のほうから正座して自分の膝をポンポンと叩いてきたのだ。

 その所作に即、あの伝説の膝枕ってやつか……! と動揺する俺をまあまあいいからいいからーと宥められ寝かされた末、今こうして彼女の膝の上に頭を載せて寝そべっているわけだった。

 

「ていうかほんと、なんで膝枕?」

「日頃から頑張っていらっしゃる公平さんを労い慰めるにはー、こういうのがいいかなーって思いましてー。案外重くないですし、やってるほうも楽しいものなんですねーこういうのってー」

「そ、そういうもんなのか。まあ、気持ちはすごく嬉しいよ。それに温かくて、柔らかいし」

「あー。それちょっとセクハラかもですよー? なーんちゃって!」

「洒落にならないから止めて?」

 

 急なハラスメント認定はジョークでも心臓が凍りつくからやめてほしい。思わず起き上がりかけただろ!

 そっと手で押し留めてくるリーベに従うまま膝枕続行。正直いい匂いもするんだけどこれは言ったら本当にアウトなやつなので言わない。代わりに全身の力を抜いて、リラックスする。

 あー、なんか気持ちいいー。

 

「いいもんだな、これ……」

「ふふ……リーベちゃん的にもいい感じです。公平さんのお顔がこんなに近くにあって、ドキドキしますし同時にとても、優しい気持ちになりますー」

「そ、そう? それなら、何、ありがたい? けど」

「…………いろいろ、ありましたね私達も」

 

 至近距離から見上げるリーベの顔の、整いっぷりに改めて息を呑んでいると、彼女は柔らかく微笑んで静かに言った。

 慈愛の籠もった笑みだけど同時に、どこか辛そうな、心配そうな目で俺をじっと見ている。

 

「春に起きたスタンピードの時にコンタクトを取ってから、まだ半年も経ってませんけど……公平さんの身には、数限りないたくさんの変化が起きましたねー」

「……リーベ?」

「ステータスを獲得して探査者になり。アドミニストレータとして邪悪なる思念との戦いに挑み。そしてコマンドプロンプトへと覚醒して……今また、概念存在の絡む事件にも関わりを持っている。半年前の公平さんやご家族の皆さんには、到底想像もつかなかったことでしょうねー……」

 

 淡々と語る口調は、どこか遠いところに語りかけているように俺には思える。

 リーベ、どうしたんだ? かけがえのない相棒の急な視線と言葉に目で問いかけると、彼女は薄く笑って、目を閉じて続けて言った。

 

「今日、この家にやって来て改めて実感したんです。ただの少年だった山形公平さんの人生を、リーベ達が著しく壊してしまった部分は間違いなく、あるなって」

「そんなこと……そもそも俺はコマンドプロンプトなんだぞ」

「アドミニストレータ計画の介入がなければ、あなたは混じり気なしの山形公平そのままでした。そこは、事実ですよー」

 

 ……いつぞや、たしか終業式あたりだったかな。あの日もこんな風にして、リーベは過去を振り返っていた。

 あの時に比べてぜんぜんカラッとしてるというか、ネガティブさはないのが救いだけれど。それでも少し苦しげに見えて胸が痛む。

 

 この子は責任感が強いからな。なすべきことをなし、歩むべき道を歩む心の強さと、すべてが終わってから追憶の中、踏みしだいてきた道程を想い苦悩する繊細さを併せ持つ悲しいくらい優しい子だ。

 彼女の手をそっと握り締める。ただの人でいられなかった俺だけど、何一つ後悔なんてしちゃいないんだよって想いを込めて。

 リーベは優しく、掴んだ手を握り返して続ける。

 

「後悔はありません。リーベちゃんはリーベちゃんの使命と大義を背負って決死の覚悟でアドミニストレータ計画に臨みました。その結果、現状がもたらされたことの責任と義務をも負っているつもりでいます」

「…………」

「でも。けれど……それでもやはり、この家に来て、親族の人達を見て、話して。ただの人間だったはずの山形公平さんに一言だけ、言いたいんです」

 

 親元に……コマンドプロンプトでもアドミニストレータでも探査者ですらもなかった頃の、山形公平の足跡に触れ、改めて考えるきっかけになったんだろう。

 ただ、後ろ向きな考えをしているわけでもなさそうだ。どこか吹っ切れたような透明さを感じるよ。

 

 膝枕をする俺を覗き込むように視線を合わせて、リーベは愛しげに微笑んだ。

 そして今、俺へと言葉を紡ぐ。

 

「ごめんなさいは言いません。ただ、ありがとうございますだけ言わせてください。あなたのこれまでの当たり前を奪ったリーベは、それでもあなたと出逢えて本当に良かった」

「……どういたしまして。ごめんなさいはいらないし、ありがとうだけ受け取るよ。俺のほうこそ、お前に出逢えて良かったよ」

「はいっ! ふふ、両想いですねー!」

 

 俺とお前と、いろんな人達の助けを得ながら進んできた道程。そのすべてを分かち合い、ただ、ありがとうだけを言い合って。

 そうして俺達は笑い合った。また一歩、未来へと進むことができたんだと思う。




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